「イラク戦争」をめぐるリテラシー

 イラク戦争は、マスコミの大方の期待を裏切り米英その他連合軍の歴史的圧勝に終わった。「ベトナムのような泥沼化が」「長期戦は必至」「凄惨な市街戦が繰り広げられる」と言い続けたマスコミとその掌で口に糊する評論家や文化人たちの「定説」を裏切り、開戦以後わずかひと月半で首都陥落、そして全土の事実上の制圧。機甲師団を持ち、ミサイルを装備していても、独裁者フセインイラク軍は近代国家の軍隊ではなかった。ゆえにそれは近代戦ですらなく、依拠する技術水準の異なる文明の衝突、言わば戊辰戦役か鳥羽伏見の戦いのようなもので、サダム・フセインはしょせん近藤勇、共和国防衛軍は新撰組彰義隊だったのでは、という皮肉な声まである。

 イラク戦争をめぐる言説の検証は、ネット上でもすでに百花繚乱だが、やはりある種のリトマス紙のようになっているのは間違いない。メディア露出の多い言論人、文化人の中でも、戦争を境にその値崩れの激しい銘柄がはっきりしてきた。

 「反戦病患者」とネットでは揶揄されていた新聞、テレビ等の陳腐な「反戦」キャンペーンとそれに加担した久米宏、筑紫哲哉、関口宏などのキャスター系や、現地にまで赴きながら「反米」イデオロギーに曇ったレポートしか送れなかった自称戦場ジャーナリストたちは言うに及ばずだが、中でも姜尚中小林よしのり、軍事評論家の田岡俊次などが、ほぼ暴落に近い惨状を呈している。逆に、江畑謙介などは同じ軍事評論家でも、軍事関係の知識の正確さと自分の領域を踏み出さない態度で結果的に信頼を高めた感がある。

 姜尚中は、在日朝鮮人にして東大助教授。旧世代の化石左翼というわけでもない柔軟で冷静な思考の気配が売りで、端正なルックスと落ち着いたシルキーヴォイスでビジュアル的にもキャラクター的にも高水準。実際、ブラウン管の前の一部女性観客層にとっては氷川きよし的な人気も獲得していたようで、部数の急激な減少に苦しむ『朝日新聞』始め、『論座』『AERA』その他の「市民」系メディア、マンネリ化で新たな役者に乏しくなっていた『朝まで生テレビ』などにとっても、次代を担う宣伝担当の切り札としてここ一、二年、重用され始めていたひとりだった。

 それが、今回のイラク戦争に関して信じられないくらいの失速ぶりを明らかにした。

 決定的だったのは、先月末に放映された『朝まで生テレビ』。「最強の帝国主義アメリカの正体」と称する回に出演したのが運の尽きだった。

 「朝生」はネット上でも放映時にリアルタイムで「実況」スレッドが複数立つ、人気のネタ番組なのだが、さらにビデオ録画して出演者の不用意な発言などはことごとくチェックされる。そのような現在の情報環境も姜尚中には不幸だったようだ。ちなみに「生姜」というのは、ネットでの姜の愛称。「重村」は重村智計拓殖大教授、「田原」は司会の田原総一朗、「村田」は村田晃嗣同志社大助教授である。

【しげむーvs生姜デスマッチ!!!】
生姜「アメリカは絶対に北朝鮮と対話をしないと言った」
重村「交渉はしないけど対話はすると言ったんです」
生姜「降りてきたら対話をすると言った」
重村「対話には条件はない。言葉をはっきりしてください」

生姜「深読みすれば小泉政権は米から北の核について知らされていたが、
あえて踏み込んで(日朝交渉に臨み)逆にしばりをかけるというか」
重村「いやそれは全くない。ヒッヒッヒ」

 データに基づいて反論されてサンドバッグ状態の姜。ここまで叩かれて立ち往生する姿は、これまで見られなかった。

集団的自衛権の行使)
生姜:過去の植民地支配にともなう・・・・
田原:今の北問題と過去の侵略は関係ないですよ

 司会の田原にまで安心してツッコまれる始末。これまで姜を立ててきた田原もここに来て、これはもういたぶっていいと判断したのではないか。

(日朝交渉について)
田原:膠着しているのはどっちが悪い
生姜:どっちが悪いって問題じゃない。
村田:どっちが悪いんですか?
生姜:・・・・・・

 このような醜態から「姜って実はおかしいかも」というネット世論が一気に強まった。これまで彼に対しては、案外肯定的な論調が主流だっネット言論からすれば、手ひらを返したような逆風と言っていい。

「朝生」主役気取りの姜尚中。もはや傍若無人の体。
他の出演者は一様に敬語を使っているのに、コイツは年下にはぞんざいなタメ口。
金子慶大教授のことなど「金子クン」呼ばわり、しまいには「金子」。
田原や森本などの年長者には敬語を使うものの、気持ちが高ぶると指を指す。
他人の主張の最中に頻繁に割って入って揚げ足取り。
そのくせ自身の主張は意味不明。建設的・具体的中味は全く無し。
ぼんやりと理解できるところは、どうやら単に日本イジメをしたいだけ。
日本にプラスな話には必ず異論、マイナスの話には無言・同調。
東大教授とは名ばかりの半島根性剥き出しの言論廃棄物。

食事時、朝生のビデオ見ながら、うちの親が「カンさんは何言っているか分からない」というんで、この人は拉致問題解決の前に北朝鮮に経済援助すれって主張している人だよって話したら、さすがのウチの親も呆れていた。

でもなんでこの前の朝生であんな感情的になってたんだろう。普段は冷静を装ってしゃべるが。だからこそまったく意見の違うやつらも「生姜さんのおっしゃるのこととほぼ同じだが。。。」などとよいしょされてたのに。この間はボロボロだったな

 同じく、この時に出演していた小林よしのりも、イラク戦争を境にそのご威光が失墜著しいひとり。『ゴーマニズム宣言』をひっさげて薬害エイズ問題からオウム事件、歴史教科書マターと渡り歩いてきた90年代を象徴する異色の「論客」も、ここにきて「反米」原理主義的な偏向が目立っていたところに、戦争がらみの発言で観客の違和感を増幅してしまったようだ。

小林:北朝鮮がこわい、だからアメリカ兵が血を流せばいい、イラクで子どもが死ねばいい、と言ってるわけだよ日本は。国益国益と言うけど、状況に流されてるだけで話がみみっちくて聞いてられないよ。国益って言うなら道義や倫理も入れろよ。
田原:そんなものあるわけないじゃない。
小林:違うよ。アメリカのネオコンは理念や理想を中東で押し進めようとしてるんだよ。日本の理念は何だよ。国益には理想が必要なんだよ。

 これなどは、姜尚中に対していらだった末の発言だったのだが、姜だけでなくこの小林にも情け容赦のない批評を浴びせるのがネットの本領。「宮崎」は評論家の宮崎哲哉。

ドモってたじゃん。思いっきり。
途中話のレベルについていけずに議論に参加できなくて
「つまんねーじゃねーかよー」とか
上ずった声で大爆発して苦笑いされて(もう顰蹙すら買わない)、
話す事は「イラクの少年が可哀想だ!」程度のレベル。
宮崎に絶えず同意を求める媚び笑いの目線送って。
頬杖ついたり、聞く時に「おー、おー、おー」って、何様だ。
まわりは全員、反論する時いがいは他人の聞く時はわりと淡々としてたのに、
小林だけ意識過剰。いいから机の上に手を下ろせよ、っての。

 信頼される論客、文化人というのがどのような風向きになっているのか、というと……

重村、森本はまあまあだったな。
それでは現在の保守論壇のランキング表を発表します。

横綱 秦郁彦(日本大学)
大関 中西輝政(京都大学)
小結 百地章(日本大学)、西尾幹二(東京電気大学)
十両 森本敏重村智計(共に拓殖大学)
関脇 村田 晃嗣(同志社大学

他のみなさんも今後精進してください。

 90年代末、ネット空間が拡大し始めた時期には、後に「コヴァ」と呼ばれる彼のフォロワーが大発生、ネット世代の「右傾化」が言われ、その象徴でもあった小林のゴーマニズムがネット言論のデフォルトの様相を呈した時期すらあったのだが、ここにきて洗脳が解除され始めたようだ。かつての左翼本のように、高校や大学で一度ははまるけれども、社会人になる頃には相対化できるようになる、小林よしのりと「ゴーマニズム宣言」もそのような「青春の思い出」になりつつあるらしい。

個人的には、最近の小林の言動は他国の民族主義者に非常に似ており、軸的には極右に位置すると思うんだけど。小林が批判する「ポチホシュ」なるものが具体的に誰と特定しづらいのも(最近は産経新聞に的を絞っているようだけど)、極右的な視点で発言しているからだと考えればなんとなく理解できるし。
あと、小林が目指しているものが何かは未だによくわからない(w
日本の精神的・軍事的独立を主張しているんだろうけど、過程の問題は一切無しでしかも多少の妥協すらも許さないという気概だけは一杯だから。そういう意味でも小林は極右(民族主義者)だと思うんだよね(誰も極右に政治的具体策を期待していないように)。

 『ニュースステーション』で軍事評論家として重用されてきた田岡俊次だが、今回のイラク戦争でも長期戦予想、バグダッドでの市街戦&執拗なゲリラ戦、とことごとく予測を外して失笑を買った。ネットでは「元帥」の愛称が奉られ、独自のAA(アスキーアート=絵文字)がつくられる始末。ある意味名誉だが、これだけ発言がはずれる軍事評論家を懲りずに使い続けるマスコミも、度量があるのかバカなのか、いずれにせよすごいものだと思う。

田岡発言集

湾岸戦争イラク軍100万は強力で米軍は地上戦突入ならかなり苦戦する」
結果:空爆後、地上戦数日で決着
アフガン戦争「補給の効かない山岳でゲリラ戦に持ち込まれロシアの二の舞になる」
結果:タリバンあっさり霧散
イラク戦争
「兵力が十分揃っておらず、米国はブラフの脅しをかけているだけで開戦はない」
「補給線が伸びきっており作戦の失敗といえる」

あんた発言にリスクとりすぎ。ある意味冒険者
評論のギャンブラーとは君のことだ。

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   ヽ  | / 'ヽヽ|  | 
     | ( ::::””:::/ < アメリカ軍はベトナムの時ようにとんでもないことになりますよ。
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  ./  \  ̄ ̄| ̄\
そりゃ無茶ですよー。なんてたって市街には10万人のフセイン親衛隊の
最精鋭が待ち構えてるわけですから。まともに打ち合ったらお互い多数の死者が
でますよ。これからアメリカはどうするんですかねえ。

 ネット大衆のリテラシーを考慮しなければ、どんな専門家も安穏としていられないのが今の情報環境なのだ。これら草莽のマニア、野の利害なき博識を畏怖することのできる御仁こそが、これから先、信頼されるべき知性、耳傾けるに足るインテリの資格を持てるのかも知れない。

アフガンの時もイラクの時も、ほとんどが長期化と予想。
まあオマル師やビンラディンを捕まえられてないって意味じゃ長期化しとるのかもしれんが、戦争そのものは米軍は空爆しかしてないうちに終了。
イラクもゲリラには悩まされつつも、結局まともに戦闘したら兵器の性能が違いすぎて圧勝。卑屈な軍事評論家どもは米軍の実力を甘く見過ぎ。

 湾岸戦争でさえも今から十年以上前。この間、われわれの些細な日常でさえもテクノロジーの進歩を実感する材料にはこと欠かない。携帯電話、パソコン、さまざまな情報家電……それらを考えあわせれば、テクノロジーの最先端にある軍事技術がどれくらいすさまじい変化を遂げているのか、たとえ専門的な知識がなくとも、あたりまえの常識の範囲で容易に類推できることではないだろうか。少なくとも、「戦争」という現実がこれまで言われてきたようなルーティンの延長線上にだけあるわけではないだろうことを予感する、軍事の素人としてその程度の慎重さや謙虚さがマスコミにこそ欲しかったと思うのは、いまのところは所詮ないものねだりか。