競馬

「生きもの」を扱う仕事、のこと

● 「生きもの」を扱う仕事というのが、世の中にはあります。というか、あたりまえにありました、少し前まで、ある時期までは。 「生きもの」というと、身近なところだと犬や猫、昨今は兎やハムスターなども含めた、いわゆるペットとくくられる小さな動物を、人…

「上げ馬神事はかわいそう」一辺倒に疑問 

*1 元競走馬に約2メートルの土壁を駆け上がらせる三重県桑名市の「上げ馬神事」について、動物愛護法違反の疑いがあるとして6月、県警に刑事告発された。 5月の神事で1頭の馬が脚を骨折し、その後殺処分とされたことなどからSNS上で批判が噴出。奉納先の多度…

「上げ馬神事」の事故について・雑感

*1● 馬を2mほどの高さの、ほとんど「壁」に等しいところ駆け上がらせる。というよりも、人間たちがまわりで寄ってたかって囃し立て、無理にでも押し上げるのが見せ場になっているという神事が、警察に告発されたという件について、言っておかねばならないこと…

ばんえい十勝「公社化」騒動・草稿

*1 *2 去る1月27日、北海道は帯広の、ばんえい十勝・帯広競馬場で、ばんえい十勝調教師会・騎手会とばんえい競馬馬主協会が、帯広市長に対して「要望書」を手渡しました。 内容は、「ばんえい競馬の公社化に反対する」というもの。これだけでは何のことか…

「放馬」について

*1 *2 *3 ・地方競馬だけで事故が続いてしまっていることと、その理由についてお考えをいただければと思います。地方競馬全国協会の方は、「『河川敷のような場所』と『改善できない経営状況』が理由では」ということをおっしゃっていましたが… まず、確認し…

われらが的場文男・頌

*1 ● 「尊い」――そうとしか言いようがない。 今に始まったこっちゃない、ずいぶん前からそうだった。赤地に星散らしのあの勝負服は、われら地方競馬巡礼衆にとっては、ただひたすら「尊い」のだ。 的場文男、言わずと知れた大井のカミサマ。南関東の、そして地方…

青天井で送る朝

● 相変わらずの蒸し暑い朝だった。 背丈ほども伸び上がった雑草たちが、むせかえるような夏の匂いを撒き散らしていた。足許の土は昨日の激しい夕立の名残か、まだたっぷりと湿気を含んでいて、踏み込むたびに意外に重く、長靴に泥がまつわりついた。それでも…

 有馬記念 2016年

● 有馬記念は、スタンド右斜めうしろからの夕陽と、黄色く枯れた芝の色だ。今みたいな洋芝の、管理万全行き届いた馬場でなく、11月にゃもう見事に枯れちまう昔の芝馬場に、釣瓶落としの暮れの陽がさしている。 スタートはほぼ正面からの迎え陽に始まり四角あ…

ある競馬ウマのこと

● ある名もない競走馬の話、である。 ソリダリティ(アア)牝 12歳 鹿毛 2002年4月12日生まれ。 父 レオグリングリン、母 オリビアン、母の父 ファストセンプウ。 戦績125戦30勝。2着24回3着14回4着7回5着8回着外42回。連対率43.2%。 所属競馬場……福山…

もしテラヤマならば、のダービー

「ダービーで乗り替わった馬は勝てない」 かつて、アローエクスプレスがそうだったように。 若かった柴田政人が当時全盛の加賀に乗り替わられた悔しさを、テラヤマはとらえていた。大衆化の方向に大きく舵を切り始めていた競馬に「おはなし」を見い出す、し…

政と桃ちゃん、寺山のつむいだ「競馬」

スシ屋の政、と、トルコの桃ちゃん。この名前にさて、そこのあなた、聞き覚えがあるだろうか。耳にした瞬間、ああ、と思わず口もとがかるくほころんじまうような感覚が、まだ身の裡に残っているだろうか。 別に映画やドラマってわけじゃない。だからどこかの…

勝巳さん、のこと

「前の開催の話を聞きにいったら、馬の特徴からレースぶりまですべて仔細に覚えてて話してくれた。弁が立つわけじゃないけど、馬に乗ったことがない素人が聞いても、内容が的確に伝わるんだよね。そういう意味じゃ〈競馬アタマ〉が抜群にいいんだよ」 「ライ…

忘れられたもうひとつの馬、そして競馬――坑内馬、アラブ競馬、他

● 坑道を石炭はこびつつおもよせて いななき交わすよごれ馬はも 死にてより時はすぐれど馬小屋に なほ棄てられしよごれ馬はも 死馬のあたまおしさげ小台車に 馬蹄ははこぶつば吐きつつ *1 明治末から大正初期にかけて、雑誌『アララギ』に投稿された山口好と…

solidarity の日

元荒尾の宮平騎手と、ソリダリティ(´;ω;`) http://keiba-union-news.blogspot.com/ 10歳牝馬「ソリダリティ」 アラブ強豪福山へ 全国で現役6頭 廃止の荒尾から http://blog.livedoor.jp/keibapeeping-arao/archives/65727367.html 昨年12月23日でレー…

ルドルフにサッカーボーイも……

みんなご高齢ではありますが、ニッポン競馬がいちばん熱かった時代の馬たちが少しずつ世を去ってゆく時代、なんだなあ、と。 以下、webからの拾いもの、ですが。 G1勝ち馬 現在の最高年齢(生存馬対象) フェブラリーS:シンコウウィンディ(97) 1993年生まれ(1…

最後のアラブ現役馬たち

春先あたりまでは、まだもう少しいたと思うんですが…… ここにきて退厩したのが増えたようです(ノД`)・゜・。 ■荒尾4頭 イマリオーエンス 牡12歳 ヒットオーエンス×マルカンピーチ 31勝 ファイナルレディー 牝9歳 ニホンカイユーノス×ゴウドウトップラン 13…

荒尾「廃止」に「三セク債」の秘策?

*1本年度限りで約13億6千万円の累積赤字を抱える荒尾競馬(熊本県荒尾市)の廃止が決まった。清算総額は建物の撤去や競馬関係者への見舞金などを含め、最大40億円とされる。県とともに競馬組合を組織し、荒尾競馬を管理・運営する同市の負担は大きい。…

荒尾競馬「廃止」表明

*1 荒尾競馬組合管理者の前畑淳治荒尾市長は5日、累積赤字13億6千万円を抱える荒尾競馬を本年度限りで廃止すると正式表明した。レース開催は年内で終える方針。清算費用には、2013年度が発行期限の「第三セクター等改革推進債」(三セク債)などを充…

荒尾に「廃止」の動きが

8月、地方競馬にまたか、の戦慄が走った。荒尾競馬廃止の方向に、という新聞報道が地元紙に出たのだ。ニュースは、通信社を介して全国に。例によって、厩舎関係者には事前に知らされてなかったという。 「知らんかったですよ。新聞に出る前の日に厩舎関係者…

年齢62歳。職業、騎手、なお現役――山中利夫

● 7月31日、金沢競馬場第5競走。C3四組1,400?、11頭立て。 11頭の出走馬たちののべ出走回数、1010回。一頭あたり平均出走回数、91.8回。若い4歳馬二頭を除くと、106.8回。つまり、あれだ、かのハルウララ級がずらり並んでいる、そんな競馬だとまずおぼしめ…

日高の風景から(改)

●*1 春先から初夏にかけて、梅雨もなくカラッと乾いた大陸性の気候、その分遠くまで焦点のくっきり合ったかのような風景の中、緑の牧草がじゅうたんのように生えそろった放牧場のあちこちに、近く遠くたたずんで草を食んでいる親子連れのサラブレッド……北海…

日高の風景から

● 春先から初夏にかけて、梅雨もなくカラッと乾いた大陸性の気候、その分遠くまで焦点のくっきり合ったかのような風景の中、緑の牧草がじゅうたんのように生えそろった放牧場のあちこちに、近く遠くたたずんで草を食んでいる親子連れのサラブレッド……北海道…

高知県馬主会の「内紛」

高知競馬と言えば、少し前はハルウララ、今じゃいち早く通年ナイター競馬に移行する英断を下して、真っ先につぶれるだろうと言われながらしぶとく生き残っている競馬場。その高知競馬で前代未聞の騒動が持ち上がっていた。 「実はこの春先からずっともめてた…

笠松には「ハマちゃん」――濱口楠彦がいる

● ツバメが低く、高く、何羽も飛び交いながら舞っていた。馬道の小川に沿ってそよぐ柳の木々には、透き通るような新緑が彩られ、馬たちはというと、いつもと同じ歩みで仕事支度、時に一般道を横切りながら、競馬場へと向かう足どりをゆっくりと運んでゆく。 …

競馬から日本が見える

*1 ●競馬から見る日本 今日は、競馬の話をします。北海道と競馬、特に地元に密着した地方競馬のあり方について、少し理解を深めてもらおうと思っています。 と言っても、あなたがたいまどきの若い人たちは、競馬そのものをもうあまり楽しまなくなっているん…

地方競馬改革・取材メモ

●岐阜県の状況について 笠松競馬存廃検討委員会の最終答申が、先月末に出ました。本文は、「いまのままでは赤字を回復する見込みがないので、廃止を勧告する」というものでしたが、そこに付記がついていて、競馬法改正に従い民間参入の可能性が出てきている…

「競馬法改正」と地方競馬の現在

● はじめに 現在、日本競馬の置かれている状況はきわめて厳しい。 90年代末から顕著になってきた売り上げの長期低落は今なおとどまらないばかりか、2005年から施行されている改正競馬法の実もあげられないまま、相変わらずJRA(日本中央競馬会)の競馬とそれ以…

せめて希望だけは……

もう本当にやめてくれればいいのに――うめくような声が、あちこちであがり始めています。 選挙で民主党が勝ったから、廃止の補償もたくさん出るようになるんじゃないのか、だったら今こそラクになるチャンスでは――そんな思惑が交錯し、また厩務員組合の周辺な…

トップと底辺の関係

「ニッポン競馬」と口にする時、僕のイメージする競馬には必ず地方競馬が含まれています。それに対して、普通のファンは言わずもがな、調教師であれ生産者であれ馬主であれ、いわゆる競馬関係者であっても、日本の競馬と言う時のイメージはほとんどの場合、J…

「たかる」側の器量

「50億」という数字が最近、馬産地を歩くとたまに聞こえてきます。いったいどうやって使うんだよ、という自嘲気味のせりふと共に。 5月の末でしたか、農水省が発表した馬産地再生のために投入される補正予算の総額。三年間で、ということでしたが、馬産地…