対談 vs. 西村博之 (ひろゆき)

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 インターネット上の巨大匿名掲示板「2ちゃんねる」。一日三千万ヒットを誇る事実上日本最大、世界でも例のない一大メガサイトになっているのであります。

 

 世間では、西鉄バスジャック事件の犯人が「ネオむぎ茶」の名前で犯行を事前に予告していたとか、あるいはまた、自宅の風呂場で拾ってきた猫をなぶり殺しにしてゆく虐待画像をおもしろ半分にさらしていた「ディルレバンガー」と名乗る男が、それがきっかけで逮捕されたとか、何かそういうろくでもない事件とからめて取り沙汰されることが多いせいか、何やら悪の巣窟、おどろおどろしいアンダーグラウンドサブカルチュア、うっかり足踏み入れるとこわい場所、と、とらえられることが多いかも知れません。

 

 なるほど、書き込まれる情報は玉石混淆、嘘も真も全く等価で、時にはエロもグロもナンセンスも、とにかく何でもありな外道ぶり。テキスト(文章)のみならず、音声や画像、動画だって落ちている。かつての浅草や新宿、はたまた戦後の闇市などが常にそうであったように、ある種盛り場的ないかがわしさ、猥雑さが漂う場、という意味では今様の「悪場所」、ネット上ににわかに出現した「アジール」と言っていいのかも知れません。

 

 けれども、その一方でこの「悪場所」、熱い議論や論争、まじめな論戦などが日々展開されている場所でもあります。とりわけ、表のメディアで未だにタブーとなっているいわゆる戦後民主主義的なイデオロギーに対する違和感は、初めて足を踏み入れるとびっくりするほど素朴かつ直截に表現されています。朝鮮半島情勢であれ、朝日新聞その他のマスメディアの「偏向」ぶりであれ、ヘタな総合雑誌や言論誌などよりはっきりと臆することなく、この「2ちゃんねる」に日々集う匿名の〈名無しさん〉たちは言及してゆく。一部の「良識的」評論家などが近年、「若い世代が右傾化している」と早とちりしたりするのも、この「2ちゃんねる」を眺めている限り、あながちわからないではありません。確かに、旧来の左右対立図式でだけ見ていると、議論の流れや意見の風向きは間違いなく「右」や「保守」の方向に向かっているわけで、だからこそ逆にまた、「おお、若い世代は頼もしい!」と勘違いするご年配の方も出てきたりする。

 

 そのどちらも真実であり、そしてまたどちらもが嘘である。そんな一筋縄ではゆかない場所が「2ちゃんねる」なのであります。そんな難儀ないまどきの場所で自らものを考える訓練をしてゆくためにこそ、インターネットやIT革命といった美辞麗句にまぶされたいまどきの情報環境の変貌におけるささやな真実があるのだと、あたしは思います。

 

 ともあれ、その「2ちゃんねる」の管理人であり、事業として成り立たせている首魁が西村博之氏。通称「ひろゆき」と呼ばれる若い衆であります。当年とって27歳。若い世代にとってはすでに有名人でも、活字のメディアにはまだ姿をなかなか見せない彼が、桜の咲き始めたある一日、『正論』編集部の誘いに応じて、編集部のある産経新聞社を訪れてくれました。

 

―― もともと、学生時代から会社やってたんでしょ。

ひろゆき ええ、そうなんです。

―― ぶっちゃけた話、今、2ちゃんねるで今、どれくらい儲かってるの?

ひろゆき いやあ、それほどでもないですよ。

―― ほんとかなあ?(笑い)。三年前の秋に『ネットランナー』に出たあなたのインタヴュー *2、あれがこれまでの中で一番まとまってるんと思うんだけど、あそこでは一日のアクセス数が三百万ヒットとか言ってるよね。

ひろゆき ああ、そんな時代でしたか。去年あたりでもう二千万ヒットくらい……今年はたぶん三千万ヒットくらいになってますね。

――うわあ、とんでもないな。文句なしに日本最大のサイトじゃんか。でも、基本的な儲けは広告のバナー収入 *3 なわけでしょ。バナーは何本いくらで入れてるわけ?

ひろゆき 広告のページがありますけど、サーバー *4 に全部入れると百五十本とかそのくらいですね。でも、全部のサーバーのお客さんっていないんで。値段もサーバーごとに三十万とか、そんな感じですよ。

―― でも、それで百なんぼあるんだったら、平気で三千万円とか行っちゃうよね。

ひろゆき まあ、月契約なんですけどね。それに広告のないサーバーも多いですから。

―― それで2ちゃんねるを維持してゆくためのランニングコストはどれぐらい?

ひろゆき う~ん、月に二万ドルぐらいですね。サーバーはアメリカに置いてます。

―― ということは二百四、五十万から三百万円弱。じゃあ十分利益は出てるから、事業としては順調なわけだ。

ひろゆき ええ。おかげさまで。裁判沙汰を除けば、ですけど。

―― ああ、名誉棄損とかいろいろやられてるみたいだねえ。裁判沙汰は増えた?

ひろゆき 今のところ七件ですかね。請求額が億単位のも二件あって、合わせて七億くらい請求されてます。

―― うわあ、七億!! どうなりそうなの、それ。

ひろゆき う~ん、どうなるんですかねぇ。

―― 鷹揚だなあ(笑い)。まあ、そのへんが持ち味なんだろうけど。そのはいてるズボンだって股のとこ破れてるし。その格好でノコノコ行くわけだ、裁判所に。弁護士なんかに何か言われないの?

ひろゆき あ、ほとんどの裁判は自分でやってるんです。

―― へえー、三浦和義みたいだな。めんどくさいでしょ。

ひろゆき まあ何とかなりますよ。裁判所の人って、結構いい人ですし、いろいろ教えてくれるし。一番最初の案件が、動物病院について書き込まれた噂が事実無根だって五百万で訴えられてるやつで、地裁で四百万って判決が出て、最高裁もそれを支持してて、今上告中。高裁でも負けてるんで、多分その判決がそのままいくと思うんですけどね。

―― そうか、負けそうなんだ。活字の世界は最近、名誉毀損の賠償額がどんどん上がってるじゃない? あの『噂の真相』なんかでも一件あたり一千万円なんて判決食らい始めてるからどうしようもない、って言ってるんだけど、それにしても請求額が億単位ってのはすごいよねえ。

ひろゆき 億はちょっと例外ですけど、でも、文藝春秋も似たような話で十億で訴えられて、結局八十万円かなんか払うわけですよね。 

――カネがあると思われるから訴えられる、ってところはあるんだけどね。でもまあ、たとえ判決は数十万でも、連発で訴訟起こされたらさすがに苦しいでしょ。

ひろゆき どうなんですかね。もともと地裁で負けた理由というのが、2ちゃんねるというのは匿名の掲示板だから、書き込んだ人を特定しなきゃいけないのは管理人だ、だからおまえが責任を負え、というものなんですよ。

―― ああ、そういう理屈なわけだ、法律的には。

ひろゆき ええ。だから今は書き込んだ人のIPアドレス *5 を取ってるんで、誰が書き込んだのかわからなくはないようにしてあります。 ただ、それ以降はまだ訴えられてないんで、具体的にそれがどう作用するかはわかんないですけど。


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――今は管理人とか、いろんなシステムができちゃってるから、「2ちゃんねる」の運営実務は人に任してるわけだ。

ひろゆき そうです。任せられるところは任せてますね。

―― 削除屋 *6 とかいるじゃない。あれは何人ぐらいいるわけ?

ひろゆき たぶん二百五十人ぐらいかな。

――すごいなあ。あと、ニュース速報+板なんかは記者制度になってるじゃない *7 。あれはどういう基準で、希望者にキャップ *8 渡してるの?

ひろゆき 基本的に転送メイルじゃない本メアド *9 で連絡してきたら渡してますけど、よくわかんないんですよね、百人くらいいるのかなあ。

―― そういう記者たちにあなたが全部会ってるわけではないよね。

ひろゆき ええ、やりとりはまずメールだけです。

―― 管理人ってことになってるから訴訟もされるんだろうけど、でも、あなたを訴えてもしょうがないと思うんだけどねえ。

ひろゆき ですね。今は窓口が僕しかいないから仕方ないんですけど、なぜか、2ちゃんねる自体が僕の意志を反映してるものだ、と、思いたがるみたいなんですよね。

―― そうなんだよね。でも、あなたがいなくなっても2ちゃんねるはきっと動くと思うよ。『カムイ伝』みたいなもんでさ。一人いなくなっても、また誰かが絶対作る。あなただって最初は「あめぞう」に対する「2ちゃんねる」だったんだからさ *10。でも、2ちゃんねるが立ち上がったのが99年の5月くらいだったはずから、ちょうど四年前なんだけど、なんだか大昔みたいな感じがするよねえ。

ひろゆき 確かに、ネットの世界は時間がたつのがすごく速いですからね。

―― 速いね。掲示板たって、ティーカップみたいな積み上げ式のしかなかった時代から、今みたいなスレッド形式になっちゃったし *11

ひろゆき 三、四年で大御所呼ばわりされますからね。

―― だよね。だからドッグイヤー *12 どころじゃないよね。 普段はどういう暮らしをしてるの?

ひろゆき いや、もう、家でだらだらしてますね。日によって普通に朝起きたりもしますけど。

―― 楽しみは何?。

ひろゆき 映画見て、ゲームをやってるんです。

―― う~ん、それってただの子供だよね(笑い)

ひろゆき そうかも(笑い)。週に七本ぐらい映画見てますからね。それも、ネットに転がっていた映画がいつの間にかうちのハードディスクに入ってたりするんですけど *13。最近ほんとだめな生活してるなあ、と、自分でも思うんですけどね。

―― 昔からそんな生活してたんじゃないの? それこそ、一日中パソコンに貼りついて「あめぞう」に書き込んでた頃と変わらないじゃん。まあ、日本一の引きこもりだからしょうがないんだろうけど。

ひろゆき 2ちゃんねるは宗教なんじゃないかっていわれるんですよね。僕、2ちゃんねるに毎晩やって来る人たちの気持ちがわからないんですよ。テレビの方がお金かけて面白いことやってるし、新聞読むのもいいし、女の子と遊んだっていいじゃないですか。なのに、なんでこんなわけのわかんないところに来るのか。

―― 説明できないからね。2ちゃんはほどほどに、っていうじゃない。合言葉みたいにしてさ。いっそ「健康のために見過ぎに注意しましょう」って書いておくか(笑い)。あなた自身は、一日にどれくらい見てるの?

ひろゆき 一時間とか二時間ぐらいですかね。っていうか、見て回るというのがもうなくなっちゃってて。「これ面白いよ」といわれたら見て、ふーんとか、そういう感じですね。

―― 本当に初心者と変わらないなあ。有名なものしか知らない。じゃあ、どこでどんな祭りになってるかも全然……

ひろゆき ええ、人に教えられて、こんなことが起きてるのか、ふーん、みたいな。管理人としては、本当はもっと見てなきゃいけないはずなんですけどね。

―― アクセスが一番多い時間帯ってどこなの?

ひろゆき 昼休みと夜ですね。

―― ああ、昼メシ食いながら、あっちじゃOLが『笑っていいとも』見てて、こっちでじ~っと2ちゃんねる見てるやつがいるわけだ。それ、しみじみする風景だなあ。

ひろゆき 多分おやじさんたちも昼メシ外に食いに行けなくて、コンビニの弁当でも買って、それでパソコンの前で、ああ、うちの会社のことなんか書かれてらあ、みたいな感じなんでしょうね。不景気が続く限りはこの状況は変わらないかなという気がしますね。お金あったらパソコンの前にいるよりおねえちゃんのいる店とか行くじゃないですか。みんなそれができないから、仕方なく家でパソコンやるか、ってなもんですよ。

―― デフレ下の最強のキラーコンテンツ2ちゃんねる、てか。それもなんだかなあ。

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ひろゆき でも、民俗学者ですよね。それがどうしてネットでも蛆虫と言われてるメルマガ【サイバッチ!】*14 の片棒を担ぐようになったんですか。

―― それは逆に取材されてるな(笑い)。堕ちるところまで堕ちた、とかいろいろ言われてるみたいだけど、全然気にしてないのは、『ゴーマニズム宣言』の小林よしのりさん知ってるでしょ。あなたなんかきっと学生時代読んだクチかもしれないけど、薬害エイズの時くらいからあたしゃ小林さんのやってたことに注目してて、『脱正義論』(幻冬舎)なんか企画出したりしてたんだけど、あの頃はまだ、2ちゃんねるってなかったじゃない? でも、薬害エイズの時に小林さんと『ゴー宣』が果たした役割って、実は2ちゃんねると同じだった、って思ってるわけ。あの時も「厚生省っておかしい」とマンガで言い出して、読者集まれ、厚生省の食堂乗っとっちゃえ、みたいなこと言って煽ってたけど、あれって今の2ちゃんねるの「祭り」だよね。でも、そこでなんか作られてくるある種の正義みたいのがあるんじゃないかなあ、と思って、ずっとつき合ってたわけ。

ひろゆき ああ、そういうことなんですか。

――そう。2ちゃんねるもそうだけど、インターネット一般に関しても、それとおんなじような感覚あるんだよ。だから、あたしが【サイバッチ!】の看板背負ったり、2ちゃんねるをずっとROMしてる *15 のも、口はばったいけど、今、日本の民主主義ってのがどっちの方向に動いているのか知ろうと思ったら、2ちゃんねるを絶対無視できない、って確信があるわけ。世間の心の風向きがどっち向いているのか、それを確かめるというかさ。匿名掲示板って2ちゃんねる以前から幾つかあったけど、あそこまで巨大化はしなかったわけでしょ。しかもここ二、三年はブロードバンドの普及で常時接続環境が整ってきて、おばさんとかいっぱい入ってきてるでしょう。2ちゃんねるに限らず、ネットの世論って今、相当女の人が参加してできてると思う。民俗学ってのは、もともとそういう世間の無意識とか、そういう気持ちの動きとか、世の中みんな何を考えてるかってのを計測して考えようとする学問だから面白いんだよ。あたしがネットをうろうろしだしたのは、まだ「あめぞう」があった頃で、当時からあなたはよく書き込んでたよね。「ひろゆき」のネームで。で、やたら叩かれたりして。あの頃はずっとパソコンに貼りはりついてたの?

ひろゆき そうですね。また、あの頃は僕以外の人が同じ名前で書いてて。

―― らしいね。何人も「ひろゆき」が出てきてわけわかんなくなって。

ひろゆき 2ちゃんねるに書き込まないんですよね。

――原則としてね。これまでも書き込んだことはほとんどない。田口ランディの騒動 *16 の時に、あのバカ「廁」と「厩」を勘違いして能書き垂れてたから、それはやっぱり民俗学者として許せなくて、それは「厩」だろ、ってツッコミ入れたことがあるくらい。

 うっかり書き込んだらいけないよね、2ちゃんねるは。『正論』の読者は平均年齢が高いせいもあってパソコンいじったことない人がまだ多いらしくて、他でもない、編集長もこの間からパソコンいじり始めて、四月号のコラムでちょっと「2ちゃんねる」のこと書いたらホームページのアクセスが増えたらしくてさ。それで編集長自身、危うく2ちゃんねる書き込みそうになった、っていうから「書いちゃだめですよ」ってあわてて止めたんだけど(笑い)。あと、文化人とか評論家とか、活字の世界でそこそこ名前のあるやつが2ちゃんねるにハマったり、ホームページ始めたりすると、半年ぐらいでおかしくなる。

ひろゆき どういうふうにおかしくなるんですか?

―― 自意識が肥大して自分でも始末がつけられなくなる、っていうのかなあ。いや、おかしくならないのはもちろんいるんだけど、それは最初からある種人非人っていうか、自意識がもうネットの外側でちゃんと出来上がっちゃってるやつだよね。唐沢俊一とか小田島隆とか岡田斗司夫とか、そういうサブカル系は案外変わらない。逆に評論家とか議論系がダメだよね。宮台真司日垣隆勝谷誠彦なんかでもホームページやりだして、ヘンだ、ってのがバレ始めたし、日記なんか書き始めた日にゃもっと自我崩壊が早くなるよね。作家系はもちろんそうだし、評論家なんかも含めていわゆるもの書きがうっかりネットに日記書き出したらヤバい、と思った方がいい。よしもとばななとかそこそこご威光があったのに、あれ、こんなにヘンな人だったの、って素朴なファンにもバレ始めて自爆してるもん。

ひろゆき えらい人が言ったことは歴史書とかに残るんですけど、普通の人たちが何を考えて、どう行動したかって、記録って残らないじゃないですか。そこらへんが今って残りやすくなってるんで、誤解が生まれづらくなってると思うんですよ。

―― それって、まさに民俗学の問題なんだけどね。少ない資料で歴史や社会を解釈することができなくなっちゃった。頼まれもしないのに毎日日記をネットで書いて、それを世界に公開してるのが山ほどいるわけだから。不思議でしょうがないんだけど、なんでそんなに日記書いてさらしたいんだろうねえ。

ひろゆき なのに、みんな結構打たれ弱いんですよね。で、ネットで直接ものすごいネガティブな意見がくると、すげえ傷ついたり。

―― そう。簡単に傷つくんだよね。でも、もの書いて自分さらして世渡りしてるんだから、そんなの当たり前だと思わない?

ひろゆき それって、今まで人が口に出してないだけで思ってたことで、それが聞けるようになったんだから得じゃん、って、僕なんかは思うんですけどね。

―― そう思えるようになるまでが修行なんだけどさ。あたしだって最初、えーっ、て思ったもん。

ひろゆき デブと書かれてですか(笑い)。

――そうそう。なにせ「暴力デブ太郎」だからね(笑い)。【サイバッチ!】にかかると最近は kamezo *17 呼び出してフォークで目突いたとか、あることないこといくらでも書かれる。仲間に対してさえも情け容赦なくそれだもん。でも、そんなもん文句言ったって始まらないし、キャラだからさ。あなただってたいがいいろんなこと言われてるよね。腋臭だとか、もうさんざん。

ひろゆき 僕はそれが普通だと思ってますからね。人の眼ってそういうもんじゃないかなあ、って、最初からそう思ってる。それに僕は今、こんなことやっててこういう立場にいるから言われやすいんですよ。言われる材料をいっぱい持ってるからだと思って、ああそうなんだ、って。別に何言われても、ふ~ん、と。だいたい、見かけや外見ってのは、偉い人が気にするんですよね。


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ひろゆき 吉野家にみんなで連なって行った時、あったじゃないですか。

―― 吉野家テンプレートの流れでの「祭り」ね。*18 あったあった。

ひろゆき あれって、僕の中ではある種の「暴動」だと思ってるんですよ。イベントとかって必ず主催者がいるじゃないですか。でも、暴動って主催者いないじゃないですか。だから、止めようがない。吉野家の「祭り」の時もあれって止めようないんですね。だからある種の暴動かな、と思って見てるんですけどね。

―― そういう暴動を結果的には準備してる立場だから、そりゃ責任を取らされるわけだよな。あの吉野家のテンプレも、最初に作ったやつがいるじゃない。ああいう自然発生的に誰が作ったかわからんものが出てくる、というあたりが面白い。またみんなでそれをいじってゆくじゃない。

ひろゆき 言い伝えの伝承と一緒ですけどね。

―― そうそう。それこそ都市伝説なんかと同じだよね。ハンバーガーが猫の肉、とかってやつ。あれはアメリカの民俗学に研究書がいっぱいあって、それ持ってきて翻訳して紹介したんだけど。ああいうふうに口伝えでどう話が変わっていくかとか、そういうのに興味があって民俗学やったところってあるからね。「祭り」と言えば、あたしゃちんこ音頭 *19 がもう大好きでさ(笑い)。いや、あれは本当に民俗学だなあ、と思ってずっと経緯を眺めてたの。

ひろゆき はいはい。

――あの時、最初に歌詞のひな型出したやつがいて、そこからみんなして書き改めていって、フラッシュ *20 まで作られるでしょ。あの過程がまさに民話の誕生みたいなもんでさ。あのフラッシュはつくづく名作だよねえ。フラッシュ職人も腕上がってるし、作るの大変だろうなと思うんだけどさ、一銭にもなんない。

 


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ひろゆき でもまあそのままプロになっちゃう人もいますしね。

―― みるみるうちにえらいことになってって、着メロまで作ってたもんね。あれ鳴ったらやだね。町中で(笑い)。でも、そういうムダなことに命張ってるバカに肩入れしたくなる時ない?

ひろゆき 結構そういうの好きです。

―― やっぱりね。あのちんこ音頭、去年の秋、2ちゃんねるで運動会やった時 *21ブラスバンドで演奏したの?

ひろゆき はい(笑い)

―― やったんだ、ほんとに(笑い)。いや、有志が何人かスレッドに出てきて、スコア(楽譜)書いたから楽器吹けるやつは集まれ、なんてバカなことやってたからなあ。ほんとは当日、ものすごく行きたかったんだけどさ。そういう「祭り」が外に出てゆくことって、たまにあるよね。鉄道板で盛り上がって、ヘッドマークにギコつけた列車走らせたり、あと、あれは高崎競馬場だったっけ、「2ちゃんねる記念」なんてレース作らせて盛り上がったり *22

ひろゆき よく知ってますねえ。

――だから、ROMは地道にしてるんだって。それにもともと競馬が専門だから。

ひろゆき 結構オフ会 *23 とか、出るんですか。

―― いや、そんなに暇でもないよ。ただ、去年の『奇跡の詩人』騒動 *24 の時、札幌や大阪で有志が上映会やった時も自腹で出かけてたし、必要だと思えば顔は出すよ。

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ひろゆき (『正論』をめくりながら)やっぱり右翼の人って、アメリカ好きなんですかねえ。

―― 直截な質問だなあ(笑い)。右翼ったって、街宣車乗って走り回ってるのしか普通は知らないじゃない? あれはほんとの右翼じゃない、ああいうのはカネ取るためにやってる総会屋だ、って人もいるし。アメリカ好きか、って言われたら最近は「反米」がやたら盛り上がってたりして、小林よしのりさんなんか完璧にそっちの方に行っちゃってるけど、でも、左翼もアメリカ嫌いで、共産党なんか未だに「反米」って言ってるよね。

ひろゆき 戦争反対、と言ってる人は共産党に投票するんですか。

―― 「反戦」と「反米」の関係ね。そのへんほんとはねじれてるんだけど、今だったらそういう単純な図式の人も結構出てくるんじゃないかな。小林さんや西部さんなんかでも、小田実なんて化石みたいな左翼と「反米」ってだけで手組んじゃってるしさ。もうわけわかんないよね。

ひろゆき 右の人って、職業的な右の人っているじゃないですか。要はそこらへんの街宣車に乗ってる人とか。でも、職業的な左の人ってあんまりいないじゃないですか。

―― え? でも、ほら、組合やってる人とか、学校の先生で日教組とかいるじゃない。

ひろゆき ええ、でも、そういう人たちってべつに大衆に対して左的要素を一生懸命植えつけようとはしないじゃないですか。

―― ああ、手法の問題ね。マスコミ自体がそういうモードだった時代はついこの間まであったんだけど、でも、それって確かに街宣車でガンガンやるのと意味は違うかも知れないけど、朝日新聞とか学校とか、そういうのは大きな拡声器というか、また違う意味での街宣車になってたわけじゃない? ある種の文化としての左翼性というか民主主義みたいなものが戦後ずっとあって、空気みたいなもんになってた分、それで刷り込まれてきたものがここ十年足らずの間にようやく、それってほんとかなあ、という話にはなってきてるんじゃないのかな。

ひろゆき 左的感覚に対しておかしいなと思う人は今は結構いると思うんですけど、だからと言って、一生懸命それを連呼する人というのは、左にはそんなにいない気がするんですよ。2ちゃんねるが右の人が多いように見えるというのは、ように見えるだけで、右の人が多いかどうかというのは別だと思うんですよ。右に行ってる人って一生懸命連呼するんですね。

――ああ、なるほど。右って一生懸命「右で~す」といいながらやるもんね。どうしてかな。

ひろゆき 僕だけが知ってる真実がある、とか、僕の中に正義がある、とかって感じじゃないですかね。確信的というか。

―― 感覚としてはわかるな。でも、左翼だってそのへんは同じだよ。自分だけが科学的認識を持っている、とか信じ込んでたんだから。そのへん、ある種宗教っていうか、カルトみたいなもんでさ。

ひろゆき 右の人たちって、最後の根拠のよりどころが感情だったりするじゃないですか。

―― ああ、それはあるね。左翼は理屈なんだけど、右翼って突き詰めると情緒、感情だからね。だから論破はされない。

ひろゆき そうすると、感情だから伝えたいというすごいモチベーションが真ん中にあって……。

―― 汗かいて伝えようとするのね、頑張って。朝生に出てきた西尾幹二さんみたいなもんだ(笑い)。やたら熱いのね、どういうわけか。折伏にかかる、説得にかかるからね。

ひろゆき そう。左の人って、何か言われたらすごい熱心に反応するんですけど、言われなければ黙っている、みたいな感じがあるんですよ。右の人は何も言われなくてもガンガン宣伝したがるっていうか。

―― 左の方が頭よくて右翼はバカだっていう図式も根強くあるよね。

ひろゆき 論理と感情だとそうなっちゃいますよね。ほら、映画に行けない人がテレビやって、テレビに行けない人がゲーム屋さんになって、ゲーム屋さんに行けない人が漫画屋さんになってという連鎖があるじゃないですか。その一番下に今、インターネットがあると思うんですよ。一番下だからピラミッドと同じで一番人が多いんですよ。だからそれが暴動って手段になったりするんですけど、少なくとも数は扱える。

―― そうか、それが吉野家の祭りになったり、ちんこ音頭ブラスバンドになっちゃうわけだ。

ひろゆき そう、でも、ピラミッドの上じゃないんで、カリスマ性とか説得力というのはないんですよね。僕が例えばテレビ局の偉い人で、「これしようぜ」と言ったらついてくる人いるんですけど、インターネットの掲示板でそれ言ってもついてくる人はそんなにいない。

―― って言うか、それでついてくるのはロクなのいないよ、今。動かないで見てるやつの方が信頼できるよ。

ひろゆき 積極的に動いてる人は、積極的に動かなきゃいけない理由がある人ですよね。

―― でなきゃ、何か問題があるんだ、日常にね。反戦でも環境でもいいけど、何か大文字の正義を言う人って、結局それってあんた個人の問題でしょ、というのが多いわけでしょ。逆に今、2ちゃんねるで愛国募金なんかやると、いっぱいカネ集まるんじゃないかな。それでトマホーク買って、アメリカに贈る。その代わり条件があってさ。ノーズアートにギコ付けてくれ、と(笑い)。「キターッ」「逝ってよし」*25 って描かれたトマホークがバクダッドに飛んでゆく。みんな喜んでカネ出すと思うよ。

ひろゆき 2ちゃんねるの削除人を募集した時にわかったんですけど、削除人になりたい人っていうのは大体ちょっとおかしい人なんですよ(笑い)。削除するって面倒くさい作業なんですよ。見たり書いたりする方が楽しいわけで、なのになんでやりたいかっていうと、自分が消したい何かがある人、という人が一番応募率高いんです。あとは削除するという権利を持つことで偉くなりたい、ってことかな。

―― 権力志向だね。今、うっかり運動とかハマるのってそういうのが多いけど。

ひろゆき インターネットの掲示板で偉くなってどうするの、って。そういうレベルで、そんなものにも魅力を感じてしまう人なんて、現実社会ではあんまりいい目を見てない。

―― 満たされてないんだよな。でもまああなたは、役に立つなら使う、と。

ひろゆき やりたくないけど、いやいややる人、というのを僕はなるべく採用してるんですよ。掲示板の利用者として使っていて、こういうのがあって邪魔だから消してほしいんだけど動いてくれないからしょうがないから僕やりますよ、って、やる気がないけどいやいややる人、っていうのが多分一番いい。

―― 自分が不利益を蒙ってるからしょうがないから自分で排除する、と。

ひろゆき ええ。ほかにやる人がいないから僕が仕方なくやりますよ、という。

―― 今回のアメリカじゃない、それ(笑い)。そうか、わかった。アメリカって2ちゃんねるの削除人なんだ、あれ。だって、みんなテロやられて困ってるじゃないか、みんながやりたくないから俺がやるんだ、と言ってるわけじゃない。その代わり戦争勝った時、お前ら絶対利権を渡さないぞ、全部俺のもんだ、この野郎、と。メンタリティが削除人と同じじゃ、問題ありってことだな。削除人と一緒で、どこか寂しいんだね。

 ある意味日本一のメディアを運営する「権力者」でありながら、そのたたずまいは脱力するほどいまどきのアンちゃん(笑)。社会貢献に興味はない、自分が幸せならばそれでいい、と言い、大儲けはいらない、少しずつ確実に儲かる方がいい、とのたまう態度には、何の衒いもケレンもありません。僕が「2ちゃんねる」を作った、てな気負いもゼロ。しょせんただの世話人、みんなの遊び場を提供しているだけですから、とまあ、そんな感じで飄々としているのであります。

 

 いわゆるカネ持ち子弟ではないけど、育ちはいい。アメリカ留学経験もあり、彼の地では心理学をかじっていたとか。怪力乱神、突出した「個」のカリスマ性などでなく、不特定多数の〈名無しさん〉の集合体に宿るシステムこそがむしろ確実に人を動かせるようになった、そんないまどきの情報環境のありようを敏感に察知しているのは、そのへんが微妙に作用しているのかも知れません。

 

 社内情報の漏洩や不利な噂が流布されるのを監視するために、企業などが「2ちゃんねる」専属部署を作っている、という噂まである昨今。ニッポンの民主主義の明日は、彼みたいな身振りの中からこそ、ほんとに見通せるようになるんじゃないか、と思ったりしました。

                      (註の執筆&協力……蛆虫三太夫

 

*1:『正論』(産経新聞社)掲載原稿。ちなみにこの企画を持ちかけてきた担当編集者は、筑紫哲也の姪っこ(だったか何だか、とにかく身内)の御仁だった。その後退社してどこかよそに移られたはずだが、どこに移られたかは忘れた。どこぞメディア界隈の現場で生きとらすのだろうと思う。……190820

*2:ネットランナー』2000年9月号「【サイバッチ!】のWWW事件簿特別企画/たったひとりで1日150万ヒットの巨大BBS=2ちゃんねるをつくりあげた"厨房"ひろゆき(23)にその集客マジックを問う!」(ソフトバンクパブリッシング

*3:ネット上のホームページや掲示板の上に貼りつけられる、言わば広告欄。バナー=幟。

*4:ネットワーク上でのサービスを端末に対して行なうためのホストコンピュータ。インターネットのような大規模なものだけでなく、事務所や家庭内で組まれる小さなネットワークでも同じく「サーバ」と呼ぶ。「2ちゃんねる」用語では「鯖」。

*5:「インターネット・プロトロル・アドレス」の略。ネット上につながったコンピュータに割り振られる識別番号で、言わばネット上の住所や番地にあたる。基本的に、 [210.149.242.103] といった数列で表わされる。これを解析すれば、どこの誰がいつ発信した情報かがある程度まで特定できる。もっとも一方で、これをわからなくするための技術も普及しているから事態は難儀なのだが。裁判からの教訓として、「2ちゃんねる」では最近、このIPアドレスをサーバの側で記録しておくようなシステムに変更した。

*6:2ちゃんねる」の各掲示板に不適切な内容の書き込みがあった場合、寄せられた削除依頼に応じて削除を行なう担当者たち。基本的にはポランティアで、削除基準も一応のガイドラインができている。「削除人は基本的に本ガイドラインに沿って削除して下さい。書き込む人は以下のガイドラインに触れないような書き込みをするよう留意して下さい。2ちゃんねるは誰も拒むことはない自由な掲示板です。ただ一つ、ルールを知り守ってくれること、それだけなのです。簡単なルールの遵守が、気持ちのいい環境を生み出すことを判って下さい。」(削除ガイドラインより)

*7:2ちゃんねる」で最もアクセスの多いのがニュース系の掲示板(「板」と呼ぶ)。いくつもに枝分かれしてきた経緯があるが、「ニュース速報+」と呼ばれる板はいちばん活発な板と言っていい。他のサイトにあるニュースソースから、「記者」それぞれが選んだニュース情報を貼りこんでゆき、それに対して訪れたユーザーがまたいろいろな意見・返答(「レス」と呼ぶ)を書き込むスレッド形式になっている。また、読者の側から「こんなニュースがあったよ」と報告してスレ立てを依頼することもできる。

*8:本人を特定するためのID。「2ちゃんねる」は匿名性が最大の特徴の掲示板なのだが、他人になりすまして(「騙り」と呼ぶ)いろいろな悪さ(「荒らし」と呼ぶ)をする人間も出てきたので、個人を特定するためにいろいろな仕掛けが導入された。単に固定ハンドル(ネット上での言わばペンネーム)ならばトリップ(名前欄に◆印がつく)が、「記者」や運営関係、ボランティアなど、それが正しく本人であることの証明が必要な人には審査の上、さらにキャップ(★印がつく)が発行される。

*9:匿名掲示板で、自分の電子メールのメールアドレスをそのままネット上にさらすのはセキュリティ上なんだかこわい、というので、直接自分の本当のメイルアドレス(=本メアド)でなく、仮のメイルアドレス(=転送メアド)を取得して、そこから本メアドに転送してもらうようなサービスのこと。スパムメール(広告その他で勝手に大量に送られてくるメール類)防止のために、最近では比較的広く利用されている。

*10:2ちゃんねる」に至るネット上のこのような掲示板群の歴史については、未だに「正史」が存在しないと言っていい。日本での商用ネットは、ニフティサーブ富士通日商岩井が合弁で設立。現在の@nifty)と、PC―VAN(NECが設立。現在のBIGLOBE)から有料サービスが始まり、当初は単に「パソコン通信」と呼ばれていたが、90年代半ば頃以降、通信速度の高速化と通信料金(電話回線)の低価格化に比例しながらインターネット環境が充実するにつれて、商用サービスも一般のプロバイダ業務へと転身してゆき、同時にネット上の掲示板やチャット(ネット上でのリアルタイムのおしゃべり)といったコミュニケーションコンテンツも急速に普及、拡大していった。「あやしいワールド」という掲示板群ができたのが、一説によると90年代半ばから後半にかけて。それに重なるようにスレッド形式の掲示板を採用した「あめぞう」が登場したと言われている。「2ちゃんねる」は、この「あめぞう」のスレッド形式の掲示板を、急激規模拡大に限界を感じていた当時の管理人から引き継ぐような形で始まったとされる。

*11:スレッド形式以前には積み上げ式とでも言うような、レスが順次下に積み重なって伸びてゆくだけの形の掲示板が主流だった。「ティーカップ」はそのような掲示板を提供している会社の名前。それに対して、「あめぞう」や今の「2ちゃんねる」のように、ひとつの話題やテーマに対して複数の人間がレスをつけてゆき、それをその経過ともども一望できるという仕組みの掲示板の出現は画期的だったと言われている。

*12:犬の一年は人間の四年にあたる、と言われる。コンピュータまわりの技術の発達スピードのすさまじさをたとえて言われるもの言い。

*13: 最近では、ネット上で自分の欲しい画像や音声ファイルを交換することも普及してきている。ここでひろゆきの発言の意味も、映画館に出かけるのでも、貸しビデオ屋からビデオを借りてくるのでもなく、ネット上からそのような映画の映像ファイルを自分のパソコンに落として(ダウンロードして)楽しんでいる、ということだと思われる。

*14:ネット上には、電子メールのシステムを利用したメールマガジン(「メルマガ」と呼ぶ)が数多くあり、普通のユーザーでも気軽に自分のメディアとして発信できるようになっている。【サイバッチ!】は現在、発行部数約八万部。基本的に無料(有料版もあり)で、不定期刊。自分たちを「蛆虫」と自称し、表のメディアが避ける話題やネタを独自の取材で「裏を取らずに」書き飛ばすスタイルが基本。発行人名義は「毒島雷太」だが、何人が関わって運営しているか、実態はよくわからない。一説には、クリントンの不倫疑惑に火をつけたことで有名になったアメリカのメルマガ、ドラッジリポートを下敷きに、週刊誌や新聞、テレビなどマスコミ周辺で働く有志によってつくられたという。大月は一昨年来、この【サイバッチ!】界隈から派生したメルマガのひとつ、【サイバッチ!】インデプス(これも無料)の編集長をつとめている。

*15:ただ読むだけ、眺めるだけ、の意。「ろむ」と読む。パソコンの部品のひとつ、リードオンリーメモリー(読み出し専門で上書きなどはできないメモリ)からきたもの言い。

*16:メルマガ(註13参照)発行を足がかりに、一時期「インターネットの女王」などと呼ばれて直木賞候補にまでなったネット出身の「作家」田口ランディの「盗作」疑惑は、同じネット発の「2ちゃんねる」経由で検証され、暴かれていった事件の代表的なものだった。去年、大月はそれらネットの〈名無しさん〉たちを糾合して『田口ランディ――その「盗作」=万引きの研究』(鹿砦社)という本も作っている。

*17:サイバッチ!】大本営の界隈に巣くう謎の人物。煮詰まると「あう、あう、あう」と狼狽するのが癖。

*18:みんなが関心を持つ話題が示されたり、何か事件が起こって自然に書き込みが集中するような事態を「祭り」と呼ぶ。「2ちゃんねる」は、まさにこの「祭り」に期待して集まってくる者が少なくない。吉野家テンプレート(=文書のひな型)祭りとは、2001年半ばから流行した騒動のこと。当時、150円引きの安売り戦略で話題になった牛丼の吉野家を批評した文章がある個人サイトに掲載されたところ、それをパロディにしてゆく流れが際限なく広がっていった「祭り」だった。あげくの果てに、実際に吉野家に出かけてそのテンプレート通りの注文(大盛りねぎだく玉つき)をみんなで実践しよう、という全国同時多発の酔狂沙汰にまで発展、吉野家ではこのような注文に対応するマニュアルまでできたと言われている。ちなみに、もともとのテンプレートの冒頭はこんなものだった。「昨日、近所の吉野家行ったんです。吉野家。そしたらなんか人がめちゃくちゃいっぱいで座れないんです。で、よく見たらなんか垂れ幕下がってて、150円引き、とか書いてあるんです。もうね、アホかと。馬鹿かと……(以下略)」

*19:2001年暮れあたりから始まった「2ちゃんねる」発の謎の音頭をめぐる長期の「祭り」。最初は数え歌風の猥歌だったのが、それに実際に節をつける者が現われ、そのうちにフラッシュ(註19)にしてゆくようになり、姐さんバージョンや琉歌バージョンなど、さまざなバージョンまでつくられて広まっていった。さわりはこんな感じ。「一つ 一人の姫始め/右手よ今年もよろしくな/ちんこもみもみ も~みもみ/ちんこもみもみ も~みもみ」「二つ フリチン男のしるし/もっとふれふれ ちんちんを/ちんこもみもみ も~みもみ/ちんこもみもみ も~みもみ」(以下略)https://www.youtube.com/watch?v=sH2K9CmRNJI 

*20:Macromedia社が開発した、音声やベクターグラフィックスのアニメーションを組み合わせてWebコンテンツを作成するソフト。また、それによって作成されたコンテンツ。マウスやキーボードの入力により双方向性を持たせる機能もある。」(e-words 情報通信辞典、より)要するに、パソコン上で簡単なアニメーションや動画をつくって動かすことのできるソフトウェアである。「2ちゃんねる」にはこのようなフラッシュ作品も随所に転がっていて、思わぬ傑作に出会って腰を抜かしたり感動することもがよくある。

*21:2002年11月2日、世田谷運動場で開かれた2ちゃんねる有志たちによる運動会。ここで、ちんこ音頭(註18)がブラスバンドで演奏する計画が立てられ、ネットを介してブラスバンド経験者などが集まって謀議、見事に実行されたらしい。こういう酔狂も「祭り」のひとつ。当日の種目の一部。

【種目リスト】 。

50m走

50m走(★本気走)

100m走

100m走(★本気走)

400m走

400m走(★本気走)

紅白対抗リレー

うまい棒入れ

うまい棒投げ

うまい棒食い競走

仮装おにぎり障害物競争

匍匐前進2げっと競争

中玉運び『せたがやせたがや~』

 ※『せたがやせたがや~』は2人1組でのエントリーも可能です。

*22:とにかくこういう酔狂が、突発的に何の前触れもなく計画され、実行されるのが「2ちゃんねる」なのである。もちろん、一銭にもならない無償の行為であることは言うまでもない。

*23:ネットで知り合った連中が、期日を定めて実際に会うこと。コンパや懇親会の類だと思ってもらえばいいが、往々にしてネットと現実の落差(ネットでは女性のふりをして書き込みを続けていたり、という不埒な輩も珍しくない。「ネカマ」=ネット上のオカマ、と呼ぶ)を思い知らされ落胆したり、新たなもめごとの種になったりするので、「オフ会」には顔を出さないという者も少なくない。ネットの外側=オフライン、の略で「オフ」と呼ぶ。

*24:先天的に脳に障害を持つ子どもが、特殊な訓練の末に言語能力を獲得、詩をつくるようになった、というエピソードから作られた、NHKスペシャル『奇跡の詩人』(2002年4月)放映に対して、「それってほんとなの?」という疑問の声が全国からあがっていった「祭り」。同名の本が講談社からあらかじめ刊行されていたことなどもあり、メディアの自己言及性や、その特殊な訓練法(ドーマン法)の是非などをめぐって大きな騒動になり、弁護士の滝本太郎氏なども参加して、実際に国会での質疑事項にまでとりあげられた。最初は番組を録画したビデオテープを持ち寄って有志が自主上映会を開く形だったが、それをCDなどに自主的に焼いたり、各自調べた資料を持ち寄って意見交換したり、既成のメディアの倫理性を問う輪が広がっていった。文字通り「ネットの草の根」から始まった運動のひとつ。

*25:AA(アスキーアート)と呼ばれる言わばパソコン上に描かれる絵文字キャラクターも、「2ちゃんねる」名物になっていて、すでに膨大なキャラクターたちが誕生している。ギコはその中でも代表格。基本的にはネコなのだが、すでに使い回されさまざまに転生している。

 

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~′ ̄ ̄(,,゚Д゚)   / つつ  ~  |    /  |

  UU ̄U U   ~(__)   し`J  ~(__)

ギコ猫【ぎこねこ】(ギコ・ハニャーン、ギコ)

・男らしく暴言を吐く、人に媚びない、小憎らしく愛らしい猫。

・口癖「逝ってよし!」「ゴルァ!」「ギコハハハ」「はにゃ~ん」(鳴き声)

・一人称;「俺」

・1999年にぁゃιぃわーるどで誕生と伝えられる。その歴史は2chより長い。

。キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!

キター!!!!【きたー!!!!】

神、基地外、電波、痛い奴、ひろゆきその他の降臨によって

感情が高ぶったときに使われる。特に実況スレでは使用頻度が高い。

ガ━━━(゚Д゚;)━━━ン!の亜種だが、2001年暮れ頃から急速に広まった。

(AA大辞典、より)