主婦の「恋心」とは?

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 まず、その「恋心」ってのが曲者だよね。

 いい人だな、なんてなんでもない感情までいきなり「恋」に翻訳しちゃうと、単なる気まぐれやわがままかも知れないものすら今やおおっぴらにターボかかっちゃうでしょ。

 「恋愛」ってのも、早い話が人づきあいのヴァリエーションなわけでさ。眼の前の人間と対面して言葉で具体的な関係を作ってける能力と技術があって、初めて「恋愛」だってあり得るわけさ。ただ、それが互いの性を前提にした上での人づきあいってことに一応なってるから、「恋愛」ってのは厄介なんだけど。

 でも、それも人づきあいである以上、何にせよ相手と対面して具体的な関係をつくることからしか始まらないはずだよね。なのに、主婦の恋って案外そういうんじゃなくて、単に中学生が見知らぬ世界のアイドルにあこがれるのと大して変わらないようなもんだったりするじゃない。「大人の恋」なんてテレビドラマじゃよくあるけど、それだけ互いの立場を認めて尊重できる関係を作ってゆくだけの能力や技術があるんなら、大体いきなり「恋心」なんてもの言いに向かわないと思うよ。それはもう立派に「友情」とか「人づきあい」一般に収めてしまえるようなものなんだから。それをしもなお「恋心」って呼びたいのなら、そりゃもうご自由に、だけどさ。



*1:女性ファッション雑誌w『MINE』コメント原稿。何かの間違いでこんな仕事も舞い込んでたんだな……講談社つながりでの間違いだったかもしれないけれども。