いわゆる個人情報保護法案、というやつが修正されて、国会で採決間近とか。俗に「メディア規制法案」とも呼ばれ、こいつが通っちまったら好き勝手な取材なんかできなくなる、これはマスコミをおさえつけるための法案だ、ゴルァ！というわけで、ルポやノンフィンクション畑のもの書きが中心になって、出版社や新聞社、テレビなどまで巻き込んだ反対運動をここ二年足らずの間、いろいろと繰り広げていたという次第。
あたしもまあ、稼業のつきあいってもんもあるんで、吉田司御大のお誘いで一度、この反対運動の集会に顔出したことがあるんですが、運動の趣旨は理解できるにせよ、個人的にはあまりこの運動、首突っ込みたくないなあ、という感じだったんです、ほんとのところ。
だって、やり口というか作風があまりにもみっともない。吉岡忍や佐野真一てなルポ業界の元締め団塊オヤジを先頭にしたのはともかく、プロ市民系からマスコミ貴族、果てはロフトプラスワンの平野のオヤジや塩見鮮一郎＠よど号、宮崎学てなメンツまでがゾロゾロくっついて、やれコスプレデモだのテント村でハンストだのと、そりゃもう季節外れの文化祭かバリケードノリ丸出し。正直、正視できなかったんですよねえ。
「だって、しょせんはオレたちオヤジの相互慰労会みたいなもんでさ。傷痍軍人が集まって気勢あげてるようなもんだよ。遊ばしといてくれよぉ」
吉田司御大、こうおっしゃる。ふむ、さすがに『下下戦記』で水俣病患者の実態をミもフタもなく暴き立て、その後沖縄では『ひめゆり忠臣蔵』なんて本を書いて、「ひめゆり神話」をひっくり返す暴虐の限りで物議を醸してきた御仁だけあって、そのへんは重々承知の上らしい。それはそれで結構ですけど、でもなあ、手作りの文化祭でどうこうしようってのは、いまどきあまりにノリがイタいっす。
そう言えば、一昨年の９月２日、日比谷野音でこの運動のからみで＜個人情報保護法案をぶっと飛ばせ！ 2001人集会＞なるものが開かれたんですが、確か、吉田御大も発起人の一人でしたな。で、ひろゆきもゲストとして招かれていたんですが、やっこさん、午後３時出演の約束が実際に現れたのは、なんと午後８時。何してたんだと思うと、寝坊してた、ってんだから大物です。で、やっとのことで会場に来たと思ったら、司会者が「２ちゃんねるには女の子の電話番号とか個人情報とかが書き込まれて問題になっているようですが、個人情報保護法案が通るとそういうのも取り締まられることになるんですよ」と質問すると「いやぁー、そういうのも少しは取り締まったほうがいいんじゃないですか？ ここに集まったひとは全員反対なんですか？ 賛成のひといませんか？」と答えたとか。ほんとにもう、場が凍ったそうです。最前列にいた女がうっかり手をあげちゃって、主催者側が大慌て。隣の男が無理やり手を下げさせるという椿事もあったとか。その後、ひろゆきは主催者側の打ち上げにも出ずに、Kamezoさんたち【サイバッチ!】グループと合流したとか。だったらなんでそんな集会に出るのをオッケーしたのよ、と先日、『正論』の対談でひろゆきと会った時に尋ねたら、いやあ、なんか断るのも悪いと思って、ですと。そんな程度の運動じゃしょうがないっての。
それに、テキはここきて新聞やテレビといった大文字の「報道」を規制対象から外してきたもんで、案の定、新聞社やテレビ局は「じゃあいいか」てな感じで一気に日和って腰砕け。週刊誌や雑誌が狙い撃ちにされそうになっても、仲間うちでまとまらなくなっちまってるんですから、これじゃあなた、喧嘩になるわきゃない。
一千万単位の損害賠償を請求されるようになってる週刊誌などが、もっと本腰入れてゴロまく態度見せないことには、フリーの蛆虫だけじゃどうしようもないと思いますね。何より、マスコミってやつは彼らマスコミ業界人が思ってるほどもう世間から信頼され
てもいない、ってことをいい加減認識した上じゃないと、しょせん「なんだ、自分たちだけ特権的な存在にしといてくれ、ってことじゃないか」と、横目で見られるのがオチ。オレたちしょせん蛆虫ですからほっといて下さい。でも、身体張って世間サマを楽しませることだけには命張りますから、そのへん少しはお目こぼしを、てなこと言っとけば、もう少し世間の共感も獲得できるんじゃないかと思うんでありますよ。
ただでさえ食えなくなってる雑誌まわりの蛆虫業界。自分たちの稼業の危機だと本気で思っているのなら、まずそういうノリ、そういう作風で運動すること自体の効果ってやつをもう少し冷静に計測することだってあっていい、と思うんですがねえ。ムリなのかなあ。
● 鹿砦社の「スキャンダル大戦争４」に【サイバッチ!】の広告が載ったそうです。
こんなの↓ ……しかし、ひでえ広告だなあ（苦笑）
http://great.mailux.com/file_view.php?id=UP3EA357DF53EC1
