競馬再編の青写真と連携への模索

 ニッポン競馬をめぐる環境が、いよいよ大きく変わってゆきそうです。変わらなければどの道未来はないわけですからそれはいいのですが、ただ、これまで何度も触れてきたように、誰が、どのような目算があってどう変えようとしているのか、何ともはっきりわかりにくいままなのが困りもの。地方競馬の現場から遠い水面を見上げるように動きを注視している僕みたいな下っ端の困惑などはどこ吹く風で、とにかく事態だけはどんどん動いているようです。

 懸案だった第二次競馬法改正の日程が、具体的に見えてきました。水面下で言われていたように、来年春の通常国会を通す予定で、それに向けて大枠の青写真がすでに農水省から競馬議連に出され、国会が終わった後からは法案の整備に向けて、関連のおエラいさんたちもやっと積極的に動き始めたようです。もともと、今年の秋の国会で、という話だったはずですが、農水省ののらりくらりにかかれば日程はどんどん引き延ばされ、今まで持ち越しに。その間、さらに地方競馬をめぐる環境は悪化し、この秋にもまた存廃が改めて問われる競馬場が複数出てきそうな情勢なのですが、ともかくひとつ先が見えてきたのはありがたい。

 この地方競馬再編構想、南関東、要するに大井が本腰入れてつきあってくれるかどうか、がひとつのカギと言われていました。南関東にしてみれば、自分たちだけでもやってゆけるのにどうしてその他の地方競馬全部の面倒を見なきゃならないのか、というわけで、これまでこの構想を動かしている側には冷淡だと言われてきたのですが、ようやくある程度折り合える線が見えたようで、ここにきてにわかに動きがあわただしくなったはそのあたりの事情もあるようです。

 整理統合には地方の主催者組織の一本化と、JRAも含めたトータリゼータの統一が不可欠。平日のナイター中心の地方競馬をWINS含めて全国で売って、逆に週末土日のJRAも全国の地方競馬で売り合えるようにする。そのために、こと地方競馬がこういう事態に陥るまで何も手を打てずに上前をはねるだけだった“天下りの牙城”地全協を解体し、かわりに主催権を持ったJRA同様の強力な主催者組織に改編、それぞれの競馬場に対して番組から日程その他に至るまで、全体を見越してバランスよく案分できるようにする。最低でも一着賞金五十万円程度の売り上げを確保する、というのが、これまでも聞こえてきた地方競馬再編のひとつの基準だったわけで、本当にそれが実現できるのならば願ってもないこと。どこの競馬場のどの厩舎も、もう本当にギリギリのところで踏ん張っているのですが、ここはもうひと息、競馬という仕事をこの先も続けられるように頑張って欲しいところです。

 再編の前提として言われてきながら、かけ声ばかりで一向に進まない主催者相互の連携計画ですが、それでも、試みは進められています。先日22日には高知で、福山騎手招待競走が行われました。

 「高知方式」と呼ばれる四半期ごとの決算でのサドンデスで頑張っているものの、この春からまた売り上げが減って、七月からはついに最低賞金が一着九万円に、出走手当も三万円を切って、さすがに不死身の高知の厩舎関係者も「これ以上下がったらもう責任持てん」というところまできています。連携計画と言っても、あのハルウララブームでこさえた内部留保もほぼ底をついた状況で、とりあえず一番近い福山と手始めに、ということで、騎手五名を招待して馬券も売り合うこの企画。「鉄人」佐々木竹見さんも応援に来場、プレゼンターを努め、また、去年の秋、サラブレッド導入を前に高知からサラを呼んで地元アラブとの対戦を企画した福山側からの応援答礼、という形にもなりました。

 ご多分にもれず在籍頭数が減り、また夏場のことでさらに出走馬の確保が困難な中、ふだんは七頭だて八頭だて程度の競馬になっているところに、このシリーズ三鞍だけは頑張って十二頭揃えてみせたのは、高知の関係者の心意気。ファンもいつもより多く、「やっぱりようけ走っとると迫力あるのう」と反応も上々。いつもと違うペースの競馬で福山勢が緒戦、いきなりワンツー決着で気を吐き、その後も出入りの激しいレースは見応え十分でした。結局、福山の筠畑騎手が総合優勝。益田廃止の後、福山に移ってきた若手ですが、もともと益田と福山、高知は騎手の行き来があった地域でなじみもある。大きな再編のうねりの中で、それぞれが生き残りを賭けたこういう懸命な試みもまた同時に、もっと広く行われなければならないはずのもの、と思います。