文学

「団塊の世代」と「全共闘」㉙ ――本音と建前、二分法の前景化

――「国家」ってのがもうあらかじめそんなに大変な争点になってた、ってことなんでしょうね。で、そんなものは崩壊する、死滅する、というのが理想郷である、と。なんというか、ラスボスとしての「国家」を想定してそれを倒すことが正義、というのは、まず想…

「団塊の世代」と「全共闘」㉗ ――吉本隆明ブランドのご威光

第四章 同時代の知の巨人たち、もしくは知のはぐれものたち● 吉本隆明 吉本の影響力は、やっぱり絶大だったね。でも、その理由というのは、ものすごく単純なことで、要するに若者はヒーローを求めていた、そういうことだよ。 ――それはまたわかりやすすぎると…

「団塊の世代」と「全共闘」㉕ ――「教養」願望、と、おたく的知性の関係

*1 *2●教養願望とオタク的情報量の集積 ――でも今、浅田彰や宮台真司がアニメ語るとカッコ悪いでしょ(笑)。もちろん、当人はそう思っていないんだろうけど。 それは、教養になり得ていないんだよ。 ――マンガでも一緒ですよ。浅田が岡崎京子を語ったら、ほん…

「団塊の世代」と「全共闘」㉔ ――オンナの自意識、教養主義の残映

●女の自意識、戦後フェミニズム ――明治、大正、昭和と、女の欲望、自意識も変わってきます。女に自意識どころか性欲がある、なんて当時としてはとんでもない話だったわけですよね。 俺の子供の頃、母親の「主婦の友」の性の悩みコーナーとか見ても、女に性欲…

「団塊の世代」と「全共闘」㉒ ――オトコとオンナ、自慰の暗闇、処女性の霹靂

◎男と女、自慰の暗闇 処女性の霹靂 ――「婚前交渉」と同じように、当時はオナニーも問題になったでしょ。自慰、マスターベーション、ですが。 もちろん、問題になった。私の世代では、小・中学校の頃、オナニーは変態扱いだったね。 ――うわ……いきなり「変態」…

まるごと、としての「うた」の可能性

● いま流行っている音楽、という設定が、いつの頃からか、われわれの日常の中から失われたように感じています。そして、そのことの意味というのも、もうあまり立ち止まって考えることもされなくなっているようにも、また。 思えば、テレビのいわゆるヒット・…

「作詞家」になりたい

● 敗戦直後、『夢とおもかげ』所収の論考において、南博が正当にも言及していた「大衆娯楽」の「産業構造」の部分への視線は、その後の彼ら思想の科学研究会の進路はもとより、「戦後」の過程における本邦日本語環境での人文社会系自体の脈絡においても、それほ…

対談・朝倉喬司・頌

*1 現代書館から『朝倉喬司芸能論集成』が刊行された。ルポライター・朝倉喬司氏(1943~2010)の芸能関係の文章を集めた968頁の大著である。刊行を機に、編集委員会のメンバーである、株式会社出版人代表の今井照容氏、民俗学者の大月隆寛氏に対談してもら…

「作詞家」と「作詞」の今昔

● 「作詞家」という肩書きも、もうあまり見かけなくなった。 いや、商売としては現存しているのだろうが、それが仕事の肩書きとして眼に触れる機会が少なくなったというだけのことなのか。web検索を叩いてみると、それら「作詞家」志望をあてこんだとおぼしきサ…

「歌謡」と「曲」の来歴

● 戦前、ざっと大正末期から昭和初期にかけて、「童謡」と「民謡」はうっかり隣り合わせになり始めていた。そこでは「童」と「民」、つまり「子ども」と「民衆」≒普通の人々が、共に「謡」≒「うた」を媒介としながら、文字・活字ベースの情報環境で編制された〈知…

雨情は必ず「うた」にした

詩が「うた」であり、「うた」である以上、それは実際に声に出し「うたわれるもの」であったということは、今のように活字・文字を介して詩を「よむ」のがあたりまえだという認識になっていると、すでに気にかけることすらないままに忘れられている。同じく…

福本日南とマクルーハン

言葉にまず意識を合焦させて「うた」を聴く。それが音楽であれば、歌謡曲でも洋楽でも、歌詞があるならまずその歌詞に耳がゆく。こういう性癖みたいなものは、個人差や濃淡はあれど、誰しもある程度持ってしまっているのだろう。少なくとも、戦後の本邦の教…

「うた」と言葉について

「木綿のハンカチーフ」にしても「ウエディング・ベル」にしても、未だそこまで自分の内面、やくたいもないこのココロの銀幕に鮮烈な印象を残しているらしいのは、単にその「歌詞」、言葉としてそこで歌われている言葉の意味内容においてだけでなく、それが具…

「カバー」ということ

「カバー」という言い方がある。特に音楽の、個々のうたや楽曲について言われるようになった印象ではある。元のうたや楽曲があって、それを元の歌い手やバンドとは別の人が歌ったり演奏したりする、そのことをさして言う言い方ではある、一応のところは。辞書…

「おりる」ということ――渡辺京二の方法意識について

――ひとりひとりの個の生は、こういう私化された小さな小宇宙の複合体であり、その複合体を鞏固な統一物と見せかけているものがもろもろの文化的観念的構築なのである。そして思想とは文学とはつねに、個的な日常の規定から、そのうえにそびえ立つ文化的観念…

「馬鹿」と「純情」――山田洋次『馬鹿まるだし』と戦後の民衆的想像力における「無法松」像の変貌

*1 *2 ――小説を映画化するということは、その小説からエッセンスだけを抽出して、そのエッセンスをもう一度、映画として豊かに再展開して行くことですから、言ってしまえば、エッセンスが濃厚でありさえすれば、原作の小説がくだらなくたってつまらなくたっ…

「恐妻」とその周辺・ノート 

● 「恐妻」というもの言いがあった。昨今ではもうあまり使われなくなっているようだが、敗戦後、昭和20年代半ば過ぎあたりから、当時の雑誌やラジオその他のメディアを介してある種「流行語」になっていたとされる。 この種のもの言いを糸口に何か考察を始め…

平山蘆江の不思議――民俗学的知性とその身体に関する一考察 

―― 一般の人は、花柳界といふ名で特殊部落のやうにかたづけ、時としてさげすみさへするし、文人たちも花柳小説と呼んで外道のやうにあつかひ、花柳界の人たち自身も弱い稼業とか、水商賣とかいふ風に、自らを卑下したがるのだが、もっと眞實に、親切に見なほ…

元気な共産党 ♬

共産党がこのところ、ミョーに元気のようで。また、それなりに理由もあるようで。 まず、『蟹工船』がにわかに売れ出しているらしいこと。言わずと知れた「プロレタリア文学」の古典。教科書その他で、ああ、名前くらいは、という方も多いかと。その古色蒼然…

「観光」と〈おはなし〉の間――「五寸釘の寅吉」をめぐって

*1 *2 ● 五寸釘の寅吉、の譚である。 「五寸釘の寅吉」、本名西川寅吉。明治時代の犯罪者で、何度も脱獄を繰り返したことで知られる。特に北海道の樺戸や空知の集治監から数度にわたって脱獄したことで、「有名」になった。単に全国的にメディアを介して知ら…

いまどきまだ『はだしのゲン』で……

――素直に読むことだ。そして、素直に感動することだ。とってつけたような政治の言葉でそれを説明しないことだ。その時、作中人物に稚拙な政治的言葉しか語らせられない 中沢啓治のもどかしさも感じられるだろう。 呉 智英 ● 毎年、八月十五日を目がけて、わ…

「七光り」の精神史を

青島幸男が、くたばりました。 全盛時クレイジーキャッツの傑作の作詞をものした才能として最大限敬意を払いつつ、いや、だからこそ、晩節汚しまくりだったよなあ、というのが率直な感想であります。 例によってテレビ以下、表のメディアは「元東京都知事」…

解説・田澤拓也『虚人 寺山修司伝』

大学に入って二日め、とある芝居のサークルにまぎれこんだ。アトリエ、と気取った名前で呼ばれていた掘っ建て小屋の暗がりから、ねずみ色した重い鉄の扉をあけて出てきたのは、分厚いポックリにベルボトムのパンツ、センター分けの長髪を肩口から上腕くらい…

永井豪インタヴュー

*1 ●今回は映画の実写版「デビルマン」がメインの話題なんですが、せっかくですから、まずは漫画の方からお話をうかがいます。 永井さんは、これまでギャグ漫画、シリアス物、ヒーロー物、ヒロイン物等、かなり幅広いジャンルの漫画を描かれていると思うんで…

ブンガクの勝負どき

僕はまず、「二十五歳未満の者、小説を書くべからず」という規則をこしらえたい。まったく、一七、一八ないし二十歳で、小説を書いたって、しようがないと思う。 小説というものは、或る人生観を持った作家が、世の中の事象に事よせて、自分の人生観を発表し…

あとがき (『無法松の影』文春文庫版)

*1 まずは、八年前の自分にしみじみとエールを。 おい、おまえさん、こんなにウブでマジメだったんだなあ。なんとまあけなげに、まっすぐに、いたいけな民俗学者やろうとしてるじゃんか。 『厩舎物語』(日本エディタースクール出版部 現在、ちくま文庫)に…

お立ち会い、田口ランディ、という「盗作=万引き」猿を、ご存じか?

田口ランディその「盗作=万引き」の研究鹿砦社Amazon*1 田口ランディ、という稀代のバカが一匹、ネットの居留地からうっかりとさまよい出て、ところかまわず臭い糞を垂れ流しては、世間サマに多大なご迷惑をかけております。 そりゃ何者かい、と問われれば、…

東大本郷田口祭り(笑)、突撃敢行余滴

東大本郷の田口祭り(笑)の一件です。【サイバッチ!】インデプスの方で概略ご報告したんですが、追加分っつ~か、続報っつ~か。 周辺情報総合するとですね、田口の野郎、大学とかインテリとかのまわりをウロチョロしては営業かけてるようです。島薗進セン…

昭和文学会、コヨーテアグリー、Fast Car……

● ども。先週お伝えした昭和文学会での講演も、何とか無事にこなしてきました。 なにせ、このところ棚落ち著しい文科系のガクモンの、それも一番役立たずな近代ブンガクなんてもんの専門の学会ですから、会場にいらっしゃってたのもセンセイ方と元気なさげな…

お仕事まわりの近況

え~、あっという間に飽きられたのか、もうすっかりメディアに注目されなくなった白装束ですが、今月号の『正論』であたしゃ「白装束観察日記」を書いております。king-biscuit.hatenablog.com 【サイバッチ!】周辺の読者諸兄姉には思いっきりガイシュツのネ…