ばんえい、岩見沢が「撤退」

 今日午後三時、岩見沢市がばんえい競馬から撤退を決断、これで北海道の文化遺産であるばんえい競馬は、「廃止」の道筋がつけられたことになります。

 ばんえい競馬は、平地の普通の競馬と違って、一トンからあるデカい馬がこれまた一トン近くあるそりをひいて、二百㍍の馬場で障害(要するに土を盛り上げたこぶ)をいくつか乗り越えて競う競馬。海外の映画祭でも評価の高かった映画『雪に願うもの』の舞台にもなったから、なんとなくご存じの向きもあるでしょう。

 運営は、北見市旭川市帯広市岩見沢市の四市合同の競馬組合。つまり、市営であります。ご多分にもれず赤字経営で、他の平地の地方競馬同様、存続の危機がずっと言われていて、四市から旭川と北見が抜けて、帯広と岩見沢の二市二場開催に規模を縮小、組合もいったん解散して新たに組織を編成しなおして、心機一転巻き返しを、という計画案を、帯広市が中心になって作成、岩見沢に同調を求めていて基本的にうまくゆきそうだったのが、ここ一週間で一気に逆転、急転直下の「廃止」決断に、という顛末。

 地方競馬がつぶれる時のお約束、がここでもまた、繰り返されています。「廃止」先にありき、の役人仕事で、有識者懇談会とか称する「外部団体」に諮問、「赤字だからやむなし」的な結論を出させて、それをタテに「断腸の思いで決断」と。でも、その懇談会はおろか、市議会議員たちで構成する競馬委員会の中にさえ、仕事としての競馬を知っている人間がほぼ皆無のまま、というのは、別にここばんえいだけでなく、全国多くの地方競馬運営のトホホな現実、であります。

 「報道関係者以外お断り」の貼り紙なんぞしやがった記者会見場に、あたしゃ「取材」と言い張って潜入。どこも似たようなものの地元のマジメな新聞記者やらテレビクルーやらの中に混じって、市長に思いっきりいやな質問ぶつけてやりました。競馬法の第二次改正が日程にのぼっているこの時期に、鼻先で敢えて辞めるのはなぜか、関係者への補償その他はどう考えているのか、これまで赤字のままほっからかしにしてきた経営責任はどうとるのか、などなど、まあ、でぶ太郎にしてはマジメな質問をぶつけたもんだ、と笑ってやってくださいまし。

 斉藤市長、思ったより若くて、どこか天才バカボンに似たいかにもぼんぼん風。答弁もまあ、平易ですけど言ってることはどうでもいいことで、「馬事文化としての価値は今後も検討」とか、「個人的にはとにかく存続させたい、という思いでやってきた」とか、まあ、きれいごと並べる手癖だけはいっちょまえ、ではあります。

 それよりもなお、まわりの役人連中のツラの卑しいことといったらもう、あたしゃひさしぶりにムカッ腹が立ちました。ええ、あの高崎競馬の「廃止」騒動の時、かのライブドアまで引っ張り出して抵抗した時の、群馬県庁職員連中のいや〜なツラを前にした時の記憶がふつふつと……です。

 とは言え、現場のうまやもんはそうそう簡単あきらめられるもんじゃない。帯広市単独開催の可能性もまだ模索する構えで、どだい帯広市側から提示した計画案だと、四割の経費削減で年間300万程度の黒字を見込む、というものだったのに、それをまともに検討もせずに「廃止」決定、という岩見沢市のやり方には、帯広市側もかなりムカついている様子。先立つものはゼニ、なのは間違いないにせよ、平地の競馬と違ってデカい重種馬使っている関係で、農水省としても「畜産」という枠組みで考えざるを得ず、そのへんはサラブレッドよりも行政がらみのマター、という色彩が濃いのが救いっちゃ救い。水面下で武部だのムネヲだの中川(酒)だの、地元選出の国会議員たちの周辺に工作をかけまくって、何とかせめて来年一年お試しの存続、を勝ち取ろうと頑張っています。

 というわけで、まだまだこのばんえい「廃止」騒動、メディアは一様に「廃止」確定、みたいな書き方しかしてませんが、今後しばらく物議を醸すこと間違いなし、です。

●編集後記
 記者会見の現場、ってのは、何度踏んでも気色悪いですね。特に官庁関係のそれってのは、例の記者クラブの「内輪」感覚炸裂がデフォで、あたしみたいなエタでぶ蛆虫にとっては、とてもじゃないけど居心地が悪い。今日も、うっかりカメラ構えてテレビカメラの前に立ってて、若いカメラマンのあんちゃんに背中どやされましたがな。あ、もちろん、ちゃんとあやまりましたよ。殴ってないって、ほんとに。

 ばんえいに限らず地方競馬は、どこもいよいよ火の車で、来年度に予定されている第二次の競馬法改正を待たずに息絶えそうなところが、他にもいくつかあるんですが……銚子電鉄みたいに、ネットのろくでなしたちが動いてくれる……なんてことは、ないよなあ……。・゚・(ノД`)・゚・。