草稿

「和解」のご報告、ご挨拶

*1● 札幌国際大学人文学部教授の大月隆寛です。 2020年6月29日に大学から不当な懲戒解雇を受けたことで、裁判に訴えて争っていた一件ですが、昨年暮れ12月27日に、札幌高等裁判所において「和解」が成立いたしました。 ch桜北海道でも速報でお知らせし…

Blue Collar Aristocrats : Life Styles at a Working Class Tavern ……④ 仕事の世界

仕事の世界 「俺たちが組合を持ってるってのは、クソみてェにいいことさ」 ――『オアシス』に来る大工の弁 ● はじめに 歴史的に言って、西欧社会においては人生の中心は仕事であった。その自己イメージと、その地域での地位双方は、どれだけ稼ぐかにかかって…

Blue Collar Aristocrats : Life Styles at a Working Class Tavern ……③ 居酒屋と街とセンセイ

居酒屋と街とセンセイ 「『オアシス』であんたはいつだって楽しい時を過ごせるってわけだ」 ――『オアシス』の常連の弁 ● 居酒屋 『オアシス』はご近所のための居酒屋ではない。その客たちは歩いてではなくクルマでやってくる。彼らのうちの何人かは数マイル…

Blue Collar Aristocrats : Life Styles at a Working Class Tavern ……② はじめに

はじめに 「おれたちゃあんたのことを、ポリ公にしちゃいいヤツだ、と思ってたんだぜ」 ――筆者についての『オアシス』の常連の弁 社会、とりわけ複雑で多様な合衆国のような社会においては、社会の異なった切片を記録し、分析することは重要な作業である。こ…

Blue Collar Aristocrats : Life Styles at a Working Class Tavern ……① まえがき

Blue Collar Aristocrats Life Styles at a Working C作者:Lemasters, E. E.University of Wisconsin PressAmazon まずは、例によっての言い訳から。 翻訳を引き受けたものの、なんだかんだで延々お手玉せざるを得なくなり……あ、いや、正直に言えば、ただた…

「団塊の世代」と「全共闘」・余滴②――呉智英かく語りき・断片

● 創価学会 創価学会は危険な組織か、とよく議論されるけど、創価学会に対して自由に批判があり得るうちは、さほど危険ではないと私は思ってる。この場合の批判というのは、何も高尚でお上品なものだけではなくて、野次や嘲笑、罵倒なんかも含めてのことだけ…

「団塊の世代」と「全共闘」・余滴①――呉智英かく語りき・断片

king-biscuit.hatenablog.com 一連のエントリー、上記であらかじめ経緯来歴について説明した通り、2005年から6年にかけての頃、呉智英夫子との対談本というか、インタヴュー本的な企画がお流れになった、その概ね9割方かたちになっていた作業中の草稿データ…

「団塊の世代」と「全共闘」㉝ ――本で人生は変わり得る、か

実は最近、本が読みたくなくてしょうがないんだよ。このところ母親の面倒を見たり、忙しかったりしているから余計にそうなってるんだろうが、でも、そんな中でも特に小説は読みたくない。するすると頭に入って面白いものはないかなと思って、あ、そうだと思…

「団塊の世代」と「全共闘」㉛ ――三島由紀夫、連合赤軍、「学生」の東と西

●三島由紀夫 ――あと、呉智英さんの世代、いや、もう少し下まで含めていいと思いますが、吉本と共に三島の影響ってのも大きいことに驚くんですよ。あたしらにとっちゃ、少なくとも同時代の印象としては、単に自衛隊に突入して腹切っちゃったヘンな作家、程度…

「団塊の世代」と「全共闘」㉙ ――本音と建前、二分法の前景化

――「国家」ってのがもうあらかじめそんなに大変な争点になってた、ってことなんでしょうね。で、そんなものは崩壊する、死滅する、というのが理想郷である、と。なんというか、ラスボスとしての「国家」を想定してそれを倒すことが正義、というのは、まず想…

「団塊の世代」と「全共闘」㉗ ――吉本隆明ブランドのご威光

第四章 同時代の知の巨人たち、もしくは知のはぐれものたち● 吉本隆明 吉本の影響力は、やっぱり絶大だったね。でも、その理由というのは、ものすごく単純なことで、要するに若者はヒーローを求めていた、そういうことだよ。 ――それはまたわかりやすすぎると…

陳述書 2022.7.5 (抜粋)

*1 私は、原告の大月隆寛です。2020年8月28日に本件訴訟を提起いたしました。すでに、陳述書は提出しておりますが、仮処分の審理のために作成したものですので、本件の訴訟における大学側の主張も踏まえて、下記の通り陳述いたします。 私の懲戒解雇…

ばんえい十勝「公社化」騒動・草稿

*1 *2 去る1月27日、北海道は帯広の、ばんえい十勝・帯広競馬場で、ばんえい十勝調教師会・騎手会とばんえい競馬馬主協会が、帯広市長に対して「要望書」を手渡しました。 内容は、「ばんえい競馬の公社化に反対する」というもの。これだけでは何のことか…

本邦いまどきの「ポリコレ」・考

● 明らかに何かがおかしい。いや、前からおかしくなってきているのは確かでしたが、ここにきてまたそれが一段と加速、もはや何か取り返しのつかないところにまで事態の底が抜けて、見渡す限り何やら煮崩れ始めたような印象です。 他でもない、昨今「ポリコレ…

第1回口頭弁論 冒頭意見陳述

*1 裁判を始めていただくにあたって、冒頭、少しだけ自分の今の気持ちを述べさせていただきます。 自分は1989年以来、大学や研究所の教員として生活してきました。2007年以来、縁あってご当地の札幌国際大学に教員として勤めてまいりました。同時にもちろん…

札幌国際大学、燃ゆ

*1 *2 ● 6月29日付けで、札幌国際大学より「懲戒解雇」されたことについて、7月13日付けで札幌地方裁判所に、地位保全及び賃金仮払い仮処分命令申立書を提出し、受理されました。 大学側からの「懲戒解雇告知書」に記載されていた「懲戒の事由となる事実」は以下…

「懲戒解雇」の顛末――でぶ太郎、野に放たれる

*1 *2 勤めていた大学から、「懲戒解雇」を申し渡されました。北海道は札幌にある札幌国際大学という、今年で創立51年目になる小さな私大です。地元の人たちには、静修短期大学という名前の方が今でも通りがいいかも知れません。 こういう地方の私大のご多分…

「団塊」的知性論

*1 団塊の世代の、特にプチインテリ層 (関川夏央ならば「知的大衆」と呼ぶかも知れません) 特有の世界観や価値観、というのは、そろそろまともに、言葉本来の意味での「歴史」的な文脈での考察対象にしておいた方がいいと思われます。 単なる「サヨク」だの「…

青天井で送る朝

● 相変わらずの蒸し暑い朝だった。 背丈ほども伸び上がった雑草たちが、むせかえるような夏の匂いを撒き散らしていた。足許の土は昨日の激しい夕立の名残か、まだたっぷりと湿気を含んでいて、踏み込むたびに意外に重く、長靴に泥がまつわりついた。それでも…

【翻訳】D.A.メッサーシュミット「手もと足もと」での人類学について――文化人類学における「自文化研究」の今日的意義

*1 Donald A. Messerschmidt On anthropology“at home” In Anthropologist at Home in North America : Methods and Issues in the Study of One's Own Society. Edited by Donald A. Messerschmidt Cambridge University Press, 1981*2 ● これまで、通過儀…

【草稿】書評・臼田捷治『工作舎物語――眠りたくなかった時代』(左右社)

*1 *2 さてお立ち会い、「工作舎」という名詞一発で反応できる、しちまう向きは言うに及ばず、すでに歴史と距離感持つ若い衆世代にとってはおのれの現在からどう地続きにしてゆくか、その器量試しの一冊だ。 70年代半ば、東京の片隅に宿った小さな集団。編集…

「柳田國男」から、ふたたび

柳田國男、という名前も、そろそろ忘れられかけているのかも知れません。 何より、彼の名前をちゃんと記憶しておくべき前提、何と呼べば最もしっくりくるのかよくわかりませんが、たとえばそう、「思想史」とか「精神史」といった物言いで少し前まで仰角の視…

「挫折」と「敗者」――「北の人」山口昌男のこと

薄く霜がおりたようなフロントグラスに、はじける朝の陽がまぶしかった。くたびれた商用バン、使い込んだディーゼルエンジン特有のあのゴロゴロ音とすすけた排気ガス臭が、見渡す限り真っ白な冬の雪原に似合っていた。 とりあえず除雪だけされた黒い帯のよう…

書評・横田増生『評伝ナンシー関』草稿

評伝 ナンシー関 「心に一人のナンシーを」 (朝日文庫) 作者:横田増生 発売日: 2014/06/06 メディア: 文庫 先に死んじまったんだから、何書かれてもしょうがないっすね――そんなことを言ってそうな気がする。いつものように、軽く憮然としたあの顔つきで。 急…

創刊40周年、のこと

創刊40周年、ってのは、何にせよまずすごいですね。素直におめでとうございます、です。 創刊当時、70年代初めの札幌のメディア状況がどんなものだったのか、『クオリティ』『財界さっぽろ』等の先行誌に対してどういうスタンスで殴り込んだのか、などなど記…

税金、ってなに?どうして払うの?

税金というのは、簡単に言えば、「国」という仕組みを動かしてゆくための費用です。 「国」という仕組みは、もともと人間が生きてゆく上で絶対に必要というわけでもありませんでした。けれども、ただ生きてゆくためだけでなく、よりよい生活をしようとすれば…

民俗学的知性、について・メモ

民俗学に可能性はもうない、と言い続けて久しいわけです。 大学という場所の民俗学がキライだった、ってのもあります。アタマが悪いんですよね。人が俗物過ぎる。そのことを許容できなかった程度にこっちも若かった、ってことなんでしょうが。 自由に生きる…

「開拓」前後

乗ってきたのは木の船だった。 荒削りな樫の板でつくられていた。 塗装も何もしてなかった。 小さくはなかったが、大きくもなかった。 エンジンはついていたが、いつもぜんそく持ちみたいにあえいでいた。 燃料がなくなった時のために、帆柱がついていた。 …

「学者」世間の疎ましさ・雑感&メモ

「学者」の世間の、いったい何がそこまで疎ましかったのか。 「学会」「学界」の揺籃におさまりながら、指導教員や先輩たちの視線に対してまっすぐに身構えつつ、しかし生身の自分の内側には確実にアンビシャスでもの欲しげな「功名心」の気配を満々とたたえ…

ざまあみやかがれ、アメ公

*1 ざまあみやがれ、アメ公! ……てなことをいきなり言うと、いまどききれいにアブナいシト扱い、周囲十数メートル以内に誰もいなくなること必定でありますな。 あ、いや、いかにあたしだとて場所もわきまえずそんなこと言やしませんし、そこらの保守オヤジみ…