人生最高の映画、とは――『竜二』

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 「人生最高の映画」なんて大風呂敷には、『独立愚連隊』だの『仁義なき戦い』だの『ガキ帝国』だの、まあ、それ系の男前な作品をあげることが多いんですが、今回は『竜二』を。


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 作品自体もすでに評価が高い映画ですけど、実はこの脚本&主演の金子正次さんも含めた制作プロダクションの人たちと当時、たまたま同じ事務所に間借りしてたんですよ。カネがないカネがない、って言ってましたねえ。だもんで、公開前からその活動を脇でずっと眺めてたりしてたんで、余計に愛着があります。病み上がりの金子さんも缶ビールぶらさげて陣中見舞いに来てましたね。そんな縁で切符を売るのを手伝ったりもしましたよ。試写だか初日だかで観て、ほんとマジで号泣しちまって、たまたま挨拶に来てた永島暎子さんにロビーで泣き顔見られて、カーッと顔が火照ったのを覚えてます。こっちはまだ二十代そこそこのガキでしたからねえ。永島さん、映画のまんまのあの素敵な笑顔で、ニコニコ笑って肩叩いてくれたっけなあ。

 竜二がヤクザから足洗ってオンナの鹿児島の実家に挨拶に行くシーンね。実家の兄さんがさつまあげの工場やってて、竜二に手伝って欲しいと言う。「竜二さん、さつまあげ、お好きですか?」とぎこちなく尋ねるのに対して、「さつまあげ……好きです」って照れながら言う。あそこでもうはじけたみたいに泣けて泣けて……。「世間」ってものとの折り合いのつけ方をああいう風に描こうとしたヤクザ映画、って、それまでほとんどなかったんじゃないかなあ。それがまた、いかにも80年代、って感じでした。


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 しかも、当の金子さんは公開直後に亡くなっちゃったし。通夜にもかけつけたんですが、たまたまとなりに松田優作さんが座ってね。あのゴツいガタイでちょこんと正座して、膝に手を置いたこぶし震わせて泣いてるんですよ。なんかもうそれ自体が映画のシーンみたいで、忘れられないですね。

 脇の北公次さんも桜金造さんもとってもいい。80年代の新宿の、なんというか、くすんだ華やかさみたいなものが身体ごとよく出てます。後に長淵剛がテレビでヤクザもんのドラマやった時なんか、ああ、きっとこれ、『竜二』やりたかったんじゃないのか、なんて思いましたよ。それくらい当時、密かな影響力があったんですよ。

 でもこの作品、竜二やってた金子さんだけじゃなくて、竜二の敵役やってた人もすぐに亡くなってるんですよね。監督の村川透さんは出世しましたけど、あの事務所に出入りしていた人たち、今どうしているんでしょうね。


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*1:新聞だか雑誌だかの、アンケート的な質問に答える、といった企画のコメント草稿だったと思う。掲載誌も、また実際どのように掲載されたのかも忘れとるけれども。……221125