1994-10-01から1ヶ月間の記事一覧

かつて「残酷」と名づけられてしまった現実

日本残酷物語1 (平凡社ライブラリー)作者:宮本 常一,山本 周五郎,揖西 高速,山代 巴発売日: 1995/04/12メディア: 文庫*1● 初版発行は昭和三十四年十一月三十日。僕がこの世に生まれてまだ十ヵ月足らずの頃です。定価三百五十円。この値段のボール紙製箱入り…

『日本残酷物語』解説

河童、焼跡闇市を跋扈す

*1 敗戦直後、昭和二十年代というのは、どうも河童の跋扈した時期だったらしい。 まず、美空ひばりの、確かデビュー曲が『河童ブギ』。今ではCDにも収められていると思うが、少し前まではよほどのマニアでもなければ知らない曲だった。もっとも、今聴いて…

大江健三郎「ノーベル賞」の無惨

大江健三郎のノーベル文学賞受賞は、やはり大きなニュースとして報道されました。 仕方のないことなのでしょう。彼の出身地の人たちにまでコメントを求めるのは、昨今のニュース報道の紋切り型ですから別にどうということもありません。その地元の人たちが「…

「センセイ」という幻想

幻想があくまでも関係性の中で立ち上がるものである以上、「センセイ」幻想も単なる一方の勘違いというだけのものでもない。生徒の側がそのような幻想を作動させてゆく事情というのも、ことの半分として充分に存在する。 これまで述べてきたような予備校の場…

バッカじゃねェの、中島みゆき

文春の女性誌『クレア』で、中島みゆきロングインタヴューという企画があった。インタヴュアーをやってくれないか、と言われて乗った。 で、結論から先に言う。トラブった。 野外でのグラビア撮影が六時間あまり、その後インタヴューが三時間、都合十時間ほ…

夕刊紙の古色蒼然

タブロイド版の夕刊紙というのは、つい習慣で買ってしまうものだ。たいていは駅売りのキヨスクかコンビニあたり。宅配もやっているらしいが、わざわざ自宅に配達してもらっているという人の話は寡聞にして知らない。メディアとしてはあくまでも家の外で斜め…

川の記憶

*1 育った土地に小さな川があった。 たいした川じゃない。六甲山系からいく筋も流れ出る小さな流れの、もう少し下流へ行けばいくつか他の流れを集めてちっとは川らしい川になってゆくという、そのまさに「川らしい川」になる前の川だ。 だから、特に意識はし…