追悼

西部邁、逝く

*1 西部邁さんが、亡くなりました。 遺書めいた書きものも残して厳冬の多摩川に自ら飛び込むという、自殺に等しい最期だったということですが、そのへんの詳細はとりあえず措いておきます。 「思想家」というもの言いも「文学者」「哲学者」などと同じように…

「挫折」と「敗者」――「北の人」、山口昌男のこと

薄く霜がおりたようなフロントグラスに、はじける朝の陽がまぶしかった。くたびれた商用バン、使い込んだディーゼルエンジン特有のあのゴロゴロ音とすすけた排気ガス臭が、見渡す限り真っ白な冬の雪原に似合っていた。 とりあえず除雪だけされた黒い帯のよう…

追悼・朝倉喬司

命日は12月8日、そう決めた。だって、やっぱり来てたんだもの、朝倉さん。 その日、札幌での「こまどり姉妹、とその時代」というイベントのトークセッション、こまどり姉妹ご本人を前にしての公開聞き書きという趣向で、民俗学者の赤坂憲雄さんと共に朝倉さ…

追悼・平岡正明

いつの頃からか、「趣味? 革命」と言ってのけるようになっていた。「革命」と「趣味」との間の、かつてあり得た距離感を前提にしないと、この男前ぶりはわからない。そして、それを敢えて腕力一発、ぐいっ、と手もとで引き寄せようとする天衣無縫と、読後かすかに…

 追悼 米沢嘉博

ああ、そうか、漫画評論家、か――そう思った。米沢嘉博の訃報に接した時に、まず最初に抱いた感想はそれだった。そんな肩書きになっちゃうんだな。そうなんだ、やっぱり死ぬってのは、そういうことなんだな。 社会的立ち位置としては、コミケの主催者、という…

追悼・永島慎二

おいこら、水島新司じゃないぞ、永島慎二、『ドカベン』じゃなくて『フーテン』の、『漫画家残酷物語』のダンさん、だ、気をつけろい――ネットで訃報を見て間抜けな問い合わせをしてきた若い友人にそんなオヤジ臭い説教かましたのは、こっちもそれだけトシ食…

ナンシー関 追悼 for 毎日新聞

ナンシー関の死について、語ります。 80年代出自の価値相対主義思想の、その最良の部分が死にました。その限りでこれは、思想的事件です。ひと昔前ならば、たとえばサルトルがくたばり、三島が割腹し、中上健次が早世した、いずれそういう大文字の固有名詞…

ナンシー関 追悼 for 産経新聞

「オレ、ナンシーの葬式には出そうな気がするなあ」 そんなことを本人によく言っていました。朝、彼女の担当編集者から訃報を聞かされて、まずそのことを思い出しました。今から6、7年前、某女性月刊誌連載の対談で毎月顔をあわしていた頃のことです。 「…

ナンシー関 追悼 for 週刊朝日

*1 彼女は、単なる「辛口コラムニスト」とか「ユニークなエッセイスト」じゃなかった、ということが、大方のメディアは最後までうまくわからないままだったようですね。広告業界とのつきあいもあったようだから、テレビやFM放送などでも言及されてましたが…

追悼・青木雄二という身体

● 青木雄二について述べる。 最初に会ったのは、雑誌のインタヴューだった。今は亡き『マルコポーロ』の企画。当時すでに『ナニワ金融道』が大ブレイク、あの型破りの絵とおはなしとで、小うるさい能書き並べるマンガ読みはもちろんのこと、使い捨て読みっぱ…

書評&追悼・『いつだって一期一会――テレビカメラマン新沼隆朗』

どういう具合に取り上げようかと、柄にもなく逡巡していた本がある。 400字書評でやるのももったいないし、何より抱き合わせで引き立つその他の本もなかなかない。特集でやらせてもらっている民俗学概論大月流の方で、とも思ったけれども、それだと本自体の…

岡崎京子の「受難」

「そう言えば、岡崎京子どうしちゃったんだろうね」 今どきの東京の女子高生にしてはおとなしめな制服の着こなしをしたふたりが、とある書店のマンガ売場でこんな会話を交わしていた。 九州などではどんな状況なのか知らないけれども、東京の主な大型書店で…

追悼・芝正夫さん、のこと

前略 [向島の映画館と、そこにまつわる人々の口述の生活史]拝見しました。これはこれでよろしいかと思いますが、わたしが追いたいのは、もっと土地(地域)の変容に密着した細部にわたる網羅的なものでしょう。両者を一本にしようとしても、無理が出てくる…