「親方日の丸」再び

 


 「親方日の丸」というもの言いがあります。戦前、昭和に入ってから広まったものらしい。さらにすさむと「世の中は星に碇に闇に顔」になっていったわけですが、どうやら昨今、そんな「親方日の丸」気分がまた蔓延しているようです。税金であれ補助金であれ、はたまた受信料であれ広告費であれ公共事業であれ、いずれ「公」に集めたおのれの腹の痛まぬカネでうまいことやれる立場が「勝ち組」だ、という気分になってわが同胞のココロを蝕んでいる。まさにモラルハザード、ことはかなり深刻です。

 以前、自衛隊の取材をしている時、現役の自衛隊員の話の中に、普段扱っている武器や装備品について「国民に買っていただいているものですから」というもの言いが、頻繁に出てくるのに気がつきました。もちろん、普段からそのように教育されているからでしょうし、そう言わねばたちどころにバッシング食らう懸念からのタテマエでもあるのでしょうが、それでも、そのもの言いの中に、税金を介して国民とつながっている、税金を払ってこれらを買ってくれている国民から、その国民を守る仕事を自分たちは委託されている、という気持ちが、ある種の誇りと共にこもっているように感じられたのも、また事実です。

 税金を介して国民から信頼され、委託されている、という感覚。だからこそ、自分の「立場」には自制が必要なんだ、という矜恃。それが今、上は政治家、官僚からマスコミ界隈、果てはあやしいマルチ商売や募金詐欺に至るまで、「親方日の丸」のモラルハザードの現在に、最も欠けている。「おたがいさま」という最も素朴な同胞感覚を失った世間は、「公」というタテマエも支えられなくなってゆきます。