思想

酒鬼薔薇の周辺、に告ぐ

かの神戸の一件について、案の定「教育」のせいや「家庭」のせい、果ては「社会」のせいにするもの言いが一部で流通し始めている。 反吐が出る。親ですら何してるかわからなかったものを学校の先生がわかるはずがない。まして社会が知ったことか。なのに、こ…

酒鬼薔薇の「責任」

*1 さあ、もうはっきり言おう。顔をあげて、大きな声で正しくこう言い放とう。 それは社会のせい、ではない。学校のせい、でもないし、家庭のせい、でもない。教育のせい、でもなければ、地域のせい、でもない。 何か事件が起こった時に、そのように言いたが…

ワイドショーとニュースの関係

「神戸小六男児惨殺事件」が世間の話題をさらっている。とんでもねえ事件だというのはもちろんだけれども、ああ、とうとうこういう怪物みたいなわけのわからない内面を持ったのが平然と日常に存在するようになっちまったんだなあ、という感慨が僕にはある。…

「歴史」がその輪郭を変えてゆく

● 「歴史」がその輪郭をみるみる変え始めています。この世紀が変わる頃までには、われわれ日本人にとっての「歴史」のありようは、少なくとも戦後半世紀の間共有してきたそれとはずいぶん違ったものになってゆくような気配が、良くも悪くも濃厚にあります。 …

腫れもの扱い、北朝鮮

北朝鮮が亡命騒ぎで大変なことになっちまってます。 「かつてのソ連からマルクスが亡命したようなもの」なんてうまいこと言う向きもあるけれども、何にせよあの黄さんという書記は北朝鮮でそれくらいとんでもなく高い地位にある人ということらしい。 一方で…

「歴史教科書問題」の、ある本質

教科書なんてどんな妙なものでも教え方ひとつ、「これは間違ってますよ」という反面教師だって教科書の役割だとさえ思う。それに、今に限らずこれまでだって何も教科書だけで人々の「歴史」意識が形成されてきたわけでもない。時代劇や小説や、その他実にさ…

松本智津夫の現在

メディアの舞台での「麻原彰晃」は、いつの間にか「松本智津夫」と呼ばれることになっているようであります。大声を出して興奮したり独語したりで保護房に移されたそうだけれども、今頃になって拘禁反応が出てきたんだろうか、それとも大方の人がうすうす疑…

「アジア」の純真

先週文句を言った尖閣列島の問題の続き。その後、香港にある日本の通信社が抗議船に乗り込んで撮影していた映像がテレビ放映された。でかした。こういう足腰がないとニュースは面白くならねえ。 あの抗議団体ってのが実はほとんど何の準備もないままで、しか…

「正論」的「保守」言説の限界

*1 「保守」と言われ、「右」と言われる。最近では僕などでさえ、こういう場で連載を持っているというだけでそのようにレッテルを貼られることが少なくない。まして、いわゆる「東京裁判史観」に疑問を呈し、その枠組みを相対化するようなことを言ったならば…

続く「盗用」問題の背景

立て続く「盗用」問題に出版界が揺れている。それも学術や思想関係といったいわゆる“マジメな本”の領域でだ。講談社のメチエ選書の一冊にかなりひどい「盗用」が発覚し、すったもんだのあげく回収騒ぎになったのが今年の始め。また、吉川弘文館の出した入門…

「運動」から「排除」され始めた、小林よしのり

*1 漫画家の小林よしのりが、これまであれだけ八面六臂で支援し続けてきた「エイズ薬害訴訟を支える会」から逆に排除され始めている。 少し前、『サピオ』(小学館)に連載中の「新・ゴーマニズム宣言」の中で、支える会の若いメンバーの将来を懸念して、ま…

メディアと結果責任

坂本弁護士一家殺害事件はあってはならない不幸な事件だった。それは全くその通りだ。何も一部の弁護士たちの言うように「弁護士が殺害されるなんてとんでもない社会だ」てな特権意識に立ってのことではない。どんな商売に携わる者であれ通常の市民生活を営…

佐高と猪瀬の泥仕合

佐高信と猪瀬直樹の喧嘩が、いよいよ泥仕合の様相を呈し始めた。 もとはと言えば、猪瀬が原作をやっていた劇画の中で、明らかに佐高とわかる人物を登場させて当てこすったのが始まりで、その後、両者共機会あるごとに悪罵の投げ合いをやっていた経緯がある。…

「宗教」は、なぜ隠さねばならないのか

辞任した田沢法務大臣が立正佼成会をバックにしている政治家である、ということは、今回の一件で初めて知った。いや、そんなもん当の信者の方々はとうにご存じだったのだろうが、でも、こちとら世間のもんにはちっとも知らせてくれてないんだもの。へえ、そ…

宗教学者と破防法の関係

昨今袋叩きにあっている宗教学者島田裕巳センセイとは小生、多少顔見知りの間柄であります。だもんで、この四面楚歌に関しては個人的にはお気の毒とは思うが、しかし、弁護するつもりは全くない。いや、良くも悪くも学者らしい、実にやんごとないお人柄で、…

捜査現場と陰謀史観

『週刊プレイボーイ』十月三日号に「現役・公安幹部の告白」という記事が載った。オウム真理教関係の事件捜査に携わる公安幹部の「独走スクープ」と銘打った派手なもので、八月十五日号に続いてこれが二回目だ。 今回は坂本弁護士事件について。オウムの単独…

火野葦平

*1 火野葦平とは、徹頭徹尾「孤独」な作家だった。 別に、厄介な自意識を持てあまして一人勝手に孤独に陥ってゆくような、俗流文学青年の自閉趣味をさして言うのではない。いや、少なくともものを書こうとするような性癖の人間である限り大なり小なりそのよ…

林 芙美子

『放浪記』が好きだ。 たとえば、女給仲間との身の上話に興じる様子を描写したこんな一節。 「こんな処に働いてゐる女達は、初めはどんなに意地悪くコチコチに用心しあってゐても、仲よくなんぞなってくれなくっても、一度何かのはずみで真心を見せ合ふと、…

岡 正雄

*1 民俗学や人類学まわりの学史を浪曲仕立てでやったらどうなるか、ということを、まだ院生の頃、いずれ劣らぬ悪ガキたちの間でやっていた時期がある。 その時気づいたことは、“ふたつのミンゾク学”(民俗学と民族学)が未だ渾然一体としていた戦前には、柳…

今東光

*1 正真正銘のバラケツである。つまり「不良」だ。 大正四年の一学期、関西学院中学部三年を諭旨退学。淡路島でひと夏遊んで暮らした後、親戚一同の協議により城崎の県立中学に転校。ここでも騒ぎを起こし、教師を殴って退学、神戸に舞い戻った。元町の絵具…

斎藤龍鳳

*1 「ルポルタージュ」とか「ノンフィクション」とか呼ばれる表現領域の、その文体がどのように構成されてきたのか、ということについて考える時、僕はことさらに斉藤龍鳳の仕事を引用することがある。今どきの大学生はもちろんのこと、同年代のもの書き稼業…

秋田 實

*1 ラジオの出現が二人の人間による対話という現在の漫才の形式を定着させた、というのが、これまで民衆文化を語る時のひとつの定説になっている。そして、その対話という形式を、にわかや軽口の要素に音頭の形式が混入した雑芸の百貨店のようだった「万歳」…

TBS「サブリミナル」映像騒動

TBSの「サブリミナル」映像騒動は、事態の細部も責任の所在もよくわからないような「謝罪」のみで、例によってうやむやのまま収束してゆきそうである。 これは全くの当て推量で言うのだから、もしも違っていたらTBS関係者に本当のところをぜひご教示い…

あなたの「立場」って何?――宗教学者だけが「無責任」なのではない

宗教学者が火だるまになっている。事態への対処があきれるほどナイーブで馬鹿正直な分、何やら島田裕巳だけが矢面に立ってしまっている観があるが、かつてオウムを持ち上げていたか否かなどとは全く別に、宗教学という看板を掲げて世渡りしてきた者全てが今…

オウムとメディア、その「批判」のありかたについて

*1 地下鉄サリン事件から始まったオウム真理教がらみの大騒動だが、事態がひとめぐりして幕切れが見えてくるに連れて、改めて警察の過剰捜査についての批判が出始めている。それらは報道のあり方に対する批判とも複合しながら、実際のところ何が起こっている…

オウムとメディア、その「批判力」のありかたについて (草稿)

*1 地下鉄サリン事件から始まったオウム真理教がらみの大騒動だが、事態がひとめぐりして幕切れが見えてくるに連れて、改めて警察の過剰捜査についての批判が出始めている。 それらは報道のあり方に対する批判とも複合しながら、なるほど大騒ぎしていること…

オウムとメディア、その「批判力」のありかたについて

*1 地下鉄サリン事件から始まったオウム真理教がらみの大騒動だが、事態がひとめぐりして幕切れが見えてくるに連れて、改めて警察の過剰捜査についての批判が出始めている。それらは報道のあり方に対する批判とも複合しながら、なるほど大騒ぎしていることは…

オウム・陰謀論と「リベラル」

*1● いよいよもって大変な局面になってきましたね。○ オウム真理教の一件かい。● そうですよ。確かに状況証拠からはサリンを作ったってことだけは疑われても仕方ないし、これまで拉致監禁なんか繰り返してきてることもまずいですよ。でも、それはそれとして…

民主的「制限選挙」のススメ

*1● 今から六年前、アントニオ猪木が初めて出馬した八九年の参院選の時に、戦後選挙史上例を見ない大量の無効票が出た、という話がまことしやかに語られたことがあります。 この、事実かどうか普通の人には容易に確認できないという意味ではまごうかたなく噂…

宗教学者たちの醜態

東京の地下鉄“サリン”殺傷事件から、オウム真理教強制捜査へ至るまでの展開は、さまざまな方面に衝撃を与えています。“サリン”そのものがこの原稿を書いている段階ではまだ発見されていず、また、上九一色村の教団施設にいたとされる信者のかなりの部分がす…