競馬場のつぶし方、教えます

*1さて今日は、行くも地獄、退くも地獄の現状で、競馬を廃止したくても見舞金(すでに補償金にあらず)その他、後始末のすったもんだを考えるととても手が出せず、と言って、このまま頑張ってみたところで劇的な一発逆転はもう期待できない状況で、ああ、何の因果で俺は競馬なんて仕事を割り振られることになっちまったんだ、とお嘆きの地方競馬の主催者サマ諸兄にひとつ、不肖小生がとっておきの知恵を授けてさしあげましょう。

大きな声では言えませんが、競馬場をつぶすのは、実はもうかなり簡単なことだったりします。まず、あなたがた主催者の側が、もうこんな面倒な競馬場なんかつぶしてしまえ、と明確な意志を持ってしまうこと。なにしろ六年前、中津競馬を一夜にして廃止決定、強行したS市長の大英断、厩舎関係者と主催者の間には雇用関係はない、よって「補償」の義務も責任もない、という錦の御旗はまだ生きている。マスコミなんぞ競馬の仕組みはほとんど知らないし、記者クラブで縛っている以上、情報操作など赤子の手をひねるようなもの。要は意志、やる気の問題です。

賞金や手当をどんどん下げてゆく、のはまず基本。場外馬券発売所をこさえるなどもっての他。まだ内部留保があるあるといいながらある時点で一気に「実はもう残ってないんです」と内情をバラして、何も知らない厩舎関係者をパニックに陥れ、自ら「もう廃止してくれ」と言い出すように仕向けるのもいい。たまには殊勝なふりして、地全協その他関係団体から出向を仰ぐのもいい。主催者だって懸命に頑張ってるんです、というアリバイはきっちり作ってくれること請け合いですし、少なくとも地元の議会に対して善玉ぶりっこはできるってもんです。

で、それらの作業を何年かかけて淡々とやっていった上で、最後のヤマ場で切るべき切り札だってあります。禁止薬物のひとつも出してしまうこと、これです。

ここまで賞金や手当がさがってしまえば、競馬関係者というのはそのようなよからぬ行為に走りがち、という先入観はなぜか未だに根強いようですし、実際昔は、傾いた競馬場からはそのような不祥事が飛出すものではありました。とは言え昨今、いくら苦しいとはいいながら、わざわざそんな「カマし」を危険覚悟でやらかそうという、ある意味やんちゃな思惑など今の厩舎にはもうほとんど宿りようはない、それくらい疲弊し追い詰められているのですが、それでも、競馬をとりまく環境、主催者も含めた世間の視線には、厩舎をそのように見る昔ながらの態度だけはしっかり保存されています。

だから、あれこれ考えず、とにかく何かクスリが出てしまえばそれでいい。被害届が出され、警察の捜査が入ったところで、この種の競馬法違反案件で、いつ誰がどうやって、といった詳細な投与の経緯が明らかになることはまずないということは、何もかのディープインパクトの例を持ち出すまでもなく、先刻よくご存じのことでしょう。「禁止薬物が出た」という事実、まずそれが大事で、あとは「不祥事」「八百長」といった物語を従順なマスコミを煽って発動してゆけば、それらは全部厩舎関係者に押しつけていってくれる。ああ、やっぱりもう地方競馬ってのはそういうあやしいものなんだ、競馬に携わってるのはそういう危ない人たちなんだ、といった市民感情はいくらでも増幅できる。もうずっと赤字だっていうし、何よりもともとバクチなんだし、つぶしたっていいんじゃないの、という「世論」がありがたく後押ししてくれます。大丈夫、心配することはない、そうやってみんな競馬をつぶしてきたんですから、これまでのところは。

大真面目な話、競馬にとって重要なはずの「公正確保」というタテマエが、「戦後」のニッポン競馬において果たして何によって担保されてきたのか、について、いま、こういう状況だからこそ、もう一度静かに考えてみる必要があると、僕は思っています。

たとえば、どの地方競馬でも競馬事業を監査する委員会はあります。多くの場合、主催者である自治体、県や市の議員さんや「有識者」(これが実に曲者なんですが)によって構成される。けれども、その中に競馬についてよく知る人はあまりいない。いや、はっきり言って皆無の場合すらある。どうかすると、預託料と賞金、出走手当の関係、厩務員と騎手、調教師の関係、何より馬主と馬と厩舎との関係、などなど、競馬を実際に運営しまわしてゆく仕組みについてごく基本的な理解すら、ほとんどされないままに議事だけは進んでゆく。帳簿上赤字が出ていなければ、誰もその数字の背後を詮索しようとしない。だから、売り上げから控除率25%でぶんどった、その経費の中身が果たして妥当なのか、「健全な競馬運営」がされているのか、かなり野放しにされてきたところがあるんじゃないか。だから、自治体の裏ガネその他の財源にされたりということも起ってくるし、いまこういう状況になっても自分たちの手で経営改善ができないのではないか。

それほどまでに競馬事業は儲かった、ということです。当たり前です。25%のテラ銭かっぱらってきたんですから。かつてのヤクザのシノギはテラ銭三分。それでも蔵が建つ、と言われたのが胴元です。その八倍以上とっていながら赤字でござい、と居直り、その責任をとろうとしない、そんな主催者はもういらない。何かというと悪者にされてきた、そんな構造の中で生きている厩舎の側から、そういう認識をしっかり持とうとする

ことが求められている。でないと、妙な「禁止薬物」はまだいくらでも出てくるかも知れませんよ。

*1:*覚悟のビーンボールでしたが案の定「これはカンベン……」というのでボツでした