1994-06-01から1ヶ月間の記事一覧

無法松の影

夏の小倉に太鼓が響いた。西瓜だろうか、何かやわらかな食べものが舗道に落ちて赤黒いしみになり、有機物が腐ってゆく甘酸っぱい匂いを往来に放っていた。きれいに整えられた山車にはどれも冷たい飲みものを積んだ小さな車がクーラーボックスよろしくくくり…

貘与太平。“思想なき気質”の全力疾走。

「トスキナア」というオペラが上演されている。場所は東京、浅草は観音劇場。時は大正八年の春。遠い、しかし〈いま・ここ〉の僕たちと地続きの昔だ。 逆さに読めば「アナキスト」。スリが役所公認の稼業になり、赤い帽子に青いマント、免許を懐におおっぴら…

『別冊宝島』創刊200号

宝島社の看板雑誌『別冊宝島』が創刊二〇〇号を迎えました。 それを記念して、これまでのベスト・セレクションが出ています。題して『我らの時代』。表紙の惹句によれば、「二〇〇冊一二万枚の原稿の中から選ばれた、時代を浮き彫りにする傑作ノンフィクショ…