1993-03-01から1ヶ月間の記事一覧

確かな足もと≒〈リアル〉は一日にしてならず――NHK「やらせ」問題の周辺

*1● 「事実」と言うと顔しかめる。「現実」と言うと笑われる。まして、それを何らかの「正義」の匂いを背景にもの言いすると、人はそのまま耳ふさぐ。 気がつくと、「事実」や「現実」というもの言いがそこまで薄っぺらで奥行きのない、信じるに足らない響き…

それぞれの「豊かさ」

ここ二年ばかり、ある調べもののため、定期的に小倉に出かけている。 なにせ大学の教員稼業のこと、世間の他の仕事にくらべればまとまった休みがとりやすいのは確かだが、それでも、ゆっくり調べものができるだけの時間と体調を確保できるのはやはり夏休みと…

戦争が「とにかくよくないもの」のままであることの危険性

*1● 「戦争」というもの言いが、ずっと気にかかっている。 単語としての「戦争」というのは、それが活字のかたちで目に触れる場合であれ、あるいはもの言いとして耳に入る場合であれ、今やこの国ではとにかくよくないもの、ひたすらに悪いもの、無条件に忌み…

「歴史」という不自由

「歴史」はもういらない。「歴史」というもの言いにまつわっているあのカビ臭さが、今やまず絶望的にまで不自由だ。 たとえば、書店のコーナー、積み上げられる「歴史」書の類。そこにたむろするアスコットタイのオヤジたち。あのたたずまいが今のこの国の言…

社会のことを考えるな

ごくたまにだけれども、学生主催の講演会で話をしてくれと言われる。 とは言え、人を呼んで話を聞くという作法自体がすたれてきているご時世。主催者側には何の目算もない場合が多く、そうするものだ、という程度のこと。ひどい時には「いまどきの大学生にひ…

図書新聞