マンガ評・高橋しん『最終兵器彼女』

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 なんでもない日常が、ある日突然、予期せぬできごとによってみるみる変貌してゆく。これは古今東西、“おはなし”の黄金律だ。

 ならば、こんなのはどうだ。チビで幼くてトロい女子高校生が、実は核兵器も真っ青な破壊力を持つ最終兵器だった……。そんなムチャな、とツッコむのももっともだが、そのムチャをマジに通そうとしているのが、高橋しん最終兵器彼女』であります。

 このテの「学校=日常」と「戦争=大状況」の対抗図式は、『ガンダム』から『新世紀エヴァンゲリオン』に至るまで、マンガ・アニメからゲーム方面の定番。ただ、少し前までなら、安永航一郎の『県立地球防衛軍』(なつかしいぞ)のように間違いなくギャグ仕立てのラブコメになってたはずが、そこはポスト「エヴァ」ないまどきのこと、ネクラな人間関係と辛気臭いココロの葛藤に焦点が。そう、ムチャな設定の世界で動く、彼女ちせと自意識過剰な彼氏、シュウジの眼線でのシリアスドラマ、なのだ。

 兵器として成長してゆく分、どんどん人間でなくなってゆくちせ。背景もろくに説明されぬまま彼女が引きずり出す終末的な「戦争」の大状況を、さて、どこまで「恋愛」モードな日常=ラブコメの間尺に引き寄せておけるか、というあたりでこの作者、かなり踏ん張っている。ムチャな設定も何のその、読み手もシンクロして「泣く」理由も実はそのへんにあるんだと思います。

*1:週刊ポスト』連載「マンガの迷宮」原稿