あやしい「生活者」

 去年の秋、福田首相が就任当初の所信表明演説で、「生活者」というもの言いを使っていたのを、覚えておられるだろうか。「真に生活者の視点に立った行政に発想を転換する」とかなんとか、ってやつでしたが。

 あれ? と思った。それって「野党」専属、それこそプロ市民系のお札みたいなもの言いになってたはずなのに、どうしてここでわざわざ、と、耳に立ったのだ。

 言葉自体は、戦前の三木清にまでさかのぼるとか。その後もそれなりの経緯はあるけれども、でも近年では「消費者」とほぼ同義。それこそ「オルタナティヴ」だの「自立」だのと合わせ技で民主党社民党共産党界隈、「○○反対」専売特許な市民運動系の皆様の辞書機能にゃ工場出荷時から登録済み。申し訳ないけれども、すでにその程度にはうさんくさいもの言いにはなっている。

 でも、実はこの「生活者」、公明党も好んで使っているのにお気づきか。最近、国会でも公明党の立ち位置はうっかりしてると野党と見分けのつかない時がままあるけれども、とりわけ、福祉や生活保護関連などでは顕著で、「弱者」「格差」などと共に質疑や答弁での定番語彙に。もの言いだけから見れば今の連立与党、すでに野党と全く地続き。「政治は言葉だ」というのが真実なら、こりゃもう完璧にどこやらの方面にキンタマ握られているようにしか見えなかったりする。

 ああ、そう言えば福ちゃんったら、「消費者庁」を新たにこさえる、なんてこともぶち上げてましたねえ。言葉に罪はないけれども、でも、「生活者」というもの言いにはこの先、ちょっくら警戒しておく方がよさげであります。