受験生諸君、問題です

 「受験によく出る」というのが、朝日新聞のキャッチコピーになっている。去年くらいからか。大学入試の現代国語や小論文などで新聞記事が素材に使われることは確かに多いが、しかし、自らそれを得意げに言いつのるこの態度、あさましいったらない。

 思えば、天声人語を繰り返し読め、とのたまう現代国語の教師はいた。さすがに予備校にはそんなのんきな御仁はいなかったが、高校あたりでは平然といた。あまつさえ、あれを要約しろ、とまで言っていた。あれ以上何をどう要約しろというのだろう。いまもって謎だ。

 大学受験によく出る=権威である、という構図。いまどき大学を無条件で権威の源と思っているあたりが信じられない。第一、権威があるから新聞記事を入試の素材にしているわけではない。恥ずかしながら元は国立大学助教授、入試の出題委員もやったし、何より、他でもないあたし自身が朝日新聞に書いた悪文が入試に使われたこともあるあたしが言うのだから間違いない。そんな新聞が偉そうに権威主義批判、受験地獄糾弾をしたところで、ちゃんちゃらおかしい。まあ、大学合格者ランキングで毎年商売する新聞もあることだし、別に朝日だけでもない、新聞というメディアの生産現場の構造的な問題、だとは思う。思うが、それにしても朝日の、このところのこういうたぐいの身仕舞いの悪さ、勘違いの野放しぶりは目に立つ。鼻につく。

 ともあれ、受験シーズンでもあり、ここは受験生諸君にひとつ腕だめしの問題を。

 どうして、これまで日本の大学入試に『朝日新聞』からの引用がいちばん多かったのか、その考えられる理由について、二千字以内で述べよ。答案、「断」欄宛にお寄せいただくも可、です。