外国人馬主がやってくる?

ニッポン競馬の「国際化」、いよいよ最終段階にきているようです。21日づけの『東京スポーツ』に、こんな記事が載りました。

ドバイ(アラブ首長国連邦)のシェイク・モハメド殿下率いる世界有数の馬主「ゴドルフィン」が、近くJRA馬主に認可されることになりそうだ。「ゴドルフィン」所有馬は早ければ今夏の2歳新馬戦から登場する。

ゴドルフィン」は今月初め、軽種牡馬生産法人としてJRA免許登録部に馬主申請を行った。馬主名義は、すでに北海道日高に所有しているダーレー傘下の生産牧場「ダーレージャパンファーム」 (高橋力代表)。

 同ファームは昨年のジャパンカップ勝馬種牡馬入りしたアルカセットら6頭の種牡馬を所有している。軽種牡馬生産法人がJRAの馬主に登録するには4つの条件が必要になる。

 ①資本金1000万円以上で代表者が50%以上を出資、

 ②代表者の所得が2年連続で1100万円以上、

 ③自己所有繁殖牝馬6頭以上、

 ④牧場規模が15㌶以上(うち50%以上は自己所有)。

 以上の要件に加え審議対象になる過去2年の決算もすべてクリアされているという。最終的に認可の是非を決めるのは馬主や学識経験者で構成する馬主審査委員会(年3回開催)。 7月4日に開かれ、そこで正式に承認される運びだ。

あくまでも推測という書き方になっていて、それも主にダーレーサイドからのソースのようでしたが、それでも独自取材で頑張って微妙な問題に触れたのは、なかなかです。

いま、われわれが直面しているニッポン競馬のてんやわんやは、最も大きく言ってしまえば、81年、ジャパンカップ創設以来の「国際化」の、その最後の総仕上げの段階での混乱、です。

その間25年、国際GⅠに指定されてからでも14年。外国産馬への競走番組の開放、国際競走の増設による外国現役馬への出走枠の拡大、外国人騎手への短期免許の許可などはもとより、僕がずっと異議を唱え続けているアラブ番組の「廃止」や、認定競走や指定交流競走など地方競馬との「交流」の拡大といった国内案件までも、広く言えばこの「国際化」の流れの中で波及的に起ってきたことだと言えます。それは、戦後のニッポン競馬をこの先、どういう形にし、どういう未来を描いてゆくか、に関わる、言葉本来の意味での「政策的」問題だったはずです。

JRAと地方、という「ふたつの競馬」と、そこから発する馬はもとより、調教師、騎手、馬主までも含めた管理、免許制度のダブルスタンダードは、これまでの歴史的経緯があるにせよ、海外のホースマンに説明して理解してもらおうとする時に、いつも難儀することでした。東アジアの片隅の島国の、それも日常生活に馬がほとんどいなくなっていった国で、通年開催の競馬を全国規模で開催し、売り上げだけは結構とんでもない額になっていた、その事実が世界から意識されていなかったのが、ジャパンカップ以降、はっきりと視野にとらえられるようになった。なので、それまでジャパンスタンダードのローカルルールでやっていたのが、それだけではすまなくなってきた、というのが、この間の「国際化」を後押しした正直なところでしょう。

馬主の「国際化」というのは、その中でもハードルの高い案件でした。いくら番組を外国産馬や現役外国馬に開放しても、やはり輸送や関税といったボトルネックがあってそうそう大挙して押し寄せるわけもない。結果として、今回のように、日本国内に牧場という生産拠点を持っている「軽種馬生産法人」を経由しての認可、という形にならざるを得ないようです。ということは、世界的にも高いニッポン競馬(要はJRAですが)の賞金を狙いにくる外国人馬主は、今後国内の牧場を確保した上で入ってくることになりますが、さて、そんなホースマンがいくら世界とは言いながらどれくらい出てくるか。これは実質、ダーレージャパンに対する措置、と言われても仕方がないかも知れません。

一方で、地方競馬ではホッカイドウに続いて南関東にも、外厩(認定厩舎)制度が、この三月、そそくさと導入されました。これらの動きは当然、この「外国人馬主」問題ともからんできますし、早晩、JRAの厩舎制度にも波及するはず、と僕はにらんでいます。前号で触れた個人馬主の衰退を外国人馬主でカバーして盛り上げよう、という考え方は確かにありですが、しかし果たしてそれがニッポン競馬の未来にとって本当に有意義な施策なのかどうかについては、現場も含めて、まだまだ議論の余地があるように思えます。