1992-09-01から1ヶ月間の記事一覧

人はエイズですら日常化できる

*1 火野葦平の小説『花と龍』に、明治末年、主人公の玉井金五郎が、当時上海コレラが猖獗を極める門司の巷に住みながら最後まで発病しなかったことで英雄扱いされ、新聞にまで載ってしまうくだりがある。発病後半日で死に至るというとんでもない劇症コレラ。…

いま、この国で「ちゃんとする」ことの難儀

*1 ● 行くべき先が見つからない。 自分が今の仕事を続けて5年なり10年なりたった時、こういう風になっていたい、というお手本というか目標というか、そんな目指すべき到達点が見えにくくなっている。 たとえば、「ちゃんとしたい」という欲望がある。ここ1年…

高橋喜一郎 聞書――天体望遠鏡「TS式」製造

Star Gazer という言葉が英語にはある。文字通りには「星をのぞく人」。だが、転じて、「現実離れした夢ばかり追いかける人間」というような、あまり名誉とは言い難い意味もあったりする。 白状すれば、僕もその Star Gazer ――言わば天文少年のはしくれだっ…

とうに涅槃を過ぎて――鶴見俊輔をめぐる“気分”の共同性について

● ものを書きそれをカネに替えるという営みに手を染め始めた頃のことだ。今すぐにとは言わないしその準備もない、だが、いつかきっと鶴見俊輔の仕事についてその功罪を含めて正面から論じてみたい、と言ったら、ある年上の編集者から「悪いこと言わないから…