TV評・「私立探偵・濱マイク」

 しかし、これを夜十時台にぶつけてくるってのは、つくづく男前だなあ。ほんとなら深夜、それも衛星放送あたりが一番しっくりくる、そんなドラマだぞ、こりゃあ。

 VTRでなくわざわざフィルムを回しての撮影とか。道理で画面がひと昔前の自主映画みたいな塩梅で、編集もいろいろ小細工しまくり。とにかく一部始終がフツーのテレビドラマじゃないのだ。アバンギャルド、っつ~んすか? 思いっきりトンガってますがな。

 言うまでもなく、かのマイク・ハマーをもじった林海象原作の探偵もの。舞台もヨコハマ。演じるは永瀬正敏。ヨメ(今のところまだ)の小泉今日子もひとまず協力。主題歌もEGO―WRAPPINとくる濃さ。女優陣は市川実和子(『コンセント』の悪夢、早く忘れようね)に井川遥を配分。毎回隠し味的に大御所とお笑い系とを配分するのもお約束で、こないだなんか松方弘樹光浦靖子林家ペー&パー子夫妻(実は凄腕の殺し屋、ってのがミソ)、今回は柄本明(牧師だぞ)に松村邦洋(女装の変態でした)。かつての日活ニューアクションか矢作俊彦かというくらいの無国籍ぶりは、こりゃ近いうち小林薫浅野温子あたりも出してきそうだぞ、根拠ないけど。

 要は、主演の永瀬正敏のやりたい放題、が全て。松田優作をやりたかったんだろうなあ。そう、『探偵物語』。あるいはショーケンの『傷だらけの天使』とか。いずれサブカルそのものがいっちゃん底力をはらんでいた70年代ドラマの栄光だ。サブカル魂全開、アート志向炸裂の心意気は痛いほどわかる。たださ、やっぱこれ、時間帯間違ってる。ここに客はいないよ。それが証拠に視聴率ボロボロっていうじゃないの。型通りの学芸会以下になり下がった今のテレビドラマなんかやってられねえ、という永瀬節を楽めるという向きは、今のうちに見ておくべし。


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