思想

『噂の真相』創刊15年

『噂の真相』が創刊十五周年を迎えた。 発行部数についてはもったいつけて一切沈黙を守っているが、流通その他の周辺情報から推測すると八万部前後は出ている様子。このような規模の小さな雑誌が廃刊、あるいは事実上寝たきり状態になってゆく中、曲がりなり…

書評・斉藤孝『スポーツマンガの身体』

スポーツマンガの身体 (文春新書)作者:齋藤 孝文藝春秋Amazon マンガはすでに日本人の一般教養である。かつての浪曲がそうだったように、戦後の日本人のものの見方、考え方を形成してきたメディアのひとつになっている、それは間違いない。そういう意味で、…

あとがき (『無法松の影』文春文庫版)

*1 まずは、八年前の自分にしみじみとエールを。 おい、おまえさん、こんなにウブでマジメだったんだなあ。なんとまあけなげに、まっすぐに、いたいけな民俗学者やろうとしてるじゃんか。 『厩舎物語』(日本エディタースクール出版部 現在、ちくま文庫)に…

小谷真理vs.山形浩生事件(笑)、はこう読め!

*1 ああ、キモチ悪ィ。二日酔いの胃袋にバリウムをむりやり五リットルくらい流し込まれたみてえなキモチ悪さ。胸やけしまくって吐き気がとまらねえや。こうなるのがわかってたから実はこの原稿だけは、仕込みだけはずっとやりつつ、テキストにするのが剣呑で…

田嶋陽子、かく闘えり!(笑)

しかし、これほど世間に注目された選挙も近年、珍しかったのではないでしょうか。いや、ほんとに。 他でもない、先の統一地方選挙で神奈川県知事候補に名乗りをあげた田嶋陽子センセであります。 この御仁については、もう説明なんぞ不要でしょう。考えなし…

「現場」ということ

*1 ● 肩書きに「学者」とある。ああ、本を読むお仕事で、と言われる。 もちろんそうだ。しかしそれだけがすべてでもない。 情報化社会とひとくくりにされる錯綜した との現実の中では、文字はひとり文字だけで幸せに存在できるわけでもない。それが学聞と呼…

「奇跡の詩人」騒動は終わらない

「製造物責任」という言葉がある。企業が自ら生産したものが引き起こしたできごとに対して負う責任のことだ。「モノ」を生産するメーカーに適用される言葉だが、近年、いわゆるマスコミなどの情報産業についてもこの「製造物責任」が問われるべきでは、とい…

東大本郷田口祭り(笑)、突撃敢行余滴

東大本郷の田口祭り(笑)の一件です。【サイバッチ!】インデプスの方で概略ご報告したんですが、追加分っつ~か、続報っつ~か。 周辺情報総合するとですね、田口の野郎、大学とかインテリとかのまわりをウロチョロしては営業かけてるようです。島薗進セン…

稼業としての書評、本読むことのいまどき

古本屋に入ると、その値崩れ具合に愕然とすることが最近、よくあります。 給料をとっていた頃は、それこそ稼ぎの大半を古本に突っ込んでいたこともあって、やくたいもない雑本ならば佃煮にできるほど抱え込んでいますが、そうやって培ったはずのなけなしの相…

「論争」がなくなったワケ

*1 最近、論争というのが表立ってなくなっちまって久しいですねえ。 どうしてこの論争がなくなっちまったのか、以前、あたしゃ総括して説明したことがあります。はしょって言えば、そんなことやらかしたってトクにならない、ってことをみんな気づいちまった…

「新・教養主義」の昂揚ぶり

街をぶらぶらしていて、見つけた古本屋にふらっと入るのが楽しみ、でした。 でした、と、過去形にしたのには、少しばかりワケがあります。 大学を辞めてこのかた、不見転で古本をうっかり買い込んでしまうような財布の余裕がなくなったことがひとつ。もうひ…

匿名批評の伝統

書評、というのとはちと違いますが、でもやはりこれは「批評」とか「評論」界隈でのそれなりに大きなできごとだと思うので、触れさせて下さい。産経新聞の名物コラム欄「斜断機」が、この三月いっぱいで終了したんですね、これが。 もともとは匿名の批評コラ…

ギターがくれた「自由」

● ギターが、「自由」だった。 「エレキ」と称された電気ギターではない。「フォークギター」とひとくくりにされたアコースティックの、そしておそらくはスチール弦のギター。60年代ならばPPMやジョーン・バエズ、ウディ・ガスリーやボブ・ディランの画像と共…

『噂の真相』廃刊、か?!

『噂の真相』がいよいよ来年春に廃刊だそうであります。 え、そのハナシ、ついこないだの【サイバッチ!】で飛ばしてた、って? はいはい、あれ、あたしのタレコミ。ソースは、って? 神林編集長じきじきにそう聞いたんですから文句はないっしょ。 【サイバ…

「立花 隆」のつくられ方

*1 メディアが英雄を作り出す手癖、というのがあります。 英雄、というのが大げさならば、うっかりとあらぬところに人を祭り上げてしまうからくり、とでも言い換えてもいいでしょう。 何も今に限ったこっちゃない。人が言葉と意味の動物であることを始めた昔…

TV評・「TVタックル」

田嶋陽子は「バカ」である。これはすでにニッポンの常識である。なのに、選挙で四十万票も獲得して今や国会議員。これもまた事実である。その「バカ」が先日の国会代表質問で「バカ」全開、ビン・ラディンを捕まえるな、話し合え、と吠え、あげくは「笑うな…

フェミニズム、ってのがありまして……

かつて、フェミニズム、ってのがありました。 ました、って過去形にしてるのは、もう実態としては「イズム」なんて代物じゃとうになくなっちまってるってことを前提にしてるんですが。 ニッポンのフェミニズムってのは、基本的に「オヤジ」とセットで考える…

「文科系」の頽廃

いまどきの「大学」の状況ってやつは、果たしてどれだけきちんと伝わってるんでしょうか。受験シーズンになると、未だに「東大合格者ランキング」的な企画が週刊誌あたりに載ったりしますが、ここまで膨れ上がった大学のその中身にどういうとんでもない「D…

『フォーカス』の終焉

『フォーカス』が斃れた。 写真週刊誌の代名詞のようにまで言われ、「フォーカスされる」といったもの言いまで芸能界周辺を中心に一般に使われるようになった、言うまでもない新潮社の名物雑誌。それがとうとう「休刊」を宣言して撤退を決めた。創刊以来まる…

日本という自意識

ここのところ韓国やら中国やらから、なりふり構わぬ抗議が続いていて、ただでさえ悪役になっているところへ、なおのこといらぬ注目を集めている「つくる会」教科書。まずは歴史の方がやり玉にあがりがちだけれども、公民の方も成り立ちとしては一蓮托生、こ…

書評・中沢新一『フィロソフィア・ヤポニカ』草稿

フィロソフィア・ヤポニカ 作者: 中沢新一 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2001/03 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 6回 この商品を含むブログ (18件) を見る *1 一連のオウム事件A級思想戦犯中沢新一、堂々の非転向宣言、であります。ほれ、この通…

書評・『三島由紀夫VS.東大全共闘 1969-2000』

三島由紀夫VS東大全共闘: 1969-2000作者:三島 由紀夫藤原書店Amazon*1 存分に笑わせていただきました。いや、ほんとに。 表紙の惹句からしてすごい。「伝説の激論会“三島VS.全共闘”(1969)、そして三島の自決(1970)から三十年。『左右対立』の図式を超えて両…

国家と国民――重要法案成立の夏を問う

*1 ● 日の丸・君が代(国旗国歌) 法案、「盗聴」(通信傍受) 法案とたて続けに「国家」 の力を強めるような法律が制定された、と言われます。新聞や雑誌などでも、国家主義 の時代、あるいは、全体主義 の復活、といった論調が見られますし、あの暗い時代への…

「戦争」と「平和」を考える

国会での憲法調査会の設置。「日の丸」「君が代」の法制化。若者たちを襲う苛酷な競争社会の到来と、世界を再び細分化するナショナリズムの隆盛。21世紀を目前にして、「平和」という言葉の権威は明らかに揺らぎ始めたように見える。民俗学者大月隆寛氏と哲学者中…

書評・中村とうよう『雑音だらけのラヴソング』(ミュージック・マガジン社)

雑音だらけのラヴソング (とうようズコレクション)作者:中村 とうようミュージックマガジンAmazon 音楽を語る、論ずる、という作法が衰退して久しい。 音楽だけじゃない。映画やマンガ、いやいや、見たり聞いたり読んだりしたら何か能書きを言いたくなる表現…

隣の「市民サマ」から眼をそむけないために(抜粋)

*1 昨今、「左翼」批判が盛んだ。とりわけ、二十代半ばあたりから下、いわゆる「学生」とひとくくりにされるような中での、おそらくは何かものを考えようとうっかり思ってしまうようなタチの人間の間には、このような気分は予想以上に深く広く浸透し始めている…

元気出せ、サンデー毎日!

えー、わが『サンデー毎日』の編集長が新しい方に代わられたそうであります。のみならず、かなり大がかりな人事刷新が行なわれた様子。いや、こちとら屋台引いてる単なる零細出入り業者ですからそれ以上のことはよくわかりませんが、暖簾も格式もある大店(…

異なる水準の言葉の連携、そして、社会・歴史像の転換

■「情報環境」という問いが今、必要な理由 くだらないこと、ささやかなこと、とるにたらないことがただそのようなものとして充満している「日常」を、構築的にではなく記述的にとらえる態度が、果たしてどのようにこの島国に棲みついた人々の意識の歴史の上…

「無用の長物」の消息について

〈敗戦後という状況の中で輝いた「民俗学」〉 柳田国男が構想した大衆社会の内側からの「歴史」の回復運動について、ご紹介がてらに語ってきました。 一九二〇年代から三〇年代にかけての大衆社会化が進展してゆく時期に運動として立ち上がったそれは、当初…

岩下俊作選集、のこと

もともとそういうタチではあったのだけれども、この春に勤めを辞めてこのかた、パーティーとか宴会、果てはちょっとした呑み会の類に至るまで、とにかくそういう場に顔を出すことがとことんおっくうになってしまっている。 これではいかん、ただでさえ人から…