「百貨店文化」の現在

 「百貨店文化」ってのは確かにあったと思いますし、それなりの歴史もすでにある。でも、「文化」が百貨店本来の流通機構の端末としての機能とまるで別に存在した、と思うのは大間違いです。百貨店に限らず昨今の経営者の方々は、ともすれば「文化」を提供しなければ、と過剰に思い込んでいるところがあるようですが、そんなもの、本業の商売がうまくいった上で初めて「文化」なんですよね。

 歴史的に見れば、百貨店というのは“もの”を見せること自体がイベントたり得た時期のメディアですから、見世物が本質なんですよ。ただ、「豊かさ」によって“もの”から見世物性が後退した今、百貨店にわずかでも将来があるとすれば、「場所」としての魅力をどう取り戻すか、でしかないでしょう。

 ただ、「文化」だと言っても、自分でも良さのわからないような代物にだけ目が向いて本業がおろそかなままでは、それってなんか貧乏臭い、で片づけられて終わりです。うちは商売そのものが「文化」なんだ、と胸を張る。それくらいの健康な潔さこそが今、必要だと思います