『猿岩石日記』の読み方/読まれ方

 『猿岩石日記』が売れている。

 言うまでもなく日本テレビ系の人気番組『進め!電波少年』の中で、ユーラシア大陸横断ヒッチハイクというとんでもない企画を押しつけられた駆け出しお笑いコンビが猿岩石。全く不案内な異国をロクに旅費も持たないまま半年あまりかけて何とかやってのけた、その珍道中の記録だ。上下二冊。より悲惨な目にあったアジア諸国での行程を記した上巻の方が売れているという。こういうものは、番組ですでに中身を見知っている読者が追体験的に読む本だろうから、そのあたりは割り引いて考えなければならないのだろうが、それにしても爆発的な売れ行きだ。

 これに対して、「やらせ」である、という新聞報道がされた。実は政情不安で陸路が危険な地域はあらかじめ飛行機に乗って移動していた、というもの。その後も週刊誌などで後追い報道がされている。なるほど、活字になったものにはそのような経緯は隠されている。だが、だからと言ってこれを「やらせ」と糾弾するのはどんなものだろう。少なくとも猿岩石のあの旅を笑いながら、馬鹿にしながら共感して見ていた視聴者の大部分にとっては「そんなの、当たり前じゃん」というのが正直なところのはずだ。この作りものとしての「ドキュメント」という現実をどこまで前向きに受け入れることができるか。それは、この高度情報化社会における新聞報道の“度量”を試されていることでもある。