笠松地権者騒動の内情

 地方競馬の存続の危機はどこも相変わらず。それぞれ事情があって抱える問題もさまざま。中でも、オグリとアンカツ岐阜県笠松競馬場は、競馬場の土地を所有する地権者から主催者が訴えられていて、成り行き次第ではまたもや「廃止」か、という事態になっている。

 「そもそもわけわからん裁判だでねえ」とぼやくのは地元関係者のひとり。「こんなことやって一体誰がトクするのか。県側についてる弁護士でさえ、訴訟利益が見えん、と首ひねっとる」

 もともと、ここは300人以上の地権者が競馬場の土地を細切れに所有する全国でも特殊なケース。県側が土地を借り受けて競馬をやってきたのだが、その賃借料をめぐっての争いという。

 「百円単位の攻防です。年間だと全体で数千万の違いにはなるんですが、岐阜県側はこれを契機に競馬をつぶせないかという思惑もあるようで動きが鈍い。しかも名古屋との連携含みで東海地区の「再編」もからんで、各方面の思惑が交錯しているのが現状です」(地元のある新聞記者)

 訴訟を起こした地権者は全体の3割ほど。しかも古い馬主でもある有力者が中心で厩舎側も寝耳に水だった由。「もとは私怨というか、主催者側とのくだらん行き違いがもとでこじれただけなんやけど、弁護士がしゃしゃり出てきたら引っ込みつかんようになって大ごとになってもうた」(先の関係者)

 確かに、3年前の存廃騒動以来、予算削減で地代も下げられているが、競馬をつぶしていまさら細切れの土地を返してもらったところで使い道がないのもまた事実。地権者の多くも競馬に愛着はある人たちで、ここにきて厩舎関係者が一戸一戸まわって和解の道を探り、その甲斐あって提訴を取り下げ原告団から抜ける地権者まで出始めたばかりか、それ以外の地権者たちから原告団を逆提訴の動きまで出てきて、地権者側も四分五裂の様相に。何より、笠松競馬は今年度とりあえず黒字で推移していて、なのに敢えて、こんな裁判を起こして競馬の足を引っ張る理由は、そもそも何なのか?

 「だいたい弁護士がねえ…」と声をひそめるのは、ある地権者。事務所は名古屋だが、競馬のことをまるで知らないばかりか、地権者への根回しでも跡地利用で不確かな話を吹聴して評判がよくない。もともと市民運動系というが、このところ大した案件も担当していず、なぜか急にこの件に顔を突っ込み始めた由。「訴訟の費用自体、どこから出とるんかようわからん」という声まで出る始末。13日の県議会で古田知事は「跡地利用について県側は一切関知しない」と明言。さらに動揺が広がりそうだ。

 5月の一審判決は原告勝訴。12月5日の二審では双方交渉を継続するよう勧告されたが、次回年明け2月に予定される判決で差し戻しもなくいきなり結審となれば、県側は「即刻廃止」の構えというからおだやかではない。

 「弁護士だけじゃなくて、それまで上から目線でそっぽ向いてた名古屋の主催者や関係者がここにきて急に笠松に猫なで声で近寄ってきたり、金沢含めて愛知と岐阜の馬主会がひんぱんに会合してたり、いろいろ裏がありそうで妙な具合です。何にせよ、年明けの結審までには背景も含めてまだ明るみに出てきそうな気配ですね」(前出の地元記者)