1993-01-01から1年間の記事一覧

僕たちの失敗――あるいは、違和感から価値を創る、ということ

何につけもっともらしい顔するのが商売の評論家オヤジたちの言によれば、「最近、若い世代の総保守化が顕著」だそうである。 誰が言い出したのか「新・保守主義」てな看板もそのような場合、便利に使い回される。どだい「保守」だの「革新」だのというもの言…

日本の馬は強いぞ

どうも最近、日本の競走馬の能力がいきなり高くなっている。 何かまるで進化の段階をいきなり無視したようなとんでもない「強さ」を感じる時すらある。たとえばこの秋、ビワハヤヒデの菊花賞。さらに、その半弟ナリタブライアンの朝日杯。いずれも内容が常識…

「大学」という場所のいまどき (往復書簡)④

拝復 同じ駄菓子屋の店先での経験、興味深く読みました。 一次的に立ち上がる欲望としての「欲しい」よりも先に、自分がどんな品物を選択するのか、そしてその選択した自分がどのように見られるのか、といったところに焦点が合ってしまう自意識のありようを…

書籍市場の変貌

*1 今年のベストセラーのリストを眺める。文学方面では『マディソン郡の橋』が断トツのトップ。**万部が売れたのだという。あるいは、話題になった陰毛ヌード写真集も売り上げとしてはかなりの成績を上げているし、マンガ市場もすでに成熟段階に入って安定…

うまく「オヤジ」になってゆくための知恵

*1 高校でも大学でも、あるいは予備校なんかでも一向に構わないんだけど、そういう「学校」を出て働き始めて、数年たってからクラス会でも開いたとするでしょ。そういう時、女の子たちが呆れたような会話を交わすのにこれまで何回も出くわしてる。 彼女たち…

うまや、にて――あるベットウのはなし

● 競馬ブームということもわざわざ言われないくらいに、もはや競馬は暮らしの中で“あたりまえ”のものになってしまった。 電車の中、若い女の子が競馬新聞を読む。あるいは、Jリーグのスタンドにでもたむろしてそうな「若者」たちが、カズやラモスやジーコや…

追悼・芝正夫さん、のこと

前略 [向島の映画館と、そこにまつわる人々の口述の生活史]拝見しました。これはこれでよろしいかと思いますが、わたしが追いたいのは、もっと土地(地域)の変容に密着した細部にわたる網羅的なものでしょう。両者を一本にしようとしても、無理が出てくる…

角川映画について

*1 別に映画とか映像といった分野に携わる人だけじゃなくて、活字であれ何であれ、これから先、本気で何か表現したりいいもの創ったりしようとする人間ならば、この国の七〇年代からこっち、二〇年ばかりの間で角川映画の達成したことと達成できなかったこと…

皇室方面にとっての「事実」とは何か?

● なんてこたぁないやな。 できごと自身は、確かにこれまでならばあまりあり得なかったような脈絡で起こりつつあるらしい。けれども、それらのできごと相互をうまく関係づけ、何か納得いくように説明してゆくための解釈の枠組みってのが、悲しいかな未だ古色…

京都学派の頽廃

有為転変が常態のこの売文業界に、一見細々と、しかし時代の趨勢とは別に必ず一定の政治力を行使し続ける「京都学派」という一派がある。もちろん、歴史的に見ればまた別の意味を持つのだが、しかし昨今ではそのような重々しい思想上の立場を共有したある徒…

真の「郊外文化」は生まれるか。

*1 都市生活者たちが「東京」から逃れて郊外に移り住もうとする動きは、別に今に始まったことではありません。 日本でまず郊外生活を志向したのは、明治後半から大正にかけての知識人たちでした。彼らが「東京」に抱いた疎外感のある部分には、地道に働く農…

全日本アラブ大賞典・讃

*1 神話時代の英雄が暗闇からぬっと姿現わしたような、そんな不思議な雰囲気がアラブの競馬にはある。 正確にはアングロアラブという。つまりサラブレッドとアラブの混血。アラブ血量が25%以上の競走馬をそう呼ぶ。競馬新聞なら血統欄、馬名の頭に小さく…

週刊朝日 NAR広告

民俗学の現状と未来

10月から職場を変わった。 こまごました経緯など他人様は知ったこっちゃないだろうから省く。元いた職場には足かけ五年いたことになるけれども、まわりの方々の思惑はいざ知らず、少なくとも自分としては居心地のいいような環境を作ってきたつもりだったし…

「大学」という場所のいまどき(往復書簡) ③

拝復 お元気そうで何よりです。 いわゆる「おたく」の属性として語られる自閉の問題ですが、自閉それ自体はプラスともマイナスとも言えない、その「自閉」という「手段」=「道具」をフルに活用して達成するべき「目的」が見えない事態こそが問題なのだ、と…

対談・「おたく」と新保守主義の関係について

*1 ● 若い世代が新保守主義へ傾いてる、なんて最近言われているよね。言論という限られたステージにせよ、メディア市場のプロデュースともあいまって佐藤健志や福田和也といった固有名詞も出現し始めて、その「若い世代」の言論のありようとからめて語られる…

本多勝一事件顛末詳細

仕事としてのスジは通した。あとはケンカだ。 毎日新聞の水曜日の夕刊に連載している「大月隆寛の無茶修行」でのインタヴュー原稿をめぐって本多勝一氏との間で起こったいざこざについて、“こちら側”から見た経緯をまず述べる。他人のケンカのいきさつをくど…

橋本治の軽挙妄動

*1 *2 「まちがいをなおすには、ゆきすぎをやらなければならない。ゆきすぎをやらなければ、まちがいはなおせるものではない」と言ったのは誰だったか、もう忘れた。とりあえず、何かとほうもないものを動かそうとする時の心意気として、今でもかなり含蓄の…

「読書」の変貌

*1 履歴書の表、本籍地だの学歴だの、まずは正面切って重要なはずの情報が書き込まれる側を裏返した先、「趣味」という欄に“お約束”で書かれる「読書」という二文字が、気になる。 履歴書そのもののあの様式がいつ頃、どのように作られ、整えられていったの…

差別用語について

*1 まず、確認しておきたいのは、僕は表現に際してどんな用語も無条件に許されるべきだとは思っていない、ということです。 少なくとも、それを活字ないしは活字に準じた記録性を持つメディアに乗せ、社会的に流布してゆくことを考える時、その時空を超えた…

ホンカツとケンカしました

世の中いろんな人がいる。 あたりまえのことではある。あるが、しかし本当にその「いろんな」の内実をあからさまに眼の前にすることというのは、日々の流れの中ではそうそうなかったりもする。 でもさ、本当にいろんな人って、いるよ。どうしてまぁこんな風…

本多勝一に宣戦布告

世が世なら「人民の敵」になるんだろうな、こりゃ。 『毎日新聞』夕刊掲載記事にまつわる本多勝一氏との一件である。一体何が起こったのか、って? 未だご存知ない向きには、経緯のごく概略だけは今のところ『週刊朝日』10月15日号と『週刊宝石』10月21日号…

やはり野に置け……――インターナショナルクイーンジョッキーズシリーズ

*1 *2● 薄紙をほぐして水に溶かしたような、淡い雲がかるく流れていた。 金沢競馬場は河北潟の近く、まわりに何もない埋め立て地のようなところにぽつんと建っている。のんびりした秋の日、まだスタンドは人影もまばらだ。 五回目になる地方競馬の秋の名物、…

Number

テレビの現場

この春から週一回、テレビの現場につきあうことになっている。『図書新聞』紙上では以前酷評されたNHKの「ナイトジャーナル」である。申し訳ない。 半年近くやってみて改めて感じるのは、なんだかんだ言ってもやっぱり自分は“文字の人”でしかないんだな、…

質を支えられない量、量に対応しない質

人が集まる、ということのありようが、どこかでゆっくりと変わり始めている。 数万という単位での人の集まりようは、かつてのデモや焼き打ち騒ぎを別にすれば、この国ではまず野球場だった。あるいはせいぜい競馬場の十数万人、とか。それに比べれば、今人気…

「大学」という場所のいまどき (往復書簡)②

拝復 昨年秋以来、ちょっと油断して不摂生したり、あるいはおのれで気づかぬながら些細な心労ため込んでゆくがごとき日々続けばたちどころに下血する潰瘍性大腸炎の身の上、つくづくボケるまで生きる自信はなく、いや自分に限らずわが世代のかなりの部分は予…

「国家」と「くに」の間

国家が見えにくくなってる、ってことですけど、そんなもんいつの時代だって見えにくかったと思いますよ、ほとんどの人間にとっては。また見えなくても構わないようなものであり続けてきたんだろうし。誰もが「国家」が見えるように思える状態なんてそれこそ…

「89」の延長戦だぜ

もう遠い昔のことのような気がするが、そんな気がしちまっていいわきゃないのでここは萎える気持ちを無理矢理奮い起たせて書く。 マドンナブームというのがあった。あれでバブって当選した連中は今回ほとんど落選したけれども、彼女たちが任期の間一体何をや…

どこかの誰かと“デキる”力を宿せる場

*1 民俗学者という看板を出して世渡りしている以上、これはもう避けられないこととあきらめているが、こいつは絶対にこの「祭り」というやつに何かひとくさり能書きを言えるはずだ、という世間の視線に遭遇することが多い。これが実に困る。 専門的には「民…