地全協「改編」の大嘘

 おそらくこういうことになるのでは、と、昨年末あたりからこっち、うすうす感じてはいましたが、いやあ、それにしてもひどい。改めてあきれ果てました。果たして一体これで何が変わるというのでしょうか? 本当にニッポン競馬を、JRAのみならず地方競馬と馬産地も含めた全体を、今の窮状から抜本的に救うような施策が打ち出せるというのでしょうか? 

 他でもない、先日16日づけで発表になった地全協の「改編」の件です。公式サイトには、「第166回通常国会で成立しました競馬法の一部改正により、当協会は平成20年1月1日をもって、特殊法人から地方競馬主催者が主体となって運営する法人(地方共同法人)に生まれ変わりました」という味も素っ気もない説明の後に、「これに伴い、当協会の役員については、下記のとおり新たな体制となりましたので、お知らせいたします」とだけ公式発表が。要は、数年前から行われてきた競馬法改正の趣旨に従って、来年平成21年度スタートを期して、地方競馬を統括する新たな組織を「地方共同法人」として立ち上げるという、その具体的な陣容がようやく少しだけ明らかになった、ということなのですが、しかし、はっきり言って中身はほぼ何もなし。例によってスポーツ紙あたりには、「NAR(地方競馬全国協会)は今年から農水省特殊法人から、地方競馬の主催自治体による地方行政法人に生まれ変わった。協会名に変化はないが、主催者を監督し、売上金を畜産振興などに配分する機関から、地方競馬の経営に関する企画調整をする機関へと大変身したことになる。これまでそうした分野を扱ってきた全主協(全国公営競馬主催者協議会)の業務をも引き継ぐことになったが、全主協そのものは行政的な任務をNARに移行したまま、宣伝や顧客サービスなどのきめ細かい対応のために残され、行政改革による職責に空白を生じさせない処置がとられている。」(山野浩一氏)といったご祝儀記事も出ていたようですが、本気で言っているのだとしたら見識を疑います。

 要は、まず大井の元副管理者が理事長に据えた体制。お目付け陣には馬産地北海道の高橋はるみ知事以下、岩手県、愛知県、兵庫県の知事がそれぞれ地方競馬の管理者級を並べていますが、しかし競馬の運営の実際や実務的な部分をこれら自治体首長の管理者はまず何も知らないというのは地方競馬の常識。これまで口が酸っぱくなるほど言い続けてきたような、主催者はもちろん、現場の厩舎関係者や馬主なども含めて、「民間」主体で同じテーブルにつく「あたらしい競馬」への希望は、ひとかけらもない。こんな旧態依然の体制では、はっきり言って地全協と、おそらくはその背後で、何だかんだ言いながらも結局またも地全協のケツを拭く羽目になったらしい農水省競馬監督課の思惑通り、いいようにされるのは火を見るより明らかです。

 僕もお人好しなので、今後、実務的態勢を固めてゆく上で、もしかしたら何か隠し球の腹案でもあるのかと思い探ってみたのですが、会議に出席した人からも「何も新しい話は出てこなかったよ」「何かアイデアがあるとは思えない」といったそっけない反応ばかり。中には「とにかく問題意識が全くないとしか思えない。あんな会議なら二度と出席したくないね」と吐き捨てるように言う人も。去年の参院選以降政局がああなって、福田内閣になったことも大きいのかもねえ、といううがった見方もありましたが、それはそれとして、本当に競馬をどうにかしよう、また財政にも寄与できるような形にブラッシュアップしてゆこう、という情熱があるのならば、優秀と言われてきたお役人衆のこと、政治家ごときが入れ替わろうがいくらでもやり方はあるはず。要は、本気で競馬をどうにかするつもりがないということでしょう。

 これではせいぜい、南関東とあといくつかの主催者間の日程調整を言い訳程度にやって、それも自分たちの手にあまるはずですから、まさに旧全主協の「新団体」に丸投げして終わり、でしょう。その全主協自体、各主催者の思惑が相互にスクラムを起こして機能不全、「うちがひと肌脱ぎましょう」と立ち上がる主催者が、大井であれどこであれ出てくる気づかいはまずない。どこもおのれの足もとをどうにか支えるのでいっぱいいっぱい。全国をバランスよく見渡して相互に連携するグランドデザインができる状態では、とてもないでしょう。

 はっきり言います。これは、地方競馬はもうダメだから、このまま自然死を待つ、そういう判断だということを最終的に示したものと解釈します。つまり、競馬エスタブリッシュメントによる地方競馬「切り捨て」の最終宣告です。あとは「それぞれの主催者のご判断で」と高みの見物を決め込むのがお約束。事実、馬券の相互売りあいのシステム増強と称して、地方競馬構造改革」のための虎の子の140億円のうちの一部も、券売機の製造会社などと協力しながら、彼らはすでに手をつけています。新たな連携のための施策と言いますが、しかしつぶさに見てゆけばそうでもない。間で「ピンハネ」して自分たちだけ食いつなげればいい、という競馬エスタブリッシュメント特有の思惑が見え見え。

 ならばよし、上等です。今世紀に入ってこのかた、中津に始まってバタバタとつぶれていった地方競馬の、人と馬の無念の想いにかけても、現場の厩舎関係者はもちろんのこと、主催者も含めて死にもの狂いで立ち上がるようになるための手立てを、あらゆる手段を講じてでしかけてゆくしかありません。これは馬と、その馬と共に生きるしかない人たちにとっての、生きる権利の正当な行使です。このまま今年いっぱいのらりくらりとこれまで通りの役人ペース、いくら競馬がつぶれても何も困らない立場の彼らお偉方の都合でだけ、ことを進めるつもりならば、これまでのあなた方の想定できる範囲を超えた事態があちこちでうっかりと出来するだろうこと、及ばずながらここに警告しておきます。