1995-08-01から1ヶ月間の記事一覧

野口武徳『沖縄池間島民俗誌』のこと

沖縄池間島民俗誌 (1972年)Amazon 恩師とその本について述べます。 名前は野口武徳。今から一〇年前、僕が大学院最後の年に亡くなりました。享年五二歳。舌癌で下顎切除までした壮絶な死でした。 その野口先生がまだ院生の頃に行なった民俗調査をもとにまと…

毎日グラフ

火野葦平

*1 火野葦平とは、徹頭徹尾「孤独」な作家だった。 別に、厄介な自意識を持てあまして一人勝手に孤独に陥ってゆくような、俗流文学青年の自閉趣味をさして言うのではない。いや、少なくともものを書こうとするような性癖の人間である限り大なり小なりそのよ…

林 芙美子

『放浪記』が好きだ。 たとえば、女給仲間との身の上話に興じる様子を描写したこんな一節。 「こんな処に働いてゐる女達は、初めはどんなに意地悪くコチコチに用心しあってゐても、仲よくなんぞなってくれなくっても、一度何かのはずみで真心を見せ合ふと、…

岡 正雄

*1 民俗学や人類学まわりの学史を浪曲仕立てでやったらどうなるか、ということを、まだ院生の頃、いずれ劣らぬ悪ガキたちの間でやっていた時期がある。 その時気づいたことは、“ふたつのミンゾク学”(民俗学と民族学)が未だ渾然一体としていた戦前には、柳…