電飾、こわい

年の瀬である。クリスマス、である。年末は、かつては正月を迎える準備のあわただしさの中に感じとったものだったが、今ではそれよりずっとクリスマスの比重が大きくなっている。

そんな中、あれは何と呼ぶのか、マンションの軒先やベランダ、一戸建てならば出窓や庭先、いや、どうかしたら家一軒まるごと、クリスマスのイルミネーションで飾り立てることが横行している。ミレナリオだかルミナリオだか、街ぐるみの電飾人寄せイベントの影響もあるのか。いずれにせよここ数年、今世紀に入ってから目に立つようになってきた年の瀬のニッポン風物詩ではある。

かつて、横丁のしもた屋の軒先にはノキシノブや万年青が飾られていた。長屋住まいでも発泡スチロールのトロ箱や缶詰の空き缶にちょっとした花を植えてみたり、そういう暮らしぶりの中でのささやかな潤いを求める営みもあった。そういう手すさびを惜しまないのも、われら日本人の習い性だった。けれども、昨今のクリスマス向け満艦飾の電飾ホームには、そんな心の習慣とは少し違う、なんというか、うちはこんなにシアワセいっぱいの家庭なんですよ、ということを何が何でも他人に見せたい、見てもらいたい、といった類の、自己顕示系の心理が透けて見えるように感じるのは、例によってあたしの性格が悪いから、なんでしょうな。

そう言えば、あの手の満艦飾、同じ街なかでも下町の文化住宅や商店街ではあまり見かけないし、まして、地方に行けばいくらでもある築数十年の農家などではなおのこと。まずもって似合わないという理由が大きいのだろうが、いずれショートケーキのような新興住宅地か、おしゃれなマンションなどに限定の今様シアワセぶり、だとしたら、この新たな風物詩、ある種「勝ち組」の旗印、ということになるのかも。さて、おたくのまわりには何軒、こういうシアワセがありますか?