NHK教育で木村伊兵衛の特集番組。ETV特集の枠。*1川本三郎だのアラーキーだのを引っ張り出して、果ては表象文化論(笑)のガイジンまでフィーチュアで、NHKらしいっちゃらしいつくりだが、それはどうでもいい。
写真をネタにああだこうだ言う、その「語り」そのものがもう何だか嘘くさいというか、少なくとも〈リアル〉ではないことをさむざむと思い知らせるデキになっていることに瞠目。「作品」として突出した一枚、で語る写真という枠組み自体が、もしかしたらもうかつてのような効きを失っているのかも知れない、と思ったり。
柳田国男がかつて信頼した「観察」の力、というのも、おそらくそういう無名の観察、それ自体ワンショットでは何の意味もおそらくないような「どうでもよさ」が、しかし量として集積することを背景にした時に別の意味を明らかにはらんでくる、その瞬間を信頼することで何か「学問」を構想したということなのではないか、と。
「日常」を相手どる時の身構え方、意識のありようというものが、おそらくまず問われるべきものなのだと思う。功名心、固有名詞として突出してゆこうとする意志そのものが、資料の質に焼き付けられてしまう。
「匿名」であることは必ずしも「無個性」というだけではない。「匿名」の集積を背景として信頼することで、それは「匿名」という「個性」の方へと開いてゆくこともあり得る。
*1:まだあったんだ、この枠。かつて「コメと日本人」などでかなりいろいろ勉強させてもらった枠だけども……正確なタイトルは、「木村伊兵衛の13万コマ・よみがえる昭和の記憶」。あとで知ったのだが、川崎市民ミュージアムで木村伊兵衛の企画展をやってるのでそのからみもあったらしい。