控除率を変えよう

いやあ、内田博幸、どえらいことをやらかしましたねえ。

GⅠNHKマイルカップ、18頭立てのブービー17番人気ピンクカメオでの直線一気、差し切り勝ち。馬連馬単それぞれ3万、8万台、三連複でも120万、三連単にいたってはなんと970万あまりというとんでもない馬券の片棒を担ぐことに。

改めて、地方の騎手のハングリーさ、そのガッツの強さを思います。彼らのJRAでの活躍ぶりはもう日常の、あたりまえの風景になりました。正式移籍した者は言うにおよばず、カク地馬がらみでたまにスポット騎乗してくるだけの地方騎手でも、乏しいチャンスで必死にアピールしようとするファイトあふれる騎乗ぶりを、ファンはちゃんと見ています。「なんだこれ、聞いたことない騎手だなあ」と言いながら、「でも、地方のノリヤクならちょっとおさえとくか」と連下にマークシートをそっと塗りつぶす光景。少ない乗り馬の中で、条件戦で印のない馬をそこそこ持ってきていたり、彼らが地方で長年培ったレース勘、勝負についてのしたたかな姿勢は、多頭数で出入りの激しいJRAの競馬でも発揮されているようです。

ご存じのように今回の内田(博)騎手は、ずっと大井所属のまま、カク地経由で関東での乗り数を増やしながら結果を出して、ファンの間ではもう信頼できる名前になっていたわけですが、それにしても今回大舞台であの馬をいきなりアタマに持ってくるとは……「うわあ、騎手でおさえとくんだったあ」という悲鳴がさぞ、あちこちであがったことでしょう。マスコミが「JRAへ移籍しないのか?」といった脂っこい質問を投げかける中、それに対して明言しないクレバーさもまた、ほめていいところです。。ああ、これでまた、美浦を中心としたJRAジョッキーたちの包囲網が一段と厳しくなるんだろうなあ、などと考えてしまったのは内緒ですが。

とは言え、900万馬券、などというと、その部分だけがまた拡大されてニュースにもなります。それはそれでまあ、ある種のファンの馬券購入意欲を刺激するのでしょうが、でも、と同時に「そんなもの、やっぱりどうやっても当たらないよなあ」というあきらめを増幅する面もある。GⅠだ重賞だと言っても、フタをあけてみれば結局あてにならない、当たらないなら馬券なんて……という悪循環。いや、三連単というのは狙ってとれるものでもないのはわかっていも、ほんとに難しい。

だからこそ、何度でも言います。モタモタしないで控除率をとっとと変えてしまいましょう。三連単は多少高めに設定していいから、その分単勝複勝、そして枠連については控除率を思い切ってさげることで、ワンコインで楽しむいまどきのファンではない、良くも悪くも馬券で勝負したい古くからのオールドファンの懐を暖かくしてやる。そういう施策こそが、実は今の底の見えない売り上げ長期低落に歯止めをかける、コロンブスの卵、だったりするはずです。

単枠指定、なんて制度があったことなどもう昔話。まして地方での友引制度など、いまどきの若いファンにかかれば、それってどこの国の話、で片づけられるのが関の山ですが、しかし、今回の900万馬券まで飛び出したレースでも、枠連は1400円ほど。当たり前の倍率におさまってるわけで、これは二着に一番人気のローレルゲレイロが頑張ったこともさることながら、ピンクカメオの同枠に四番人気のダイレクトキャッチがいたことがより大きな理由でしょう。これなら何とか狙ってとれるわけで、改めて「代用」のありがたさ、を感じたファンがたくさんいたはずです。ついでに言えば、ワイドも万馬券になってましたが、同じ一番人気から流した馬券でも三着に飛び込んだ18番人気のムラマサノヨートーとの組み合わせと、一着17番人気のピンクカメオとの組み合わせが、配当にして三倍ほど違っていたのも面白かった。やはり、内田(博)ならば着くらいはもってくるかも、というファンの期待値の高さが、オッズにもよく出ていました。

競馬はギャンブル、いまさら言わずもがな、ですが、しかしそのギャンブル、賭博の意味も時代によって、社会によって変わってゆきます。法律的な解釈にそのような変数をうまく織り込んで行くこともまた、行政手腕のひとつのはず。「民営化競馬」のパイロットケースとして新たなスタートをきった「ばんえい十勝」も、思い切った経費削減が奏功してひとまず予算的な目標をいきなりクリアしています。図体が大きい分、舵を切るのがタ大変なのはわかりますが、今のJRAも抱えている問題は構造的には地方と変わらないはず。トライ&エラーの精神で果敢な判断、すばやい対応が実現できれば、大きな世帯だからこそその効果もまた、大きなものになる可能性があるはずです。