「懲戒解雇」以後――嶋貫和男という「盾」

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 前号、何やら奥歯にもののはさまったようなもの言いでしか語れなかった「内部的には醜聞、いや、外から見てもまずは格好のスキャンダル、ないしはゴシップ系のネタとしてまずは取り扱われるような案件」ですが、もう勿体つけなくてもいい状況になったので、お話ししましょう。

 要は、自分の勤め先であった札幌国際大学という北海道の小さな大学が、昨今どこでも悩まされている定員割れとそれに伴う経営状態の悪化に苦しむあまり、外国人留学生(と共に実はスポーツ特待生も、なのですがそれはとりあえず別途)を見境なく入れ始めたものの、その入試から在籍管理からいろいろ無茶で外道なことをやらかしていた、それを内部で自浄、自主的に改善しようとしていたもののどうにもならなくなって外部の関係諸機関、文科省出入国在籍管理庁その他、報道機関などにも内情を暴露し、世間の眼に公正に判断してもらう段になってしまった、というのが前号あたりまでの状況でした。

 で、そこから先、であります。

 事態を改善しようとしていた城後豊学長を事実上解任にひとしい形で3月末に退任させ、4月から大学側はあからさまに自分たちの言いなりになる人事を強行、理事会や評議会はもとより教学側の学長、学部長らまでもきれいに一新、以前にも増して留学生ビジネスに臆面なく邁進する体制をとり、その勢いで、前学長と共に問題解決に奔走していた自分を、学内的に見せしめという意味もあったのでしょう、なんといきなり「懲戒解雇」に附してきたのが6月末でした。

 学校と宗教はタチが悪い、とよく言われます。いわゆる公益法人、世にある「学校」なり「宗教」なりが枷としてはめられている法律的・制度的な枠組みにおいて、ということですが、税制上の優遇措置その他優遇してもらっているのをいいことにあれこれやりたい放題(らしい)、というのは、普通に本邦の世間に生きている人がたならばある程度、それこそ「そういうもの」として認識しているようなものでしょう。そして実際、今回の札幌国際大学の場合もまた、まさに「そういうもの」の一典型であることを改めて、思い知ることに。

 たとえば、新たな理事のひとりとして嶋貫和男という名前が表に出てきた。他でもない、かの文科省天下り」利権の元締めだった前川喜平の実施部隊として利権の匙加減を塩梅していたと言われる御仁。それまでもこの大学が留学生ビジネスに前のめりになるのを陰に陽に後押ししてきていた形跡があったのですが、ここに来て堂々と表に姿を現わしました。実は留学生だけではない、スポーツ特待生という枠組みでスポーツの得意な学生を多く集めて、これもまた定員充足率をあげるためにこの大学が利用しているスキームなのですが、それらにもまた何らかの影響力を行使している可能性もあり、いずれにせよ元文科省OBの力、あるいはご威光というのは実にこういう形で発揮されるもののようです。

 地元北海道出身で大学も北海学園大学卒という、いわゆるノンキャリア組。にも関わらず、異例の出世をしたと言われていたのは、「人事課が長くて再就職を長く担当して、歴代の人事課長も官房長も重宝していた」(ある取材記者)それなりに「能吏」であったかららしい。「天下り」再就職斡旋問題でも「文科委員会でしょっちゅう答弁をしていましたが、キャリアの局長や官房長よりも落ち着いていて丁寧な答弁で責任回避もせず、立派な態度に見えた」との声もあり、そう考えるとノンキャリアの事務方ならではの仁義で「天下り」問題に関わっていた上司その他、キャリア組含む関係者のいわば盾となっていた、という見方もできなくはない。

 

 ちなみに、この7月に文科省の人事異動があり、大学を管轄する高等教育局長には伯井美徳という御仁が留任していました。この伯井氏、かつて人事課長を務めていた時は嶋貫氏の上司だったという経歴の持ち主で、くだんの「天下り」再就職斡旋事件では減給10分の2(9カ月)の懲戒処分も受けている、いわば一味同心ではあったわけで、さてこのへんの事情がどのようにこの札幌国際大学をめぐる問題に影をおとしてくるのか。「基本的に(去年問題になった)東京福祉大学と同じ枠組みの問題」というのが、霞ヶ関周辺での認識のようではありますが、その東京福祉大学は結果的に以下のような処分を、出入国管理庁との連携でくだされています。

 ◆ 当面、学部研究生の新規受入れを見合わせるよう指導し(文部科学省)、申請があった場合にも在留資格「留学」の付与を認めない(出入国在留管理庁)
 ◆ 制度運用及び事務局体制の適正化に向けた改善の指導・フォローアップ
 ◆ 私立大学等経常費補助金の減額・不交付措置の検討(文部科学省

*1:『宗教問題』連載、掲載原稿

*2:前号、というのはこれ(´・ω・)つking-biscuit.hatenablog.com