新年度が始まりました。地方競馬をめぐるここ数年来の改革も、いよいよ正念場を迎えます。
五月の連休明けくらいをメドに、JRAの方から地方も含めたニッポン競馬再編の青写真が示されるはず、です。もちろん、JRA自身はもとより、農水省の基本方針は、「地方競馬はもう切り離す(自助努力だから、ダメなら勝手につぶれろ)、JRAだけ生き残れば(財務省に納める交付金が減らなければ)いい」というものですから、およそどういうものになるのかは推して知るべし、ですが、すでに地方競馬再編の基本方針として「大都市圏のナイター競馬中心&南関四場+五場程度に再編」という仮の枠組みが提示されているので、まずはそれに沿うような形になるものと思われます。もちろん、そんな筋書き通りに整理統合ができれば苦労はないわけで、それぞれの主催者、自治体その他関連団体の思惑や事情がからんで、夏場以降、本格的にすったもんだが表面化することでしょう。それらを踏まえて、第二次の競馬法改正案が上程されるはずですから、本当に競馬を何とかしようという気持ちがある主催者は、現場ともども、死にものぐるいの努力がいま、まさに求められています。
個々の競馬場の事情はありますが、まず総論として言えるのは、経費削減、特に主催者側の人件費圧縮をまず、もっと徹底的にやるべきです。同時に、競走馬、馬主も含めた厩舎関係、施設など競馬を開催してゆくための資源を共有するための環境づくりを、近隣の主催者とオープンに模索してゆく。すぐ隣の県の競馬場とでも角突き合わせて番組の調整すらしていないところが珍しくない地方競馬ですが、自分のムラの事情に拘泥するだけでなく、とにかく腹を割って互いに声をかけ、連携の計画を立てるテーブルにつくことです。主催者間の連携と競馬資源の共有のための資金は、もう準備されています。そのことをまだよく認識していない主催者もあるようですが、まずは農水省に直接、膝詰め談判で尋ねてみるのが一番いいと思います。
お役所仕事というのはどうしてもタテ割りの系列重視で、まずは地全協を介して、というのがどこの主催者の手癖としてありますが、とにかくここに来て、その当の地全協ジタバタが目立ってます。かけ声ばかりで遅々として展開の進まなかったd-netをソフトバンクに(ほぼ勝手に)売り飛ばし、その上で15%のコミッションの値上げを通告、イヤなら別に現状のままでもいいですがそうしたらソフトバンクが導入するあたらしいサービスは受けられませんよ、という、ほとんど恫喝に等しいやり口。さすがに全主協でももめたようで、内部のニューズレターで半署名ながら、異例の反駁記事が出される始末。今の地方競馬の売り上げで15%もとられたら自場の利益はほぼなくなる勘定ですから、わざわざd-netを介して場間場外発売をする意味もない。案の定、そんな条件じゃとてもつきあっていられない、と様子見する主催者が続出、一部主催者の同意で見切り発車せざるを得なかったこと自体、地全協がもはや死に体であることが露呈しています。
年度末になってバタバタと発表された南関東の外厩導入についても、同じく地全協の思惑が見え隠れしています。那須の教養センターの一部を育成馬協会に買収してもらう、という話が出ていて、これは事実上、JRAへの外厩導入もにらんだ動きでもあると見るのが自然かも知れませんが、今後の競馬法改正に伴いすでにレールの敷かれている地全協解体の前に売り飛ばして、というやり口は、d-netとよく似ています。
また、地方競馬へのクラブ馬主の積極的導入を画策している形跡もあります。趣旨は結構ですが、しかし、また新たな天下り先をこさえておのが食い扶持確保するためならば本末転倒。何より、これまで天下りで利権に食らいついて地方競馬をここまで追い詰めた競馬エスタブリッシュメントたちが、そのまま何の責任もとらずにまた新たに地方競馬で食おうとするとどうなるか、火を見るよりも明らかです。自らリスクを負わない、汗もかかない、足腰も使わない、身体も張らない、それでいてカネだけまだこの先もふんだくろう、という了見では、競馬に限らずどんな商売もうまくいくはずがありません。
こんなこと言うのは僕ぐらいでしょうから、ここは敢えて言います。心当たりのある競馬エスタブリッシュメントのみなさん、少しは恥を知りましょう。ここまで地方競馬を、どうしようもなくまるまで放置してきたその責任を多少とも感じているのならば、自らの出処進退はおのず決められるはずです。