『別冊宝島』創刊200号

 宝島社の看板雑誌『別冊宝島』が創刊二〇〇号を迎えました。

 それを記念して、これまでのベスト・セレクションが出ています。題して『我らの時代』。表紙の惹句によれば、「二〇〇冊一二万枚の原稿の中から選ばれた、時代を浮き彫りにする傑作ノンフィクション三六本一二〇〇枚!」ということで、事実、分量も四九六ページという優に通常号の倍はある分厚いもの。再録されたのは八〇年代半ば以降、ある種のノンフィクション主義が同誌に定着してからの原稿に限られていますが、なんだかんだ言いながら長年おつきあいして読んできた私のような奇特な読者でなくても、その重量感にはやはりちょっとした同時代的感慨があります。思えば、創刊号は一九七六年の『全都市カタログ』。以来十八年あまり、多い時は月に二冊ペースで「たっぷり新書二冊分」のボリュームのものを出し続けてきたバイタリティーはやはり大したもの。その意味で、「我らの時代」という大きくふりかぶったタイトルを選んだ編集部の気分はよくわかります。

 ただ、この宝島社という会社、出版社としての評判はまたさまざまです。前身のJICC出版社の頃から、実際に現場で仕事をしている編集者やライター、カメラマンといった人たちの間では、できればもうあそこでは仕事をしたくない、という声すらよく耳にしたものです。同業他社のやっかみもあるのでしょうが、それにしてもさまざまなトラブル、いざこざ、泥試合の噂が常に絶えないのには、何かそれなりの理由があるのでしょう。そう言えば、バンドブームの頃、若者の音楽シーンを引っ張っていた本誌『宝島』も今ではヘアヌードが売りの雑誌になってますし、去年鳴物入りで創刊されたオピニオン誌『宝島30』もいつの間にか体裁ががらりと変わって失速気味。いやいや、それらの情けない側面も含めて、やはり全ては「我らの時代」ではあるのかも知れないのですが。 (蛍)