1996-01-01から1年間の記事一覧

96年下半期のニュースから

みんなして馬鹿騒ぎの真っ最中には気づかないことでも、いざ宴果てた後、酔いざめの頃になって初めてじわりじわりと身にしみてくる。頭抱え、身ふたつ折れになるようなこっぱずかしい行跡のあれこれがビデオテープを回すように脳裏によみがえる。社会まるご…

書評・佐野真一『旅する巨人』(文芸春秋)

● 宮本常一とその仕事について語らねばならない時、どこか口ごもってしまう自分がいる。 同じ民俗学に携わる人間でも、柳田国男について語ろうとする時にこのような躊躇はないし、南方熊楠や折口信夫についてもまず同じだ。けれども、宮本常一にだけはどこか…

週刊読書人

江角マキコ、の内実

www.youtube.com 江角マキコってのは、えーと、ほれ、何のコマーシャルだったか全く覚えてないけれども、パッと気っ風良く脱いだシャツの下、裸の背中の筋肉のものすごい、あの女優さんでしょ? あれって見えそうで見えない胸に注目するのが世間並みの男なの…

640万円のテディ・ベア落札

ロンドン発共同電によれば、「世界中を最も多く旅行して回ったテディ・ベア」をある日本人が六四〇万円で落札したという。テディ・ベアというのは、要するに熊のぬいぐるみですな。まあ、どんなに重箱の隅をつつき倒すような分野にでもそれなりのコレクター…

「歴史教科書問題」の、ある本質

教科書なんてどんな妙なものでも教え方ひとつ、「これは間違ってますよ」という反面教師だって教科書の役割だとさえ思う。それに、今に限らずこれまでだって何も教科書だけで人々の「歴史」意識が形成されてきたわけでもない。時代劇や小説や、その他実にさ…

書評・湯浅 学『人情山脈の逆襲』(BIプレス)

人情山脈の逆襲作者:湯浅 学ブルースインターアクションズAmazon ベースはひとまず音楽。ロックからブルースとR&Bへと黒くなり、同時にインディーズ系へも淫していった経緯が推測される。これにお笑いと芸能とプロスポーツ。さらにマンガや映画やアートや…

ミュージックマガジン

「軍事」を語るもの言い、について

「軍事」について語るときに、明らかにこの人たちこういう問題を語るのが“好き”なんだな、とわかるたたずまいの評論家や学者がいる。たとえば、湾岸戦争当時、よくテレビに出演していた江畑謙介氏などは、ひと頃ずいぶんコラムのネタにされたものだ。 もちろ…

女性騎手、の現在

「いじめで強制退学させられた」という中央競馬の競馬学校の元女生徒の訴えが棄却された。彼女は競馬学校騎手課程の女性第一期生のひとり。訴えの内容を見ると「いじめ」というよりむしろ「セクハラ」なのだが、事実とは別に、彼女がそう訴えたくなる雰囲気…

『猿岩石日記』の読み方/読まれ方

『猿岩石日記』が売れている。猿岩石日記〈Part1〉極限のアジア編―ユーラシア大陸横断ヒッチハイク作者:猿岩石日本テレビ放送網Amazon猿岩石日記〈PART2〉怒涛のヨーロッパ編―ユーラシア大陸横断ヒッチハイク作者:猿岩石日本テレビ放送網Amazon猿岩石裏日記―…

「エヴァ」というできごと

『新世紀エヴァンゲリオン』というアニメがあります。 一昨年秋から昨年にかけてテレビ東京系列で放映され、後半、物語の異様なまでの混乱も含めて爆発的な人気を呼びました。その後、ビデオやレーザーディスクになったものも驚異的な売り上げを示し、来春に…

毎日新聞

猿岩石の正義

なんてったって猿岩石問題である。ユーラシア大陸横断ヒッチハイクと言うけれど、タイとミャンマーの間を飛行機に乗っていた、これは「やらせ」だ、と新聞がやった。 「で、それがどうしたの?」というのが大方の反応だろう。少なくとも、猿岩石のあの悪戦苦…

「消費者」の横暴

武豊と佐野量子の結婚式が大々的に報道された。騎手のプライベートがここまで大きなニュースになっちまうってのも、やっぱりそういう時代なんだな、と改めて思う。 競馬も今やテレビ中継が多くなり、そうなるとレースに勝つのはいいけど、そのたびに眼に星散…

オウム特別指名手配犯の「場所」

いやはや、びっくりした。特別手配されていたオウムの北村、八木沢両容疑者が一年半潜伏していたというマンションは、実は小生の実家のすぐ近所であります。なんだあんなところにいやがったのか。 と同時に、どんよりと実にやりきれない気持ちになった。今ど…

マンガ評・唐沢なをき『電脳なをさん』(アスペクト)

唐沢なをきの新刊『電脳なをさん』(アスペクト 一六〇〇円)がいい。 もとはコンピュータ雑誌『EYE−COM』(アスキー)に連載されていた作品だが、担当編集者による巻末の解説(よくまとまっている)に「20年前の四月馬鹿に、高校の同級生ふたりが作…

西日本新聞

「有名人」ということ

「有名になりたい」と言う人が世間には少なくない。「だって、有名になればおカネが儲かるでしょ」とのたまう。おカネになるような有名がいい、ということらしい。でも、有名になって本当に儲かるのは本人ではなくて、そいつを有名にさせその状態を維持して…

CD市場、退潮の気配

SWEET 19 BLUESアーティスト:安室奈美恵エイベックストラックスAmazon この不景気な時代にわが世の春を謳歌しているかに思われている音楽CDの売り上げだが、どうやらこれがひと頃に比べて落ち込み始めたという噂が飛び交うようになっている。 「アムラー」…

ガンと闘う、ということ

ベストセラー『患者よ、がんと闘うな』の著者、近藤誠氏に対してガン治療学会の会長が全面対決を申し出たそうであります。先の本誌でも近藤氏がつるしあげを食ったという学会の様子が報道されていた。にぎやかなこってす。 近藤氏の主張はごく大ざっぱに言っ…

書評・C・ギアーツ/森泉弘治・訳『文化の読み方/書き方』(岩波書店)

大学院生の頃、ギアーツを原書で読めたら一人前、とよく言われた。ひとつのセンテンスが異様に長い。文意がとりにくい。あいつは『ヌガラ』(ギアーツの大著)を三日で読んだ、といったいかにも八〇年代的な秀才伝説の培養基になったりしたのもそのためだ。…

東京新聞

「都市」という嘘

*1 ● 東京都の出している広告がどうにもいたたまれないものになって久しい。新聞や雑誌といった紙の媒体はもちろんのこと、その他の媒体でもテレビであれラジオであれ、印象は基本的に同じだ。エイズ防止キャンペーンで文化人やタレントたちを並べて親しさを…

「ベストセラー」をめぐる環境の様変わり

いわゆるベストセラーが作り出されてゆく構造がこれまでと大きく変わり始めているらしいことは、出版関係者ならずともうすうす気づき始めている。『脳内革命』であれ『ソフィーの選択』であれ、あるいは『神々の指紋』であれ、最近数十万部から百万部以上と …

松本智津夫の現在

メディアの舞台での「麻原彰晃」は、いつの間にか「松本智津夫」と呼ばれることになっているようであります。大声を出して興奮したり独語したりで保護房に移されたそうだけれども、今頃になって拘禁反応が出てきたんだろうか、それとも大方の人がうすうす疑…

衆院選、史上最低投票率から学ぶこと

さて、衆院選挙は、どうやら史上最低の投票率で終わったそうであります。 まあ、仕方ないよな、と思う。当たり前だわ、とさえ言いたくなる。そんな投票しろったってどこにどう投票すりゃいいんだよ、って感じなのだ。気取った名前やけったいなインテリアで客…

時代小説と歴史の関係について

*1● 歴史小説、時代小説と呼ばれるジャンルの表現が国民の大部分にとっての「歴史」意識を作り上げる上でどれだけとんでもない力を発揮したか。奇妙な話ですが、そのことについて「歴史」の専門家であるはずの歴史学者はもちろんよく理解していないし、と言…

援助交際の向う側

少し前、「コギャル二人、ホストクラブ借金返済のため売春300回」というニュースに対して、そういういかにも「ああ、いまどきの十代の話ね」という印象を喚起するニュースって果たしてどこまで本当なの? という疑問を呈したところ、何人かの読者から「よ…

飯野賢治さん 後編 

今、最も注目されているゲームソフト会社ワープの若社長、飯野賢次さんであります。意外にもコンピューターよりも音楽、それもビートルズからYMOにハマった妙な小学生だった生い立ちの続きから、はいどうぞ。 飯野 最初はシンセサイザー買おうと思って御…