1997-01-01から1年間の記事一覧

「エスノグラフィー」というもの言いについて――この本を手にとってくれた人への若干の解説

フィールドワークの物語―エスノグラフィーの文章作法作者:ジョン ヴァン=マーネン発売日: 1999/01/01メディア: 単行本*1● エスノグラフィーという言葉は、普通の日本語としてはとてもなじんだものとは言えない。その意味で、この本を読まれる方もまずこのカ…

J.ヴァン=マーネン『フィールドワークの物語』解説

くたばれ! 電脳詐欺

さて、いよいよ最終回であります。ったって、別段変わった趣向もないんすけどね。 NTTが公衆電話を撤去し始めているという話を、最近あちこちで耳にする。 さすがに電話ボックスは後回しのようだけれども、そこらの店先に置かれている公衆電話などは気が…

「おとな」の土俵で「子ども」をやるんだよ

*1 えー、まずは読者の皆様に業務連絡とご挨拶。 ご愛読いただきましたこの「ちょこざいなり!」、次号でお別れだそうであります。いや、なにね、編集長交代に伴う誌面刷新ってこったそうで。ついこの間、頑張れ『サンデー毎日』、なんて呑気なエール送って…

世渡り下手の弁

さて、最終回であります。 昔っから、おまえはほんとに世渡りがまずい、と、よく言われてきた。いらぬ喧嘩をしてみたり、しなくてもいい苦労をしょいこんでみたり、おだてられてその気になって馬鹿を見たり(これがいっちゃん多い)と、なるほどそんなことば…

山一証券、「自主廃業」のシナリオ

山一証券が倒れた。正確には「自主廃業」ってんだそうだけど、要はギブアップ、自力ではもうどうにもなりまへん、と手をあげてバンザイしちまったことには違いない。 とは言え、どうも気に入らねえのが、大蔵省だの日銀だのといった“保護者”連中のあのクソ落…

ニッポンサッカー、の不器用

やっぱり何か言わんといかんのだろうなあ、サッカー。 まず、選手たちにはとにかく、ご苦労さん、と言いたい。それはほんとにそうだ。だって、「ドーハの悲劇」だの何だのとどこかてめえたちの知らないところで“おはなし”が勝手に作り上げられていって、そこ…

スジが通らないこと、と対処の仕方

スジが通らないこと、というのは世の中いくらでもある。 スジだけでも回ってゆかない、だからこそ世間だというのもひとまずもちろんだし、個人的にもそう思う。てめえひとりでスジだスジだと思い込み、それがそのまま世間一般にとってもスジであるべきだと勝…

いいオトナが女子高生について朝まで討論すんなよ

他人の仕事にちゃんと眼を配るというのは、どんな稼業にもあることだと思う。 雑誌などでは吹けば飛ぶよな読まれ方をされがちなコラム系もの書きにしても、不肖大月、実はこれでも同業者としての個人的な好みってのもありやして、たとえば神足祐司のいかにも…

「研究能力」って、なんなの?

群馬大学のセンセイが、同僚から研究能力が低いと罵られたとかで、名誉棄損の裁判を起こしたそうであります。 不肖大月、この春まで大学の教員だった身の上でありますから、この話、ちと笑ってすまされないところがある。今の大学にはこういう脱力するような…

講演こわひ

講演というやつが苦手だ。学生とか若い衆の前ならともかく、年輩の方も混じる世間の人様の前で何か偉そうにくっちゃべっておカネを頂戴する、それだけの資格がそもそもおまえにはあるんかい、てな居心地の悪さがいつもぬぐい難くあってしまう。 けれども、昨…

「個人の自由」の現在

先日、いわゆる麻薬の使用について若い衆を対象にアンケートをとったところ、予想以上に多くの高校生が「そんなものは個人の自由」と答えた、という報道があった。 もちろん、わざわざ記事にされているその文脈というのは、例によって「こんな結果が出るとは…

元気出せ、サンデー毎日!

えー、わが『サンデー毎日』の編集長が新しい方に代わられたそうであります。のみならず、かなり大がかりな人事刷新が行なわれた様子。いや、こちとら屋台引いてる単なる零細出入り業者ですからそれ以上のことはよくわかりませんが、暖簾も格式もある大店(…

オウム真理教「復活」の動きあり?

にわかには信じられないのだが、最近、あのオウム真理教がまたぞろいろいろとうごめき始めているという。 嘘じゃないぞ、やつらインターネット上でホームページまで開設していて、これがまたとんでもない代物でな、といった話をその道に詳しい友人から耳打ち…

ハンバーガー99円、の謎

あの、突然妙なことを言い出して恐縮なんですけど、最近ハンバーガーの値段がちょっとにわかに信じられないような価格になってません? 具体的にはマクドナルドなのだが、でも、あの「99円」って値段は一体何だ? 自動販売機の缶コーヒーでも一本110円…

異なる水準の言葉の連携、そして、社会・歴史像の転換

■「情報環境」という問いが今、必要な理由 くだらないこと、ささやかなこと、とるにたらないことがただそのようなものとして充満している「日常」を、構築的にではなく記述的にとらえる態度が、果たしてどのようにこの島国に棲みついた人々の意識の歴史の上…

戦争の気配、ということ

最近、オウム真理教がまたぞろいろんな活動をやらかしているという話があちこちで出始めている。 インターネット上でホームページを開設していて、これがまたとんでもない代物だというのはその道に詳しい連中から聞かされたりしているけれども、それだけでは…

橋本改造内閣のこと

俺、もうやだよ。仕事しねえよ。機嫌悪いんだよ、今。 ロッキード事件で有罪判決を食らっていた佐藤孝行氏が、今回の内閣改造でめでたくご入閣ときたもんだ。 あのさ、世の中やっていいことと悪いことってあると思うんだよね。しかも、いつも言ってるように…

メディア官僚の自意識

メディアの舞台の上には、妙なことがいっぱいある。 たとえば、官僚は不当にいい目をしている、大企業が優遇されている、ということはよく報道される。確かにそうなんだろう。でも、そういう報道をしている彼らメディアの現場で働く者たちの“いい目”は決して…

マルゼンスキー、が死んだ

マルゼンスキーが死んだ。心臓マヒだったそうだ。二六歳。馬としては長生きの方だ。 このマルゼンスキー、七〇年代始めに生きた馬の輸入が自由化された後、おっかさんの腹に入ってやってきた「持ち込み」の「外車」だった。今の中央競馬の基準だとこれは「マ…

うっかりと“うた”や“はなし”に同調してしまう身体――解説・朝倉喬司『凝視録』

● 手もとに一枚のLPレコードがある。 タイトルは『東京殴り込みライヴ/河内音頭三音会オールスターズ』。まるで屋台のエスニック料理のような河村要介の“濃い”イラストの描かれたジャケットの表に、マジックで走り書きされたサインに曰く――「ドツボ家家元…

朝倉喬司『凝視録』解説

外野席の視線から

難しいことはよう知らんし、わからん。いろいろ事情があるんだと言われれば、そりゃまあ、そうだろうとは思う。第一、そんなこと考えなくても生きてゆけるのが世間ってもの。その意味じゃ、こんなところで何をボヤいてみても外野席での床屋政談に過ぎない。…

付け焼刃の「新オヤジ」を嗤う

ひでえや、こりゃ。ほんっとにひでえ。 このクソ暑い中、あんまりこういう場でこういう怒りをぶちまけても、ほとんどの読者にはどうでもいい話だとは思うが、でも、だからって野放しにしてちゃいかんと思うから、申し訳ない、敢えてこの場で言わせてもらう。…

マンガを評する、ということ

偉そうに「漫画時評」という看板で仕事をさせてもらっているくらいだから、この場では、たとえば「論壇時評」などのように、その時その時のマンガをめぐる状況的な話題を拾い上げてゆくことを求められているのだとは思う。昔、小林秀雄は時評の極意について…

ニッポンに「ヴァーチャル・リアリティ」はあるか

*1 ● 日本に「ヴァーチャル・リアリティ」は成立しているか、というのが編集部からの質問でした。それに対する答えとしては、おそらく成立はしているんでしょう、と答えておくのがひとまずフェアなのでしょう。 われわれは言葉をあやつる動物であり、その限…

「若者」解説屋、の世渡り

どこの雑誌か忘れたけれども、ついこの間までそれこそバリバリ援助交際をやっていたようないまどきの女子高校生たちが卒業後、会社に入ってどうしているか、といった特集をやっていた。 まあ、いずれめまぐるしい速度で日々の仕事がうなりをあげて回っている…

ゐなか、が存在する――月ヶ瀬村 女子中学生行方不明事件

*1 未解決だった奈良県月ヶ瀬村の女子中学生行方不明事件の容疑者が逮捕された。テレビに映し出される人口千人あまりの「いなか」に報道陣が殺到しての大騒ぎを眺めていて、しかしひとつ新鮮だったことがある。村の人たちの報道陣に対する対応がほぼ無防備に…

「無用の長物」の消息について

〈敗戦後という状況の中で輝いた「民俗学」〉 柳田国男が構想した大衆社会の内側からの「歴史」の回復運動について、ご紹介がてらに語ってきました。 一九二〇年代から三〇年代にかけての大衆社会化が進展してゆく時期に運動として立ち上がったそれは、当初…

岩下俊作選集、のこと

もともとそういうタチではあったのだけれども、この春に勤めを辞めてこのかた、パーティーとか宴会、果てはちょっとした呑み会の類に至るまで、とにかくそういう場に顔を出すことがとことんおっくうになってしまっている。 これではいかん、ただでさえ人から…