CLAMP『ちょびッ』

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 動物を擬人化して描くのはマンガのお約束。『ジャングル大帝』や『ライオンキング』のような、およそ生態系を無視した代物ができたりするが、もはやそんなもんで驚いてちゃいけない。二一世紀はパソコンまでヒトになっちゃう。

 CLAMP『ちょびっッ』(講談社)である。人型パソコンが当たり前になった世界で、ビンボーな浪人(いまどきこんな設定ありかあ?)本須和秀樹が、ゴミ捨て場に落ちていたパソコン(もちろん美少女)を拾う。ところが、このPC、OSがない。ないから「ちぃ」と鳴くしか能がない。しかし、やたらとパワフルで接続した仲間のPCを飛ばしたりするくせにメーカーは不詳。さてはどこかの自作品? というところで、伝説のインディーズPC「Chobits」の話が出てくる。この正体不明の美少女PCがいかに人格を獲得し、この世に生まれてゆくか、というあたりが今後の設計図だろう。

 『AI』だの『メトロポリス』だの、映画界隈でも昨今似たような設定は花盛りだが、なんの、ここは世界に冠たるニッポンマンガのお家芸ロリコンものに、パソコンおたくネタをトッピングしたひと品。「かわいい」一発で読者を引きつけられるだけの画力も備わり、すでにキャラクターグッズもうごめき始めている。う~む、いまどきの少年
マンガ市場戦略の商品としちゃ、こりゃかなり強力だぞお。

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*1:週刊ポスト』書評欄のマンガ評、連載原稿