新たな「都鄙」「内地雑居」問題

 国籍法の「改正」が国会を通過しました。何か奥深い理由でもあったのか、拙速を絵に描いたようなザル審議で、メディアも通りいっぺんの報道しかしないまま。大方は何が起こっているのかわからないかも。

 「過疎」ということが言われ始めたのは高度成長期半ば、確か山陰地方から始まったもの言いと記憶します。それから四十年あまり、今や「限界集落」と言葉も無惨に変わり、「百姓」出自の「ムラ」は最終的にその姿を消し始めている。それは、民俗学がこれまで脳天気に想定してきたような、われらの原風景としての「日本」自体、歴史的な過程に繰り込まれる時期にさしかかりつつあることでもあります。

 「ムラ」を最終的に絶滅に追い込み、「農」に代表される一次生産の場を考えなしにやせ衰えさせ、核家族化と少子化で減った労働力は付け焼き刃の外国人を「新」日本人に仕立てて埋め合わせ、一方、「先住」日本人たちはというと、列島を覆い尽くした「都市」の高度消費社会コロニーにおびえながらたてこもるしかなくなり、老いた少数派になってゆく……考えたくないですが、しかし、この「改正」国籍法後の日本を静かに想像してみると、最悪、そんな近未来すら思い浮かんできます。

 「ホワイトアイランド」と呼ばれたのは植民地時代、アフリカ諸国の都市。白人がたてこもるコロニーとしての「都市」と、それを取り巻く現地のネイティヴたちという構図で、そこでは文化や民族問題は同時に貧困、階層問題でもありました。それと同様、わが国でも早晩、外国人含めた「新日本人」たちとの間に、「都鄙」そして「内地雑居」といった古くて新しい問題が、21世紀的な文脈でもう一度浮上するはず。国籍法「改正」を支持した諸センセイ方、それに対する目算と覚悟はもちろん、おありですよね?