宣言 名無しの品格

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 名無しが名前である。

 匿名、などとしかつめらしいことは言わぬ。正しく「名無し」。

 どこの誰か、誰も知らない、知る必要もない。ただ、そこにいる。いて、つぶやく、ものを言う。発言、などと構えるのもまた野暮。息をするように、街をそぞろ歩くように、ものを言う、語る、ことばをつむぐ。意味の世界を生きる生きもの、人としてあたりまえの営み。

 指は鍵盤に、目線は画面に、回線の向こうに広がる「世界」を気ままに凝視しながら、同じように向こう側にたたずんでいるはずの無数の名無したちの雑多な気配を感じながら、思うところ、感じるままをそこに文字にし、回線の向こう側へ淡々と流してゆく。

 インターネットと言い、IT世界と呼ぶ。時にはバーチャル、虚構のまやかしだと揶揄もされる。匿名は無責任だ、名前を明かせ、おまえが何者かはっきりさせた上での発言、それこそがルールだ、と新聞屋や電波芸者や大学の先的や芸人評論家や、いずれ肩肘張った優等生、志なき口舌の軽薄才子が勝ち誇ったツラで説教を垂れる。
 結構。やあやあ、われこそは、と青筋立てて名乗りをあげ、あっぱれもののふの戦さぶりこそが民主主義の根幹、由緒正しい議論の作法、というその考え方そのものが、いまやすでにひとつの既得権益、ないしは勝ち組の太平楽。日々生き抜くことこそが正義の常民、われらその他おおぜいにとっては理不尽な抑圧の源にも。
 名無しこそが正義、とは言わぬ。たかだか何十万、何百万、いや、何千万何億分の一、のごまめの歯ぎしり。どこに聞こえようがその価値は限りなくゼロに等しい。単なる床屋政談、井戸端会議の垂れ流し。果たしてそれがどれほどのものか、他でもない、おのれが一番よく知っている。

 ただし、そんなごまめの歯ぎしりが次から次へと積み重なり、互いに無手勝流につながりあいながらみるみる層をなしてゆく、そんな「世界」を眼のあたりにできるからくりが、たとえば十年前では到底想像できなかったくらいにまで普及してしまっている現在、その歯ぎしりにもまた異なる文脈、新たな読みが発動されることもあるし、時には思わぬ共感、予期せぬ効果、それこそ想定外の現実を不用意に引き出すこともある。IT社会、インターネット環境の伸長は、確かにそんな新たな時代に見合った民主主義の生態系をうっかりと整えてしまったところがあるらしい。

 しかし、どこまでいっても名無しは名無し、勘違いは禁物。どこの馬の骨ともわからぬ素性卑しい雑兵がこの新たな戦さ場のどさくさに折れ刀拾い、何かのはずみで白髪首のひとつもとってあっぱれ仕官で苗字帯刀、ひとかどの実名持ちになろうなどとは、決して考えてはいけない。そのような功名心は必ず、また名無しの側から報いを受ける。まして、そんな名無しの分際で、ネットの言論だの新たな論壇などとさえずりまわるのもただの俗物、ひたすらみっともない。どこまでも名無しの群れとして群れの中、群れとしての力をなけなしの頼りに、ただ無駄につぶやき、駄話を続けるばかり。

 そんな名無しを、かつてこの国は「草莽」と称していた。そう、電網の草莽、それこそがIT社会にたゆとうこの無数のごまめ共のささやかな矜持、名無しの品格。


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 デジタルディバイド、とやらが言われてもう久しい。要は、パソコンや携帯に代表される新しい情報機器を使いこなせる層とそうでない層との間に、貧富や学歴、職業などとはまた別の、新しいディバイド=いまどきのもの言いをあてはめればまさに「格差」、が生じている、という趣旨だったのだが、さて、ならばそのような事態が現実にどのような影響を与えているのか。カタカナ表記を振り回すのはことの本質をごまかすため、というのが明治維新このかた、わがニッポンの近代化の相場。要は、キカイをいじれないと接することのできない情報が、現実がすでにあるのだぞ、と心弱い者を脅すのが眼目らしい。

 ひとつ明らかになったのは、新聞を始めとして雑誌から出版一般、テレビやラジオなどまで含めたいわゆるマスコミが、これまでのように大所高所の安全地帯から国民に向かって能書きを垂れ、蒙を啓けるような者ではなくなった、ということ。言葉を換えれば、棚に上がった大文字の知識人、インテリの最終的な没落。そんな没落しつつある彼らの不安と焦燥のはけ口が、新たに勃興してきたかに見えるネット住民に向けられるのは、かつてのファシズムと全く同じ。このところ、わけ知り顔でネットがらみの特集沙汰が新聞や雑誌で眼につくようになったのも、そしてその中身が多くの場合、当の名無したちからはほぼ笑殺されるような代物なのもまた、この二一世紀のニッポンの現実。嗚呼、こういうところで歴史はうっかりと繰り返していたり。

ワーキングプアNHK特集で取材された秋田県仙北町出身の友人と今日、昼飯を食いました」
http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20060801/1154425850


これは、ネタじゃないです。
ワーキングプアNHK特集で取材された秋田県仙北町出身の友人と今日、昼飯を食いました。明後日、あのテレビで映っていた田舎に帰省するそうです。
あの特集では、見慣れた近所の風景がたくさん写されたそうです。
また、知り合いがたくさんテレビに映ったそうです。


で、典型的ワーキングプアとして紹介された田舎でテイラーをやってるおじいちゃんですが、もともと、田舎の人は、あんな店では、あまりお金を使わないそうです。


また、米の値段が安くなって、生活が苦しくなった農家については、「そんなことは、ずいぶん昔から、経験的に分かっており、苦しくなっていく状況に対して、なんの手も打たないまま、苦しい苦しい言っているだけのマヌケではない。(…)より高く売れる有機農業に切り替えたり、新しい作物、新しい売り方を工夫して切り抜けてきている農家も多い。いくら田舎者だからって、そういうことにまで知恵が回らないわけもなければ、何の創意工夫もしないほど愚かな人なんていない。それどころか、田舎者は、やたらと寄り集まって、寄ると触ると情報交換して、どこか一つの農家が上手いことやるやり方を見つけると、それがあっという間に、噂で広まって、次々に同じやり方をする農家が増えていく。」という論調でした。(←Web2.0がどうの集合知がどうのというが、田舎は昔から2.0なんじゃないか?とか思った)


田舎では、野菜は、庭に植わってるやつを引っこ抜いてくるか、あるいは、雪の下に埋めておいた野菜を掘り出してくるか、でかい樽につけておいた野菜や魚(はたはたとか)をとってきて、そのまま食事を作る。東京の人間が、子供を保育園に預けるところを、じいちゃん、ばあちゃんが面倒を見てくれる。また、近所との物々交換的なやりとりが行われていて、ちょっとした家や車の修理を格安でやってもらう変わりに、とれた野菜をとどけたり、力仕事を手伝ったりしあうのだそうだ。


現金が少ないから貧乏だ、というのは、現金がないと生活が苦しくなる東京者の発想に過ぎないという話だ。実際に暮らしてみれば分かるが、田舎暮らしが性に合っている人間は、東京よりずっと現金収入の少ない田舎の方が、はるかに豊かに快適に暮らせるという。実際、東京で暮らしていた彼の妹は、あの番組で写されていた田舎に帰って、結婚する予定だという。現実に、東京の生活を知りながら、田舎の生活の方が、豊かで快適だと判断し、それを選ぶ人間がいるのだ。


でも、なぜか自殺者が多いらしい。濃密な人間関係は、うまくいっているときは最高だけど、もつれると地獄だからか?その辺をつっこむのを忘れたオイラは、つっこんでおけばよかったとちょっと後悔したのだけれども。


いずれにしても、統計と動画編集を用いて、「田舎では、構造的な問題で、働く貧困層が広がっている」「それらワーキングプアの人たちは、米の価格暴落などの構造的問題に対し、なすすべもなく転落していっている」というストーリーを作り出したNHK特集に疑問符がつく話である。

 observer is observed.見る者は同時に見られる者でもある、という人と社会についての永遠の真実。仕事としてひとまずうまくまとめたはずのNHKの番組が、名無しの側から即座にこのような批評を食らい、そしてまたそれを名無したちがみるみる参照しあって認識を共有してゆく。取材に来た記者が、レポーターが、女子アナが、どういう身なり、どういう態度だったかに始まり、そこでのやりとりと実際にリリースされた記事なり番組なりとの間にどれだけ違いがあったか、などなど、これまでなら本来舞台裏としてうまく隠されてきた過程がその名無したちによっていまやうっかりと同じ土俵にあげられてしまう。マスコミの取材の過程そのものが間髪入れずに取材の対象になってしまう時代。相互性とはまさにこういうこと。あるいは、棚に上がったままの横着な自意識には情け無用にツッコミが入る時代、とも。特権的な「報道」の座にあぐらをかいたまま自意識ならば、闇討ち、ないしは便衣兵待ち伏せを食らったような感覚を持つだろう。王様はすでに真っ裸だ。

 これは本当にディバイド=「格差」なのだろうか。むしろ逆、デジタル民主主義またはアナーキズムとでも言うべき現実もはらんでいるのではないか。

 もちろん、ネットにアクセスできる環境にない者はその直接の恩恵には蒙れない。その限りで確かに「格差」ではある。しかし同時に、そういう環境の中で仕事せざるを得ないマスコミの側がその身ぷりや取材行為に否応なしに配慮し、自省せざるを得なくなっている、そのことの効果はこれまで通り一方的に情報の「消費者」だったそのディバイドされた側でも、利益は受け取っているとも言える。

マスコミがおためごかしに連呼する「格差社会」も、名無したちの批評眼の前でそのうすっぺらな内実がさまざまな角度から暴露されてゆく。誰もが共有できる小さなことば、個別具体のもの言いで。そして、ほんとうの意味での「格差」の現実が、名無したちの視線の向こう側にゆっくりと輪郭をあらわしてくる。

格差の多少が問題なのではなく 格差の固定化が問題なのだということだ。
勉強すれば金持ちになれるというのは幻想
この日本において何よりも大切なのは、人脈 つまり血縁なんだよ。
実は学歴じゃないんだよ。 それが問題

格差があるのがよいとか悪いとかじゃなくてバランスの問題だろ
ルールの中で何してもよい弱肉強食はもたないし お金を政府が恣意的に配分して平等なんてのがもつはずもないのだから
格差がよいかわるいかしかいわない変な議論はやめろよ

いや、実際、日本は先進国の中で最も格差がない国だよ。
発展途上国は言うに及ばず。 諸外国に行ったことある? 夜中にコンビニの前に集まってくる連中の所得を考えたことある?

詳しい事は知らんがいくらなんでもそれはねーよ
野党の世界一の格差国家と同じくらい滑稽な主張

まあぶっちゃけ格差格差って連呼したほうが人の安っぽい嫉妬心に火をつけられるからなw 今の日本、物乞いするガキどれだけいる? 真っ先に切り捨てられるはずの子供が一番いい思いしてるのが日本。日本の富裕層の生活なんか中国の特権階級の足元にも及ばんし。

あれだけサービス残業や長時間残業して毎日カイゼンしまくって限界までコストダウンして 休みもプライベートもロクになく働きづめの結果が国の没落か…

     /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;Yヽ、
     /;;;;;;┌--‐""""ヾ,ヽ
   /:::::;;;ソ        ヾ;〉
   〈;;;;;;;;;l  ___ __i|
  /⌒ヽリ─| -・=-H -・=-|!    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  | (     `ー─' |ー─'|  <  格差があるにしても、凍死や餓死は見たことがない
  ヽ,,  ヽ   . ,、__)   ノ!     \_______________
     |      ノ   ヽ  |
    ∧     トェェェィ  ./
  /\ヽ         /
/ \ ヽ\ ヽ____,ノヽ
    奥田碩(1932〜20??)

凍える夜 都会の無援 愛犬にみとられホームレス凍死
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/osaka/kikaku/021/11.htm
ゲーセンのすき間で32歳ホームレスが座ったまま凍死
http://news20.2ch.net/test/read.cgi/news/1149453352/
支えなく ホームレス凍死
http://megalodon.jp/fish.php?url=http://mytown.asahi.com/fukui/news.php%3fk_id%3d19000000602180003
ホームレスの女性、若者数人に殴り殺される 愛知
http://news20.2ch.net/test/read.cgi/news/1164188868/


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 天下分け目、と例によってマスコミが総力で煽りまくる参院選与野党逆転は自明のこと、政権交代までもが目前に、と言わんばかりの大攻勢だが、本稿締め切りの段階ではまだ投票前で結果はわからぬ。しかし、ネットにたむろする名無しの気分は前回の郵政解散総選挙以来、世論調査だの投票行動予測だのといった予想沙汰よりも、静かに眺めていればよほど穏当な結果をあらかじめ見当づけてくれたりする。

 名無したちの見識が積み重なった果ての「民意」が果たしてどれほどのものか、本誌発売の頃にはその評価もまた、明らかになっているはずだ。

一昨年の郵政解散総選挙でも野党に投票する割合が与党を大幅に上回っている
ネット調査をたくさん見たんですがこれはどういう事だったんでしょうか?

2chを見る限り、確かに、反自民の声が増えている気がするな。
反中・反韓などの外交よりも、職業や生活を重視する書き込みが増えている。
抽象論や理念、感情にかまけているより、目の前の現実に取り組む方が、人の生き方としては好ましく健全であるから、現在の傾向は大変結構な事だと言える。 ただし、その事が即ち反自民になるという訳でもないだろう。
自民は議席を減らすだろうが、大敗までは行かないのではないかな。

消極自民支持だが
衆院で大勝してるから、バランス考えてトータルで参院伯仲がいい
経済政策じゃ支持できない
しかしもっと大事な国家の安全や主権の問題では支持せざるを得ない

自民に入れたら格差社会になるし
民主に入れたら売国社会になるし
社会共産に入れたら中国か韓国になるし
もうアメリカの51番目の州にしてもらって方がよくね?

ぁたしゎ時給1050円のハケンの品格だけど
今回の選挙も自民党に投票するゎ
売国奴自治労の犬になるのゎまっぴらごめんょ!

夫婦関係に例えるなら…
小泉さんが壊すのは夫婦生活での常識
小沢さんが壊すのは夫婦関係そのもの
そんな印象。

みんな色々言ってるけど、もう参院選の結果は見えてるよ。
野党がギリギリ勝って、小沢党首留任。 小沢は「野党の過半数」と言っているからね。 中でも民主党は得票を伸ばしたので、小沢執行部が信任されたことに。
小沢体制はあと3年は安泰となる。前原や枝野などの出番は、あと3年はなくなる。
延々と小沢体制が続くことになる。 これは既成事実。動かしようがない。

なんだかんだ言っても民主に票は絶対いれない。 絶対。
軽く今回民主に入れてみようと思ってるやつ。
そんなことすると国が滅ぶよ。マジで。

安倍惨敗⇒
衆議院があるので自民主体の政治は変わらず、野党の牛歩戦術が活気を増すだけ。
麻生、谷垣(笑)、福田(笑)の総理争いが起こる可能性。
民主惨敗⇒
小沢引退、若手民主議員の発言力が高まり、期待の持てる政党に?
とにかくこの追い風で負ければ、3バカの政治生命は絶たれる。
お灸は、良く利く相手に据えた方がいいと思いませんか?

ここまで不祥事が続いても、自民以外に入れるとこがないのが事実

*1:『正論』連載「名無しの品格」第1回原稿。かつて『諸君!』連載「麹町電網測候所」が、掲載誌なくなっちまったもんで、鞍替え引越しした企画。インターネット環境以降のweb世論の風向きを定点観測的に測候しながら、考察してみせるという趣向は変わっていないけれども、担当編集者・記者とのかねあいで、素材やお題によって微妙な匙加減や味つけの違いなどがなくもないあたり、それなりに。