三宅乱丈『ぶっせん』

 マンガ描いてるんですう、なんて言おうものなら、まずはヘンなシト扱いされるのが世の必定。ましてオンナで二十代後半となると、こりゃもうきっちりアブナい領域。同人誌まわりの泥沼にどっぷりと判断されて致し方なしで、しかもそのトシから描き始めたとなると、こりゃもう何か絶対ワケありな世捨て人。けれども、そんな中からとんでもない才能も出てくるからニッポンマンガのすそ野はつくづく広い。読んで驚け、三宅乱丈ぶっせん』である。

 商売上手の寺を横目にした貧乏寺が苦しまぎれに始めた仏教専門学園、略して「ぶっせん」が舞台。坊主ネタなら『ファンシィ・ダンス』という先達があるが、それより時代がひとめぐりした分、味わいがビミョーに枯れ加減。生徒たちのキャラ立ち具合やそこに宿る仲間意識のけなげさなどは立派に少年マンガの正統でも、描線やディテールのやわらかさや、まんまるおメメを臆面なく搭載しているあたりは少女マンガ。掲載誌『モーニング』は、あの青木雄二を拾った男前ぶりで有名だけれども、少女マンガと少年マンガの垣根が崩壊した何でもありのいまどきこんな才能を見出す眼力はさすがだ。

 あたし的には、セクシュアリティとキャラの設定の剛直ぶりに瞠目した。同じオトコでも素朴な「オス」と、そこそこしちめんどくさい内面抱えちまった「オバサン」の描き分けをはっきりやっているのを、さて皆の衆、読み取れるかな?。え、正助は、って? ふっふっふ、それは宿題だわさ。


ぶっせん 1 (モーニングワイドコミックス)

ぶっせん 1 (モーニングワイドコミックス)