昭和文学会、コヨーテアグリー、Fast Car……


 ども。先週お伝えした昭和文学会での講演も、何とか無事にこなしてきました。

 なにせ、このところ棚落ち著しい文科系のガクモンの、それも一番役立たずな近代ブンガクなんてもんの専門の学会ですから、会場にいらっしゃってたのもセンセイ方と元気なさげな院生ばかりで、なんかあたしゃ、例によって場違いなところに紛れ込んだ珍獣、みたいになってたんですが、それでももう一方のペアになっていただいた柘植光彦センセ@専修大、などは、「四畳半襖の下張り」裁判当時の野坂昭如の思い出を語ってくれたりして、そのへんあたし的にはメディアの現場の同時代史の証言として、いろいろと興味深かったです。

 「四畳半…」裁判は、伊藤整なんかがからんだチャタレイ裁判以来の「わいせつ」裁判として判例的にも有名ですけど、警察側は当初から見せしめ的に摘発しただけで、実際、当の掲載誌の『話の特集』は発売後わずかで完売してたそうで、半月以上もたってからわざわざパクったのもそういう意図だったのに、野坂の方が初手から喧嘩腰というか、いっちょこれをネタにしてやれ、という構えがありありで、検察段階でも穏便に手打ちを、という感じだったのに、何が何でも裁判にしろ、というんで向こうも引っ込みがつかなくなった、てな感じだったようですねえ。

 あと、あまりにも有名な「戦災孤児」その他の野坂の「焼け跡闇市体験」ですが、それらのいくつかが事実と違っているらしいという「経歴詐称」疑惑についても、学会的にだけでなく、いろいろと物議を醸しているようで、野坂自身が最近エッセイなどの中でそのことを自ら告白し始めているあたりのことなどは、かつての井上「ウソつきみっちゃん」光晴@全身小説家、とか、あるいは寺山修司竹中労なんかのケースなどと考え合わせて、もの書きのキャラのつくられ方とそのプロモーション、てなあたりのテーマとからめて面白い話もいくつか耳にすることができました。

 脳梗塞で倒れたご本尊のその後は、まあ、リハビリ中ということのようですけど、かつてブン殴った大島渚と同じビョーキで倒れるとは、何かの因縁かなあ、なんて思ってしまったのは、不謹慎なんでしょうかね。ともあれ、ご快癒を祈っております、マジに。

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 つもりつもっていた原稿仕事も何とかひとヤマ越えられそうなんですが、なんと、今週にゃあの!!田口ランディ@万引き猿が厚かましくも東大で(笑)シンポジウムなんぞにノコノコ出てくるっていうんで、こりゃあ何とかして出張らなきゃならないなあ、と。こんな感じなんですが。

★シンポジウム「いのちの終わりと死生観」(or「今あらためて死を問う」)★


●6月21日(土)――14:00~17:30
会場◎東大本郷校舎 2番(or1番)大教室


●パネリスト
  小松美彦生命倫理 東京水産大)
  田口ランディ(作家)
  中神百合子(ホスピス医 戸田中央総合病院
  西垣 通(情報学 情報学環
  鷲田清一臨床哲学 大阪大学
司会   竹内整一(倫理学 東京大学

 アカピーが出してる『小説トリッパー』なんかクソ雑誌には、あの中沢新一@オウムA級戦犯、と対談してるのが堂々と載ってたり、どうせかの矢板とかいう新潮社から引き抜かれてやってきたっていうあたまの悪いオバハンの仕業なんでしょうが、ほんまにあの猿、いみじくも雷太が言ってた通りしぶといです。まあ、こっちもつぶし甲斐があるってもんですけど、こんな大学のセンセたちの間でやっこさん、どれだけ舞い上がってはしゃぎまわることか、そのあたりはぜひとも観察してこようと思っておりますです。

 ちなみに、先の昭和文学会界隈でも、田口の万引き検証本は話題になっていたらしくて、中には講義で使ってくれたというセンセもいらっしゃいました(笑)。やっぱりねえ、アカピーは論外としても、いくら世間離れした大学のセンセだからったって、あれだけ間抜けなブツを未だにこうやって持ち回ってちゃいけませんよねえ。当日は前もって検証本をこれらのセンセたちに送りつけておこうかな、とか考えております、はい。


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 上の講演の帰り道、せっかく都内に出てきたんだから、と少しブラブラしてたら、『コヨーテ・アグリー』のDVDが出てたんで、衝動買いしちまいました。二年前だったかな、公開時にたまたま観て、ちょっと気に入ってたもんで……講演でギャラもらってたし。

 イナカのオンナのコが街に出てきて自立してゆく、というハナシ。「コヨーテ…」ってのは、そういうオンナのコたちのたむろするニューヨークのクラブ・バーの名前なんですけどね。実在してるみたいです。
http://www.net24.ne.jp/~f10623/simpson-bruckheimer/coyoteuglydate.htm

 シンガーソングライター志望のイナカのコが主人公で、高速道路の料金所勤務でジャンクフードばっかり食ってるデブでアメリカンなオヤジの反対を押し切って、ひとりでニューヨークに出てきて、オンナしかいないやんちゃなクラブで水商売のバイトやりながら何とか自立してゆく、という、まあ、オンナたちのキンタマ物語。ある種アメリカ映画の王道でカッコいいんですが、ニッポンじゃこういうの、あまりウケなかったようで、公開されてもあっという間に終わってしまってたんで、あたしゃ残念だった映画です。主役のパイパー・ペラーボも、まわりの役者もほとんど無名の連中ばかりだったようですが、いい感じですんで機会があればレンタルででもどうぞ。


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 あと、ジャンク扱いでしたけど、矢井田瞳のマキシシングルが700円だったんで、それもA面の「アンダンテ」が目当てじゃなくて、B面の「fast car」が狙いで拾っておきました。トレイシー・チャップマンの名曲です。歌詞がすんげえよくて、大好きなんで、それが気になって速攻で手出しちゃいました。ヤイコ、デヴュー当時は椎名林檎のパチもんみたいに言われてましたが、いまとなっちゃ完璧に別モン、っていうか、もっと器はデカいと思います。

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 トレイシー・チャップマンは、ニューヨークのストリートシンガーあがりの実力派です。黒人ですけどね。

 歌の内容は、ろくでなしの彼氏との煮詰まった日常を、どうにかしたくて、速いクルマ(おそらく彼氏ってそういうのしか興味ないバカなんでしょう)に託してどこか違うところへ行こうよ、ちゃんと日常やろうよ、と語りかける、てな感じ。自分はスーパーのレジかなんかやってるんですけど、ほら、あなたもちゃんと仕事見つけて、酒もやめて、友だちなんかにも会って……とあきらめながらも励ましてたりして、この腐れ縁のダメなオトコを何とかしようとする感じがなんとも……です。いまから十五年くらい前、アメリカの大学をウロチョロしていた頃、テレビったってスポーツ中継かMTVくらいしか観るものないんで、ずっと観てたら、この「fast car」のビデオクリップが流れてて、それもすごく印象的でした。この曲、山崎まさよしもカヴァーしたがったそうなんですが、トレイシーから許可が出なかったとか。じゃあ、ヤイコはなんでオッケーだったんだろ……ってことなんですけど、う~ん……トレイシー=レズ、ってのが向こうじゃ常識らしいんで、そのへんがからんでるのかなあ……よくわかりません。


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