「有事」の後方支援

クリントン大統領がやってきた。滞在わずか二日半。せわしないったらない。

国際関係だの何だのって大文字から入るしかないデカい話については、極力「知ったこっちゃねえ」とまず言っておくのが今どきの情報化社会を健康に生きる身だしなみと常々思ってはいるけれども、でもなあ、わざわざこの時期にはるばる海越えてやってきて、韓国から日本、そしてロシアと駆けめぐるってのは、やっぱり朝鮮半島の問題を当座どうするかについての打ち合わせをやっとかないことにはいざという時に動きにくくてしょうがねえ、という思惑があるんだろうと考えてしまうのがごく自然なわけで。

まあ、そのへんについては「安保共同宣言」ってのが出されて、これによって「有事」に米軍と協力する下地ができると言われております。難しいことはよくわからんけど、要は同じ同盟国の「軍隊」同士、もっと融通しようぜ、ってことらしい。近年、自衛隊の組織編成が米軍と共通のものになってきているという話もちらほら聞くし、だったらいっそのこと武器も装備も全部格安高性能のあちら製にしたらどうざんしょ。防衛費が一挙に劇的に少なくなること請け合いですけど。でも、そしたら自衛隊は単なる米軍の東アジア方面現地採用支援部隊になっちまったりして。

「軍隊」は「国家」に属する。だとしたら、自衛隊はどういう「国家」の意志の下に何のために動く「軍隊」なのかというのが問題になる。で、こういうこと言うとすぐにそれは法的政治的な手続きの問題としてだけ語られてしまうんだけど、でも、ことはそれだけじゃすまない。この「何のために」というところは、他でもない現場で身体張って危ない目に合わなければならない自衛官にとってこそ最も重要なはずじゃないの?

人に危ない仕事をさせようってのならそれなりのスジの通し方があるはずだ。果たしてそういう「有事」の協力関係の意味について国民にきっちり理解させて、そうかそういうことならしっかりやってくれ、後のことは引き受けた、という合意をとる努力を今の政治はどれだけしてきているだろうか。どう考えてもしてないよなあ。これはPKOの問題以来そうだけど、でもそこんところがはっきりしないことにはいかに自衛官とて身体の張りようもないだろうに。 全国の自衛官およびその家族、恋人、親戚その他もろもろの関係者の皆様方よ。この際「仕事だから行けと言われりゃそりゃどんなヤバいとこでも行きますけど、でも、それって日本の国民が支えてくれるんでしょうね」とはっきり問いつめようぜ。「アジア・太平洋地域の安定のため」なんてお題目一発で命を張らされることに、あんたたち本当に納得できてるんですかい?