2000-01-01から1年間の記事一覧

書評・『三島由紀夫VS.東大全共闘 1969-2000』

三島由紀夫VS東大全共闘: 1969-2000作者:三島 由紀夫藤原書店Amazon*1 存分に笑わせていただきました。いや、ほんとに。 表紙の惹句からしてすごい。「伝説の激論会“三島VS.全共闘”(1969)、そして三島の自決(1970)から三十年。『左右対立』の図式を超えて両…

拝啓、『朝日新聞』記者 高橋純子様

拝啓、『朝日新聞』記者高橋純子様。七月一三日付けの朝刊に載ったあなたの「記者だって気に入られたいけど…」という記事、拝読しました。 「私だって、取材相手に気に入られたい。森首相が言うように『かわいいところがあるじゃないか』と思われたい。だが…

産経新聞 斜断機

大学という文化

近年、大学に入るのは本当にやさしくなっている。少子化が進み、事実上無試験で入学できる大学も珍しくない。さらにはAO入試や一芸入試の試験ならざる試験も公然化して「受験地獄」などとうに死語。高校全入どころか、今や大学全入に近い状態になっている…

追悼・赤松啓介

*1 *2 赤松さんの訃報を耳にして、段ボールに入れてしまってあったまだ元気だった頃の赤松さんから送られたり手渡されたりした手紙やメモ、原稿ともノートともつかない書きつけ……などなど、いずれ手書きの宝物の数々を改めて取り出して眺めている。 『俄』拝…

いまどきのブンガク・まえがき

いまどきの「ブンガク」―瀕死の"純文学"から"やおいノベルズ"まで (別冊宝島 (496))宝島社Amazon*1 「文学」というのはよくわからない。そもそも、何をもって「文学」と言うのか、未だにちゃんと納得のゆく説明をわかるようにしてもらったことがない。なのに…

いまどきのブンガク

オンナのためのポルノ・林真理子

林真理子は、オンナのためのポルノである。 出世欲、名声欲、物欲、ついでに性欲全て丸出し。どんな人間でも普通は隠しておくはずのうしろ暗い部分を、あっけらかんと世間の前に放り出す。しかも「オンナ」というキャラに用意周到くるませながら、「全てわか…

いまどきのブンガク

「ノンフィクション」という被差別部落

えー、なぜか誰もはっきりとは言わないんですが、おなじもの書き稼業とは言いながら、ルポルタージュとかノンフィクションという分野はブンガクのそのまた下、ほとんど被差別部落みたいなものであります。で、被差別部落であるがゆえに、ブンガク幻想はその…

田中康夫ブンガク、はこの先、生き残れるか?

田中康夫と言えば、東郷隆である。 と言っても何のことやらわからないだろうが、今や歴史小説界隈の新星として評価される東郷隆の初期作品『定吉七番』シリーズの第二作『ロッポンギよりから愛をこめて』に、ほとんど準主役級の扱いでわれらが康夫ちゃんが登…

いまどきのブンガク

片岡義男の本領

昨今、古本屋の軒先、ひと山いくらの文庫本の中に、片岡義男の作品は埋もれている。角川文庫だけでも無慮八十タイトル以上。それだけ出しまくったんだから一冊百円にしかならなくて当たり前、なのだが、それでもその中味は決してひと山いくらの代物ではない。…

いまどきのブンガク

野坂昭如・頌

野坂昭如がお手本だった。何が、って、ほれ、とにかくおのれの書きたいようにものを書いて食ってゆく、そんな夢のような世渡りの、だ。 直木賞受賞作で後にアニメにもなった『火垂るの墓』が彼の作品であることを知らない人も、もはや珍しくない。あれって宮…

いまどきのブンガク

中上健次はコワい

中上健次はコワい。中上健次はデカい。中上健次は乱暴者である。中上健次は喧嘩が強い。中上健次は田舎者である、中上健次は………って、もういいか。 とにかく、中上健次というヒトは、今のニッポンのブンガクの世界では稀有な「異人」として認識されている。…

いまどきのブンガク

「あたし」と民主主義の関係について――まえがき代わりに――

あたしの民主主義作者:大月 隆寛毎日新聞社Amazon*1● 歴史とナショナリズムについての本である。 もう少しほどいて言うと、歴史とナショナリズムを今、日本語の版図で考えようとする時の最低限の橋頭堡をできるだけわかりやすく示そうとした本である。 「歴…

あたしの民主主義 まえがき