宮本政於という人がいる。厚生省の官僚だったが、率直な官僚批判を内部から繰り返して、結局懲戒免職になった。その間の自身の体験をもとにした『お役所の掟』などの著書で知られている。これらは英訳もされ、アメリカなど海外でも評判を呼んでいると聞く。
この人が先日、政治評論家の早坂茂三がホストを務めるトーク番組に出演した。体験に即して日本の官僚制の硬直を批判するまではよかったが、「日本は」「日本は」と一般論を連発する割に歴史や文化についての理解の浅薄さが目立った。その意味では、昨今一部
でもてはやされるウォルフレンの論調にも似ている。あげくの果て、日本の「去勢教育」が諸悪の根源で、これを改革するには国民全てがサービス残業を拒否して長期休暇をとるべきだ、といった陳腐で無責任な主張を得々と開陳する始末。学生ならばいざ知らず、す
でにそれなりに社会生活のキャリアを積んできたはずの大人が、どうすればこれほど平板な「日本」論を平然と人前で吐けるのか、その臆面のなさに唖然とした。
この種の奥行きのないエリート意識は昨今の若い学者や官僚、ジャーナリスト、あるいは外国体験の長かった人などにもまま見られるけれども、その酸鼻を前に終始穏やかに、しかし毅然とホスト役を勤めた早坂の百戦錬磨の貫禄が、逆にこの国の「権力」周辺の処世のしぶとさを示して印象的だった。活字の向こうの生身の現実までも、テレビは時に冷酷に映し出す。