ブンガク

「貧しさ」の語られ方について――「サムライの子」をめぐる〈リアル〉の諸相

*1 ――つねにわたしたちの論拠は〈児童文学〉という限定された、しかも複雑怪奇とまでいわれるほどに特殊な分野であって、そこに生起するさまざまの事象は文学一般の概念規定とはくい違うほどに独自の、偏狭な意味内容をもつ曖昧なことばによって表現されるこ…

「残酷物語」の時代・ノート――「鼎談・残酷ということ」から

● 今から59年前、1960年8月発行の雑誌『民話』第18号に、「残酷ということ」という「鼎談」が掲載されています。*1 出席者は岡本太郎、深沢七郎、宮本常一の3人。それぞれ芸術家、作家、そして民俗学者として、その頃それぞれ話題になっていた文化人たちで…

「不良」の共同性について――「隼おきん」を糸口に

*1 「僕はその頃十六であつた。丸く黒く、焼けすぎた食パンの頭みたいな顔をして、臙脂色のジヤケツを着て、ポケットに手を突つこんで、毎日街を歩いてゐた。」*2 「こういう、一体なにが本業だかわからないで、なんとなく喰えている男が、ひところ、浅草の…

政と桃ちゃん、寺山のつむいだ「競馬」

スシ屋の政、と、トルコの桃ちゃん。この名前にさて、そこのあなた、聞き覚えがあるだろうか。耳にした瞬間、ああ、と思わず口もとがかるくほころんじまうような感覚が、まだ身の裡に残っているだろうか。 別に映画やドラマってわけじゃない。だからどこかの…

そのまんま東、の本領

そのまんま東、あっさり宮崎県知事になっちまいました。)) メディアは選挙戦開始当初、どうせ苦戦だろ、という調子でしたが、途中から彼が案外善戦しているのを見て風向きを変え、終盤では好意的な論調になっていました。ああ、こりゃ案外通っちまうかも、と…

永沢光雄、死す

永沢光雄が亡くなりました。 それって誰? という向きには、『AV女優』の著者、とだけ言っておきましょう。いや、言っておきましょう、ったって、正味のハナシがほんとにそれだけ、としか言いようのないようなもの、なんですが。 『AV女優』というのは、…

子猫殺しの板東真砂子

雉も鳴かずば撃たれまい。生まれた子猫を野良猫対策のため自ら始末する、と公言した作家の板東真砂子が袋だたきにあっている。発端はこの夏の日経掲載のコラム。じきにネットで火がつき、よせばいいのにご本人が週刊誌その他で盛んに「反論」などしたものだ…

柳美里という“しるし”

朝鮮人と言えば、柳美里である。とりわけ、なりふり構わず奇形な自意識全開垂れ流し、「弱者」「被害者」カードをふりかざしてわがまま押し通し、はた迷惑も全く省みない、まあ、普通に想定される「朝鮮人」のステレオタイプそのまんま、どこかで仕込んだん…

田口ランディ@万引きババア、に「殺された」ライターがいた――その名は塚原尚人、そいつのことを少し話したい

そもそも、であります。 なんであたしがこの万引きババアにこんなにひっかかてるか、ってえと、まず、どうしてこんなデンパ系キチガイ物書きをここまで右へならえでみんなヨイショしちまってるのか、という、しごく素朴な疑問がひとつ。だって、さすがに最近…

お立ち会い、田口ランディ、という「盗作=万引き」猿を、ご存じか?

*1 田口ランディ、という稀代のバカが一匹、ネットの居留地からうっかりとさまよい出て、ところかまわず臭い糞を垂れ流しては、世間サマに多大なご迷惑をかけております。 そりゃ何者かい、と問われれば、ひとまず「作家」「ルポライター」、と言っておきま…

『新潮45』のトホホ

*1 安野モヨコ『美人画報ハイパー』、テリー・ケイ『白い犬とワルツを』、ジャックウェルチ『わが経営』、以上三冊並べて四ページ、それぞれ半署名の書き手による書評欄ときたら、さて、どこの雑誌でしょ。 正解は、なんと『新潮45』であります。活字文化…

猪瀬直樹というキャラ

*1 ルポだのノンフィクションだのといったジャンルのもの書きが、「全集」や「著作集」だのを出したがるようになったら、ひとつもう寿命は終わり、というのが、かねがねあたしの持論であります。 というのも、ここ十年足らずの間にそういう方面の「全集」「…

無法松との道行き

『無法松の一生』という物語がある。 ある年輩以上の方ならばすぐ思い出していただけるだろう。戦争も末期の昭和十八年、伊丹万作脚本、稲垣浩監督、阪東妻三郎主演で映画化され、国民的な人気を獲得したと言われている。 ただし、もとは小説でそれも百枚ち…

いまどきのブンガク・まえがき

*1 「文学」というのはよくわからない。そもそも、何をもって「文学」と言うのか、未だにちゃんと納得のゆく説明をわかるようにしてもらったことがない。なのに、人と社会と文化の土俵でちょっとマジメにものを考えようとしてゆくと、どこかで必ずこの「文学…

 オンナのためのポルノ・林真理子

林真理子は、オンナのためのポルノである。 出世欲、名声欲、物欲、ついでに性欲全て丸出し。どんな人間でも普通は隠しておくはずのうしろ暗い部分を、あっけらかんと世間の前に放り出す。しかも「オンナ」というキャラに用意周到くるませながら、「全てわか…

「ノンフィクション」という被差別部落

えー、なぜか誰もはっきりとは言わないんですが、おなじもの書き稼業とは言いながら、ルポルタージュとかノンフィクションという分野はブンガクのそのまた下、ほとんど被差別部落みたいなものであります。で、被差別部落であるがゆえに、ブンガク幻想はその…

田中康夫ブンガク、はこの先、生き残れるか?

田中康夫と言えば、東郷隆である。 と言っても何のことやらわからないだろうが、今や歴史小説界隈の新星として評価される東郷隆の初期作品『定吉七番』シリーズの第二作『ロッポンギより愛をこめて』に、ほとんど準主役級の扱いでわれらが康夫ちゃんが登場し…

 片岡義男の本領

昨今、古本屋の軒先、ひと山いくらの文庫本の中に、片岡義男の作品は埋もれている。角川文庫だけでも無慮八十タイトル以上。それだけ出しまくったんだから一冊百円にしかならなくて当たり前、なのだが、それでもその中味は決してひと山いくらの代物ではない。…

野坂昭如・頌

野坂昭如がお手本だった。何が、って、ほれ、とにかくおのれの書きたいようにものを書いて食ってゆく、そんな夢のような世渡りの、だ。 直木賞受賞作で後にアニメにもなった『火垂るの墓』が彼の作品であることを知らない人も、もはや珍しくない。あれって宮…

中上健次はコワい

中上健次はコワい。中上健次はデカい。中上健次は乱暴者である。中上健次は喧嘩が強い。中上健次は田舎者である、中上健次は………って、もういいか。 とにかく、中上健次というヒトは、今のニッポンのブンガクの世界では稀有な「異人」として認識されている。…

なぜ、「家族」がそんなに気になるの?

*1● 「今、家族はどう描かれているか」というのが、ひとまず与えられたお題であります。 もちろん、ここは『海燕』というお座敷でありますからして、これには「今の日本のブンガクにおいて」という限定条件が暗黙のうちについていたりするわけです。 ただ、…

解説 永沢光雄『AV女優』

● 声のいい男である。 低くて太い。心地良い。だが、生身の耳には心地良くても機械にはそうでもないらしく、話を聴いたテープを起こしているとかなり聞き取りにくかったりする。けれども、言葉が言葉として聞き取りにくくなる寸前のところで、じっとその響き…

漫画研究、この難儀な現在

研究であれ批評であれ、この国の漫画について内側からつぶさに言葉にしようとする意志にとって、少なくともここ二十年足らずの経緯を考えた場合、いやでも認識せざる得ない大きな転換がある。それは、現実に流通する漫画の「量」が個人で網羅し、読み尽くせ…

正岡容。早熟の騏驪児の晩年。寄席と芸人の世間に行き暮れる。

あだ名は「ライオン」。といっても、別にアル・パチーノじゃない。 いや、あの『スケアクロウ』のアル・パチーノも、むくつけきメリケン男の地金に塀の中でしんにゅうがかかったジーン・ハックマンを相棒にした珍道中。ライオネルなんて女みてえな名前だ、と…

花田清輝。負けた、ことの剛直。“若さ”は万能ではない。もちろん、今も。

こいつは負けた、と若い男が叫んだ。叫ばれた方の男は年かさだったが、“若さ”のまぶしさにただ目くらまされるほど単細胞でもなかった。その程度には修羅場をくぐった知性だった。だから、血の気の多さを諌めるような、はぐらかすような調子でその“若さ”をい…

無法松の影

夏の小倉に太鼓が響いた。西瓜だろうか、何かやわらかな食べものが舗道に落ちて赤黒いしみになり、有機物が腐ってゆく甘酸っぱい匂いを往来に放っていた。きれいに整えられた山車にはどれも冷たい飲みものを積んだ小さな車がクーラーボックスよろしくくくり…

貘与太平。“思想なき気質”の全力疾走。

「トスキナア」というオペラが上演されている。場所は東京、浅草は観音劇場。時は大正八年の春。遠い、しかし〈いま・ここ〉の僕たちと地続きの昔だ。 逆さに読めば「アナキスト」。スリが役所公認の稼業になり、赤い帽子に青いマント、免許を懐におおっぴら…