秋葉原「世直し」の夢

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 鋳掛け松、という物語がある。もとは歌舞伎の「船打込橋間白浪」という外題。後に講談、浪花節などにまで翻案されかなり広まった一篇である。

 主人公は鋳掛け屋の松五郎。ある日、橋の上から、屋形船でどんちゃん騒ぎをする金持ち連の散財ぶりを眼下に眺め、「あれも一生、これも一生」と思案を巡らし、ままよ、道具一式からりと打ち捨て宗旨替え。つまり、元祖「格差」の封建社会で底辺にあえぐ「負け組」が、「勝ち組」の狂態眼にして、ええい、もう、こんな商売アホらしくてやってられるかよ、とばかりに開き直るのが山場。その後、一代の盗賊になってゆくのが話の眼目で、作者は河竹黙阿弥。幕末から明治にかけて物情騒然の変革期に、江戸の町人たちがのぞんだ「世直し」のある形とは、そのような何でもない庶民がちょっとしたはずみで希代の悪漢へと変身する、そんな回心を何よりの見せ場として成り立っていた。

 というわけで、秋葉原の通り魔事件である。とりおさえられた青森県出身25歳の加藤智久は、どうして鋳掛け松になれなかったのか。それどころか、『吉原十人斬り』は佐野次郎左右衛門のごとく乱心するしかなかったのか。

アンデスで蝶がはばたいたらNYで暴落がおきる、とかいうのをおもいだした。
富士の裾野でつなぎが消えたら、秋葉原で7人が殺された。

今更何ビビってるんだ?
年間3万人の自殺者の中からほんの少し復讐者が出てくるだけじゃないか^^

 首都東京のど真ん中、今を盛りと話題になる電網世界の中枢アキハバラで起こったできごとだっただけに、ウェブ空間では得意とする実況状態が花盛りに。

TVの速報よりも速かった人。
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/news/1212741703/286
286 名前: ニーチュ(埼玉県)[sage] 投稿日:2008/06/08(日) 12:53:14.18 id:j8NxSVFt0
アキバでパトカー大集合&ホコ天封鎖 らしい。何があった?

 続けて、テレビ以下、何より速報性が売りのはずだった表のメディアが、映像含めて素人の群がる電網世間に比べて必ずしも凌駕するものでもないことが改めて明らかに。携帯電話に付属するカメラで現場に居合わせた者たちが画像を撮り、そのままウェブにアップしてゆく。傷つき斃れた人たちが目の前にいる、そのまわりを手助けするでもなく取り乱すでもなく、ただ遠巻きにして片手の携帯をかざして熱心に写真を撮る者たちが多数派であることも、同時にさらされていった。

 とりおさえられた25歳の青年、加藤智久派遣社員だった、ということがことさらにクローズアップされた。「格差」という言葉が事前に存分に浸透していて、その分、いまの自分の不遇、日々の暮らしのやりきれなさに何か意味を求めるようになっていた。かつてなら「貧乏」と呼ぶことも素直にできただろう、この世に生きることにまつわる根源的な不条理。それを体して狂ったかのように見えたところが、おそらく電網世間にも微妙に何らかの感情を響かせてゆくことになったらしい。

 独身のころ犯人と同じ○○○業で働いたことがある。社保完備と書かれていたのに健康保険に加入させてくれない。担当者にハナシが違うと抗議したら「病気になる予定がないなら加入する必要ないでしょう」とわけのわからない断られた。すぐ辞めてもっと条件のいい会社に入社して正社員になれたからよかったけど。

 2年前の夏に東京で日払いの登録派遣の仕事で工場で1ヶ月くらい働いたけど、何年もやってる30後半〜のオッサンがたくさんいたよ。もうどこにも雇ってもらえないんだろうな。あんなもん1日働いて6500円で、毎日働いても200万くらいだぜ。 妻、子供もいたオッサンもいたけど、どんだけ貧乏な生活なのだろうか。 因みに派遣、正社員ともに超民度低い。狂ってた。

 やあ、俺派遣社員奴隷階級24歳。 先日、仕事で1日だけ一緒になった40代の派遣のおっさんと話したこと。


おっさん「私末期がんなんです」
俺「え?入院しなんですか? 」
おっさん「そんなお金も時間もありません」
はぁ。考えてみれば俺が癌になっても入院費なんて出せないや。 いまでも、肩と肺の調子がおかしいけど、幾ら取られるか分からないので病院に行っていない。
俺「派遣会社の社長とか殺したくなりません?」
おっさん「まさかそこまでは。ははは…。……。」


貧民はこの善良さに附けこまれて搾取されるんだよな。 人の痛みに鈍感でないと資本家にはなれない。

 「搾取」などという忘れられた言葉も、飛び交う情報の裏側で少しはやりとりされるようになっていた。われらの膏血を絞って肥え太るやつらがいる。悪いのはそいつらだ。派遣社員という身分の不安定、何よりも四割、時に五割とも言われるピンはね率のすさまじさは、かつての港湾労働者の元締めなどよりさらにひどい。ああ、二十一世紀のこの時代に、忘れられていたはずの「階級」と「革命」の幻想が何となくよみがえってしまうのはいかなるめぐりあわせか。それもまた、このように薄っぺらくも。

日本はQCが行き届いた工場だと思え。
金太郎飴な規格から外れた奴は存在を否定され排除される。
単なる工場だから、街に美観も町並みも糞もない。経済性と効率性だけ優先して無味乾燥の建物が立ち並ぶ。 個人はベルトコンベアー上の物体に過ぎないから、限界まで詰め込まれ(通勤)、限界まで働かされ(サビ残、余暇極小)、貯蓄場所も必要最小限(ウサギ小屋)。 QCの行き届いた工場だから、息が詰まるし、逃げ場がない。
”国民は工場を流れるパーツ。それにそぐわない意識を持つな!!”
これが無味乾燥で息苦しい工場もとい、美しい日本だ。 パーツ風情が、身の丈に合わないプライドなど持つな。黙ってろ。

 これまた「世直し」のひとつ、なのか。鋳掛け松にはとてもなれぬとは言いながら。

 今の社会の仕組みとして派遣社員が必要とされている、それをどうにかしないと、といった議論に流れがちだが、それと共に見過ごされがちなことをひとつ。派遣社員の待遇をここまで不自由なものにしてしまった原因のひとつに、正社員側からの圧力というのもあったことを。労組がその組織員である正社員の既得権を守ることをしていった結果、それ以外がはじかれてしまったことを。

 かくて、自ら守るしかない自分のココロ。まっとうな批評はそこからようやくにじみ出してくるしかない。

こいつが絶望とか孤独とか、聞いてるだけでムカムカするんだよな。
俺は23歳までフリーターだったが、その後旧帝を一般受験して卒業したぞ。
派遣が嫌なら他の道を考えて一生懸命頑張ればよかったのだ。 最期まで他人に責任転嫁した挙句、全く関係のない人を7人も殺して、 同情の余地はゼロ。これは派遣云々の問題ではない。

ちょっとだけ泥仕事が出来るようになればすぐに上向くと思うのだが。まだ、今ならば。
泥仕事や苦労を避けてきた結果に過ぎないよ。今の派遣社員の人たちは。

勝ち組負け組みの違いなんて、火あぶりと水攻めの差くらいしかないと思うが。

 日本で派遣労働者による暴動は起きる/起きないとかの議論もありますが、、、
オレはそれよりも、高齢化し職にあぶれるようになった氷河期世代&退職団塊世代を支えるための社会保障費の天文学的な増加で大増税に踏み切ったなった後の大混乱のほうが心配っすけど。

派遣仕事の抑圧に耐えかねての凶行、情状酌量の余地がたっぷりあるんじゃないか、おおむねそんな観測であれこれ取り沙汰していた流れが、犯行当日、容疑者の手による携帯電話からネット掲示板への書き込みのログがぞろぞろと暴露されてゆくにつれて、その風向きもあれよあれよという間にしらけたものに。

犯人が携帯サイトに書き込んだレスまとめ。凄い細かく書き込んでる。
これを読めば、今後生活する上でどういう人間に気をつければいいか、少しはわかるかもよ。
http://www11.atwiki.jp/akb_080608/pages/29.html
http://www11.atwiki.jp/akb_080608/pages/25.html
http://www11.atwiki.jp/akb_080608/pages/26.html
http://www11.atwiki.jp/akb_080608/pages/27.html
http://www11.atwiki.jp/akb_080608/pages/28.html
http://www11.atwiki.jp/akb_080608/pages/33.html

今までの書き込み片っ端から掘り返されててワロスwwww

まあそのおかげで人物像が見えてきてるのが凄い。
昔は頭がおかしい人で済んだのがそうでもないことが分かってくる。逆を言えば対策がちゃんと見えてくる訳だ。昔はTVの言うがままに信じるしかなかったのに。

 それでも、社会が悪い、世の中の仕組みが彼をそこまで追い込んだ、という物語は、しぶとくも残る。本気でそう思うのか、それとも単なる商売、世渡りの種として持ち回るのかはともかく。そしてまた、学校の卒業文集を素材にもっともらしい解説、分析、深読みの賢しらが空しく垂れ流されるばかり。

秋葉原無差別殺傷の加藤容疑者の高校時代の卒業文集に、「ワタシはアナタの人形じゃない。赤い瞳の少女(3人目)」と書いてあった、とテレビ朝日の夕方のANNニュースが伝えた。 加藤容疑者の同級生は、意味が不明だった、などとコメント。 キャスターは「謎の言葉」と紹介。精神科医は「ワタシとかカタカナなのは他者との距離感がどうこう」とコメントし、 「本当の自分を探していたのかも・・・」と締めくくった。
【最悪】ワタシはアナタの人形じゃない【秋葉原
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/eva/1212968216/

「私の代わりはいくらでもいるもの」てか? www
真剣に分析してたの見て、ワロタ。

今まさにニュースでやってた。文集の謎の言葉として紹介されてて 「本当の自分を探していたのかも・・・」 なんて精神科医が言ってたけど、アニメの台詞引用しただけなんて悪い冗談だよな、俺たち的にも二重の意味で。テレビ局社員にエヴァオタがいなくてよかったです。

「なんでしょう、謎の言葉ですね」だとww  
専門家「ワタシとかカタカナなのは他者との距離感がどうこう」 とか。
いやアニメだからそれw  アニメのセリフですからwwwwwwwwwww

もし俺がなんか事件やらかして卒業文集晒されたら、「俺より強い奴に会いに行く」が全国ネットで晒されるのか……すっげーイヤだな。

昔も少年犯罪だかの犯人の卒業文集に「自分はプラントなのだ、人間ではないのだ」とか書いてあるのを「歪んだエリート意識の現れ」とか、朝日夕刊の素粒子だかで分析wされていたが……。
どうみても『トライガン・マキシマム』です本当にあ(ry  マスゴミってバカばっかだな。

 「格差」に苦しむ潜在的な不満が爆発するぞ、似たような事件が続々と起こるぞ、と期待すらしていたように見える一部の「革命」待望、歪んだ「世直し」期待の気分は、かくて自ら信頼できないことを暴露してゆくことで鎮静化。日々の中、個別具体の再発防止への建設的なことばは、そしていつも小さくささやかなものでしかないのだけれども。

派遣が不満で次々と似たような犯行が起こるとか言って一週間。
起きたのは中学生と無職中卒女と大学生のゆとり犯罪予告だけw

俺の再発防止策。
防刃服を着て防御力を上げる。人ごみの中や浮かれ気分時でも通り魔を警戒する。
ペットを飼い愛情をもって育てる。イラついたら全力疾走してへとへとになる。 イラついたら布団を丸めてボコボコに殴る蹴る。大声を出す。宝クジが当たるイメージをする。一日一回、やっぱ生まれて良かったんじゃねと軽く思う。 下には下がいると思う。三ヶ月先の未来は考えない。こんなもんかな……。

思い出した。
自分も高校で挫折したパターンだけど、入学半年のストレス限界の頃、親との些細な喧嘩でブチ切れて、過呼吸起こすほどワンワン泣き始めたら、オカンが黙って抱き締めてくれたんだな。
なんか、その時『あぁ、もう自分はこのままでいいんだな』って思った気がする。