天皇は「日本」を裏切り得るか (草稿)

 皇室を政治の道具にするな――これは「戦後」のわれらニッポン人の大方が抱いている心情だったはずです。今の憲法からしてそういう精神のはず。とにかく現実のあれこれから超然たる場所にいてもらうことが天皇、そして皇室の存在理由だったところがある。

 なのに、とうとう昭和天皇まで持ち出しての政治沙汰。歴史の新資料が出てきた、というだけならともかく、ナマものとして扱おうとするから話がおかしくなる。そんな「政治」がらみの世論操作の気配を敏感に察知するからこそ、この問題がここまで大きくなっているのでしょう。

 皇室とは実に、あたしたち国民の幻想の投影される活きた銀幕であります。戦後憲法下の皇室は最もアメリカナイズされた、シアワセな家族、として見られてきた。なにせ軽井沢の恋、です。避暑地でテニスで「恋愛」です。そう思えば、今の雅子妃が帰国子女なのも、元紀宮黒田清子さまがマンガ好きと言われたのも、ある意味時代の必然かも。その程度にこの「戦後」から皇室もまた自由ではあり得ない。そう、あたしたちと同じように。

 女系天皇論なども含め、安易に「伝統」を振り回す方々に民俗学者としてひとつ、剣呑な問いを。天皇や皇室が「日本」を裏切ることもあり得る――こんなことを本気で考えたことはありますか? 2.26事件の首謀者として断罪処刑された青年将校たちは、天皇にどう訴えていましたっけ。今回の問題、実はうっかり大変なものを引っ張り出しそうです。*1

*1:この部分がわけわかめ、と言われて手直しを……orz