「ようつべ」考


ようつべ、と呼ばれている。何やら妖怪の名前のようだが、そうではない。 you tube と表記するアメリカのサイト。それをわが同胞のネット住民たちは、敢えて「ようつべ」と読みならわした。
 この「ようつべ」が、このところにわかに勢力を伸ばしている。あちこちのネット住民たちが自分のサイトやブログ、掲示板などで言及を積み重ねていて、互いに誘い合って日本からの訪問数も月刊200万人以上と激増。表記は英語オンリーでも、今やネット上の自動翻訳サイトを介在させればおよその意味くらいはとれる程度に変換されるし、何より現状無料だし、というわけで、目下大人気赤丸急上昇中。

you tube――bloadcast yourself
http://youtube.com/
(以下、自動翻訳サイトによる訳文……測候所註)
YouTubeは何ですか?
YouTubeはビデオを共有して、批評して、見ることによって人々がビデオで新しい道に従事する場所です。 YouTubeは元々サービスを共有する個人的なビデオを始めて、人々が毎日サイトの5000万個以上のビデオを監視しているエンターテインメントの目的地になりました。
YouTubeと共に、人々はそうすることができます。
世界中でビデオにアップロードして、タグ付けをして、共有します。 共同体のメンバーによってアップロードされた何百万個ものオリジナルのビデオをブラウズします。 同様の関心を持っている人々に接するためにビデオグループに見つけて、加わって、創設します。 》

開設は去年の二月。だが、実はその頃から似たようなサービスがいくつか前後して始まっていた。「ようつべ」より早く、検索エンジン大手のグーグルは「グーグルビデオ」を立ち上げていたし、以下、去年の秋口くらいからは遅ればせながら国内でもプロバイダ系を中心に同様のサイトがちらほらと。だが、そんな中でもやはり「ようつべ」の人気が、特に本家アメリカをさしおいてまでわが日本で盛り上がっているのには、それなりの理由があるらしい。

YOU TUBEという、海外の動画共有サイトがございまして、古今東西色んな動画が公開されております。中には(いや、ほとんどか)アヌメのOP/EDから一話丸ごと、果ては好きな曲のミュージッククリップ風味にしたてたアヌメ編集もの、かなりの勢いで著作権、肖像権てなあに?な状況にwまあ、警告されるのはアップした人でしょうから見ているこっちは楽しいからドウデモイイんですがw》

YouTubeがスゴい!とか言い始めるのはあまりにも今更なんで言わないけど、さらにようつべをマッシュアップしたようなモノが増えてきてて、しかも非常に便利ですばらしい。面白い。HATENA-TUBEであったり、LDR用のようつべGreasemonkeyであったり。あるいはブログに直接動画を埋め込んで居る人もそう。 その場でサクっと動画を閲覧できて実に良い。》

このところ企業の顧客名簿や役所の機密書類、果てはあられもないプライベート画像に至るまでネットを介しただだ漏れ事件が続出しているのはご存じだろうが、その元凶とされるwinnyなどの違法スレスレなファイル交換ソフトの力を借りずとも、なんとおおっぴらに動画や音声ファイルが陳列公開されているわけで、そのまさにネットの属性でもある何でもありのアナーキーさが、「ようつべ」の持ち味。とにかく、文字テキストの書き込みではなく動画や音声ファイルが主で、どんどん勝手に貼り込んでゆけるようになっているから、素人の撮ったホームビデオからさまざまな国のテレビ番組のキャプチャー、報道からスポーツ、音楽のプロモーションビデオにバラエティにマンガ、アニメ……などなど、およそデジタル化され動画になっているものなら何でもござれ。海外のテレビ番組やおもしろビデオを紹介するバラエティ番組『さんまのからくりTV』みたいなことが、今やネットを介してデスクトップのパソコン上で二四時間繰り広げられている、と言えば、少しは事態がおわかりいただけるだろうか。



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このようつべ、最近最も注目されたのはNHKがらみだった。それも教育テレビの何でもない番組のある部分がキャプチャーされて、アップされた。これがヒットした。
四月に放映されたNHK教育の子供向け番組「おかあさんといっしょ」の中の一コーナー「スプーのえかきうた」。スプーという番組の着ぐるみキャラクターを、「うたのおねえさん」が歌いながらお絵描きしてみせたのだが、しかし、それがどう見ても元のスプーと似ても似つかない奇っ怪なシロモノで、そのズレ具合をどう始末しようか困惑する現場の空気含めてそこはかとない味わいが……というのが、ことのあらまし。

NHKの歌のおねえさんが描いた「スプー」のデキが凶悪すぎてネット上で大人気!
NHKの番組で「歌のおねえさん」である「はいだしょうこ」さんが描いた絵が話題になっている。「スプーの絵描き歌」を歌いながら「スプー」の絵を描いたのだが、とにかくスゴい出来上がりなのだ。一緒に絵を描いたおにいさんも思わず笑っている。
そのときの映像は「HiroIro」で紹介されている。「ニャー速。」や「ワロタニッキ」で紹介されているスレッドを見れば、いかにネット上で話題になっているかが分かる。おねえさんの描いた「スプー」をベースに、次々とアスキーアートコラ画像が生まれており、「移譲記章」や「俺暇」でまとめられているぞ。
http://www.new-akiba.com/archives/2006/05/nhk_5.html

ようつべとスプーに関するメモ
http://asia.google.com/search?client=excite-jp-partner&hl=ja&ie=sjis&q=cache%3Akeq5xG8TaYgJ%3Ahttp%3A%2F%2Fperape.hp.infoseek.co.jp%2Fsnap%2F0606%2Fspoo.htm+%82%E6%82%A4%82%C2%82%D7

「歌のおねえさん」はいだしょうこ。本名 拝田祥子。生年月日 19XX年3月25日。血液型 A型。東京都出身。身長 158cm。趣味 ミュージカル鑑賞・ドライブ。特技 クラシックバレエ。 「おかあさんといっしょ」19代うたのおねえさん。お父さんはピアノ教師、お母さんは声楽科出身の音楽一家。童謡の全国コンクールで小学6年のときグランプリを受賞し、作曲家中田喜直さんの指導を高校2年まで受ける。国立音楽大学付属高を中退、1996年4月宝塚音楽学校に入学。2年間のカリキュラムを終え、1998年宝塚歌劇団入団。千琴ひめかの役名で「ベルサイユのばら2001」のエトワール役などを演じた。2002年9月退団。2003年4月より番組に登場。 以上、ネット住民たちが寄ってたかって編集してゆくネット上の百科事典wikipediaより抜粋だが、この元宝塚で踊りも演技もできる、という属性もツボだった。そんな才媛(もはや死語か)でもお絵描きの才能にだけは恵まれていなかったらしい、というあたりが、いたく感動を呼んだ。
おかあさんといっしょ」以下、NHK教育テレビの子供向け番組は、もうかなり前から実は子供よりもその母親がターゲットになってきているところがあった。体操のおにいさん目当ての母親が大挙押しかけたり、またその子供目当てのいささかアレな煩悩を抱えた「大きなおともだち」ももれなくついてきたり……とまあ、番組本来の狙いと違うところで盛り上がっていたのは知る人ぞ知る。このへん、いわゆる「食玩」の類などがすでに「大きなおともだち」の「オトナ買い」をあてこんでいたり、また家庭用ゲーム機器もオトナ相手の英会話だの社会常識などのソフトで売り始めていたり、といった現象ともシンクロしている。
中には、手回しよくこの妖怪スプーの立体フィギュアを作成し、「例の化け物」の題名でオークションにかける猛者まで現われた。その値はなんと七億にまで高騰。もちろん単なるシャレでネットの野次馬が入札しまくった結果だが、その他にもコラ画像や動画はいくつもつくられ、ネックレスはできるわ、スプーを主人公にしたゲームは勝手に造られるわ、と沙汰の限り。こういう何の意味も公共性もないくだらないことにいたずらに情熱を傾けるネット住民の性癖は、かつての江戸の町人たちにも通じるものがある。やはり「江戸にフランス革命を」。そう説いた橋本治はやはり正しかった、と改めて思う。

《ボクがYouTubeのページを見たい理由は、いくつかある。
descriptionを見たい。
コメントを見たい。
被閲覧数を見たい。
descriptionもコメントも、多くのYouTubeは英語で書かれていて、おそらくはアメリカ人、少なくとも日本人ではないだろう。そこがいい!そこが実にいい!
 例えば、例のスプー関係の動画。はっきりいって、何の前知識もなくアレを見せられたところで、その面白さは完全には理解できないはずだ。 たしかに、あのオネーサンは絵が下手だな、ということはなんとなく察せられる。だが、アレがNHKである事、うたのおねえさんである事などを加味してはじめて100%伝わるわけで、そういったコモンセンスの欠落してる、アメリカ人をはじめとした日本以外の国民がいったいどういうリアクションをとっているのか、というところがまた楽しい。》

とは言え、ようつべ、は言わば公然と著作権を侵害しているわけで、国境を越えて投稿される動画だけに監視の網の目も届きにくい。だが、さすがにこのスプー動画ではNHKが動いた。削除依頼が出されたようだが、もちろん、このことがまたスプー騒ぎに油を注ぎ、さらにネット住民の注目が。削除してもまた他の誰かが動画をアップして、まるで『カムイ伝』の影丸状態。

《「スプー」削除の舞台裏 「YouTube」にテレビ局苦慮
YouTubeの違法動画に、テレビ各局が手を焼いている。NHKは「スプーの絵描き歌」の動画削除を依頼し、米YouTubeもそれに応じたが、削除直後に同じ動画がまたアップ。いたちごっこが続く。
YouTubeが運営する動画共有サイトYouTube」からこのほど、NHKの動画「スプーの絵描き歌」が削除された。NHKは「当協会の著作権を侵害している」として米YouTubeにメールで削除を要請。翌日には削除されたという。
 しかし、削除後すぐにYouTubeに同じコンテンツが再アップされ、いたちごっこの状態。フジテレビジョンなど民放局も自社コンテンツの削除に動いているが、無数のユーザーによって次から次にアップされる違法コンテンツへの対応に苦慮している。》
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0606/07/news070.html

NHKだけでなく民放も著作権保護の観点から、ようつべに注目し始めている。もちろん、ようつべも著作権侵害はしないようユーザーに警告しているのだが、現状は焼け石に水、の模様。

YouTube著作権を侵害する動画の公開を禁じており、違法コンテンツの削除フローも徐々に簡略化しているようだ。昨年12月から、YouTubeに違法にアップされたコンテンツの削除を依頼してきたというフジテレビジョン著作権部によると、「昨年は、YouTube側の削除基準が厳しく、弁護士名でサインを入れた依頼書をFAXする必要があった。しかし今年4月ごろに削除依頼した際は、メール1本ですぐに削除してもらえた」という。》

ここにきて動画ファイルのやりとりが活発化してきたのには、デジタルビデオ系の機器の普及もさることながら、日本に関して言えば、テレビ番組をパソコンにとりこむキャプチャー環境から、いまやテープベースのビデオデッキに代わってHDDレコーダーが世間に広まってきたことが大きいだろう。
画像や動画、音声までも参照してあれこれやりとりが積み重なってゆく電網空間、互いに資料を共有する上でこのような掲示板(ないし、アップローダー的なサイト)は、もちろん便利だし、必要である。もともとインターネット自体、研究者同士の内輪の情報交換や議論のために開発されてきたという経緯を思うまでもない。かつて、活字の書物が普及してゆくにつれて書庫の必要ができ、体系的分類のシステムも整備されていったように、いまや画像や動画といった素材にもまた、そのような社会的蓄積と引用−参照のシステムの整備が求められている。著作権のありようもまた、変わりゆく情報環境との関係で柔軟に解釈してゆくべきだろう。
まず、手近なところでは、これまで言いっぱなしの垂れ流しに近かったテレビ番組の動画ファイルで網羅する国会図書館のようなアーカイヴス、なんてのは如何? 大宅壮一がいま生きていたら、きっと同じことを考えていたはず、と思う。



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聞けば、ちょい悪オヤジ、が近頃、ちょいといいんだそうである。脂ぎった肌にうすらハゲ、出っ腹に加齢臭のメガネ中年といった月並み、型どおりではなく、どこか不良の匂いのするおじさま、ということか。そんなの気持ち悪い、と思うのは縁なき衆生で、驚くなかれ、雑誌その他でこの手のオヤジがもてはやされているとか。ほんまかいな、そうかいな。
つまりは、ちょっとワルっぽい雰囲気を持つカジュアルな中年、ということか。なるほど、言われてみれば団塊の世代あたりにそんな自意識抱え込んだオヤジは結構いそうに思う。そしてそれは要するに、たんまり小ガネ貯め込んだ絶好のカモの集団としてねらわれているだけのことだし、現実にいたらいたでそれはかなり情けなく、かつはた迷惑な存在なのではないか、と思ったりもするのだが。

団塊のオヤジってなんで「いつまでも少年の心を持っていたい」って言うの? 職業柄、感動して聞いてるふりするんだけど、かなりキモなんだけど。意味わかんない。》

《いつまでたっても女にもてたいムンムンした感じ何とかしろ。
あと数年で平日昼間にそいつらがあふれてくるのかと思うとウツだ。
それからバス停で見ず知らずの女にバナナあげるのやめろ。リス園でもだ。
確かに団塊が40代で不倫したくてしょうがなかった頃、
新卒で餌食になった世代だが、もうおまえらは臭くてやなんだ。 》

2007年問題、などとも呼ばれる。来年の春から始まる団塊の世代の本格的リタイア時代。それを前に、団塊の世代バッシング、が電網空間ではもう、静かに始まっている。

団塊ほんとかんべんだよな。年功序列の価値観で仕事マジしなくても昼寝してても金取りやがる。甘えがおおくてそのくせ威厳があるふりする。》

団塊の世代が嫌われるのには理由がある。
 ①定年延長によって若い世代の雇用を奪う。→職よこせ! 
 ②高度成長期〜バブル期だけに通用した「普通」「常識」「伝統」を若い世代に押しつける。→迷惑、ウザい。
 ③やたらと自信過剰・自意識過剰。→日常的に人を傷つけるなよー
 ④長時間労働でデートを奪う→時短しろ!
 ⑤自分だけが高賃金で若者と女性は失業か半失業でいいと思っている。 しかもそれゆえに彼(女)らを見下す。相手が若いか女性ならどれほどひどいことをしてもよいと信じて疑わない。鈍感な差別主義者ぶりを大いに発揮。
 荒いまとめだがまあこんなところだな。反省と改善を強く求める。 》

ドント・トラスト・オーバーサーティー。三十代から上のやつらは信用するな。そう言っていた世代がいまや還暦を迎え、現役を退く時期。かつての青春客気、若気の至りの身振り、言動が、そのまま今の自分に還ってくる道理。因果応報、世は順送り、ではあるのだが。

団塊に2種類あると思われ。 赤ヘルかぶって、ゲバ棒ふりまわしたグループと、町工場でDQNな仕事し、たまの休日にはボーリングぐらいしかすることなかった者と。 ちょいワル親父に進化するのが前者で、後者はそのままDQN親父になる。 訳の分からなさでは、両方とも同じ。》

だが、世の流れに先駆けて、電網空間で「団塊バッシング」がいくぶん先走っているような印象を受けるのは、果たしてどういう理由からだろう。時には、三十代から上の大人を全部ひっくるめて「団塊」と呼んでいるような乱暴な意見もある。一方では、世代論なんかくだらない、と一蹴する論者もまた。そもそも「団塊の世代」の定義さえも、案外ちゃんと共有されていないのが、いまどきのネット住民たちのコモンセンス。そんなことを考えていたら、当測候所員のひとりがこんなデータを拾ってきた。 

http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/503654.html
2ちゃんねらは990万人 30代と40代が過半数 年齢別ユーザー分析結果
1 名前:依頼633@鯛茶漬けφ ★ 投稿日:2006/03/02(木) 03:52:21.62 ID:???0 ?
「消費者メディア調査」(日本広告主協会Web広告研究会が11月28日発表)による年齢別上位順です。

30歳代=30,7%
40歳代=21,9%
13歳〜19歳層と20歳代が同着=15,0%/各
50歳代=8,6%
12歳以下=5,0%
60歳以上=3,9%
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0511/29/news004.html

数字は数字、ましてネットを広告媒体として虎視眈々の商売人たちが仕掛けた調査としたら、それなりに眉に唾、が作法だろうが、二十代以下は三割強、三十代と四十代が半分以上というこの数字を、ひとまず信用するとすれば、ネット住民の間から団塊の世代バッシングが強まってきた理由も、ある程度垣間見えるような。そう、いわゆるデジタルディバイド、パソコンとインターネットを積極的に日常的なツール、生きてゆくための必要なメディアとして使いこなしているかどうか、に関わるある格差が、団塊の世代(から上の世代)とそれ以下との間にくっきりと横たわっているらしい、そのことである。
電網空間とは表のメディアではうまく拾えない、世の中の「ホンネ」の表出である、という説がよくある。間違いではない。だが、同時にその「ホンネ」とは、このようなデジタルディバイドによって距離感の決められたものでもある、ということもまた、含み込んでおかないことには偏った解釈にもつながってゆく。すでにネット住民の属性として語られがちな「嫌韓」「保守化」「右傾化」なども、実はそのようなディバイドを介してもう一度、洗い直してみることも必要だろう。動画や画像、音楽なども全部ひっくるめて液晶画面の上で、文字テキストと全く同等に、縦横に引用、参照してしまえる情報環境になじんでしまっている世代にとっての現実とは、そして既存のメディアの位相とはどのようなものか。「団塊の世代」をめぐる言説をひとつの鏡とする視線を介してて、そのような目論見もまた、可能になってくるのだろう。